第11話 ダブルデート(?)編3

 今日は週末のためかなり人がいる。


 本来、こういう時は『俺の手を握ってろ』的なことを言えば高感度爆上がりだろうけど……。


「右手はあたしです!!」

「いいえ、私よ!!」


 二人はデコをくっつけて。


「「ぐぬぬぬぬぬっ」」と睨み合う。


『この子……』

『こいつ……』


 どうやら、その必要はないようだ。


「なあ、なんでお前ら右手なの? 左手は?」


 すると、二人は俺の方を振り向き。

 

「「そんなことしたら、迷惑!!」」


 そういうことかよ!?

 確かに水族館は道路に比べて道が狭い。

 三人が並列してたら通れないだろう。

 それなら……。


「だったらよ? そもそも、手を繋ぐ前提で話すのやめない?」


 やれやれ、こいつらは……なんで手を繋ぐ前提なんだよ。


「そうしたら、小倉くん。誰かに手を出すかも……」

「しねーよ、そんなことよ。それ、痴漢だからな?」


『手を出すなら、あたしだけにして欲しいなぁ〜。ゴムもあるしね///』


 手を出すはずがねーだろうがよ。

 多分、お前らがこん中でも一番ぐらいだしよ。


 待て、そう考えると俺って……幸せ者なのか?


「別に、私は……と、特別……雄也の手が握りたいってわけじゃ……わけじゃ……ある……ない」

「おいおい、どっちだよ?」


『わわわわわ、私のバカぁあああ!! す、素直に!!』


 どうやら、繋ぎたいらしい。

 神崎ほんと、俺にツンツンし過ぎだろ。


 さっきの結論が出た。

 "傍から見たら幸せ者だが、俺自身はそこまで幸せ者ではない。むしろ、不幸せ者だな"


 だって、考えてみろ。

 一人は俺にツンツンしててもう一人はただの変態……せめて、神崎がツンデレだったらな〜。

 石川さんに関しては変態がなくなれば、デレデレになるのに……残念。


 俺は大きくため息を吐いて。


「わかったよ……なら、時間制で行こう」

「「?」」


 要は簡単だ。

 二人が手を繋ぎたいなら、交代で繋げばいいんだ。


 くそ〜いつから俺はこんなリア充に!!


「つまりは、特定の時間で繋ぐ人をチェンジする」

「なるほど……それは考えてませんでした」

「天才!!」


 いや、別にそこまですごいことはしてないんだけどな〜まあ、ここは、調子に乗ろうか。


 俺は両手を腰に置いて。

 

「ハハハッ」と笑った。


 すると、石川さんが腕を組みながら。


「だったら、この際時間制で人も交代しましょ? ほら、小倉くんと二人っきりになるっていう……」


 その言葉を聞いた瞬間、俺は固まる。


 え……。


「いいわよ、石川!! 最後にどっちが良かったかって!!」


 おいおい、どんどん話を進めるな!!

 まだ、二人同時だったら意識しないけど……二人になっちまうと変にデートって意識するだろうが!!!!

 てか、神崎……お前の発言が一番邪魔だ。

 何が最後にどっちが良かったか決めるだよ……こっちの身も知らないくせに!!

 どっちか選べば、どっちかが不幸になるやつやん。


『そうすれば……自然にホテルに持ち込める……やべ、よだれ〜///』


 いや、行かねーぞ俺はホテルなんてよ。

 こいつのデートってすることが前提なのかよ?


『言うんだ……二人っきりで……』


 こっちはこっちでなんか、伏線張ってるし?

 いや、でも気になるな……なんだよ、二人っきりで……何を言う気なんだ!?


「こうなれば……」

「そうね、じゃんけんね!!」


 よっ!! 民主主義!!


 まあ、俺的には神崎の方が楽しみだな。

 一体何を言う気なんだ……はっ──もしかして……。


『お前と二人っきりにしたのはお前の首に首輪を──』


 いやいや、流石にね……。


「おーい、雄也も!!」

「は? 俺!?」


 え……なんで俺はも!? 俺ってあれじゃないの?

 二人は俺を狙ってる感じの……。

 なんで俺もじゃんけんすんの?


「「「ポン」」」


 結局、俺がパー、神崎がチョキ、石川さんがチョキだった。

 

 そして、その後は石川さんがパーで勝ったのだった。


 この時はまだ知らない……俺が一人で水族館を回ることになることを──。



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