第10話 ダブルデート(?)編2

 やれやれ、なんで水族館にしたのだろうか……個人的には遊園地の方が楽しめる気がしたのだが。

 といっても、ここから遊園地までは一時間ほどかかる。

 その点では水族館は徒歩十分ほどなのでいいのかもしれない。

 でも、それに勝つぐらい遊園地は楽しいのに……まぁ、こいつらが楽しそうにしてるならいいか。


『ああ、遊園地が良かったなぁ……でも……その女がいると……』

『ふん、遊園地が良かったのですが、この女がいると……』

『『二人乗りの時に邪魔になる!!』』


 そういうことかよ!!

 石川さんはまだしも、もしかして、神崎は俺の隣で俺をいたぶりたいのか!?

 いいや、それ以外に考えられねぇ。

 なんせ、俺と目が合うだけでそっぽ向くやろうだぞ。


「水族館って言ったらイルカショーですよね〜」


 その石川さんの一言に神崎は。


「は? 普通、ペンギンショーに決まってるでしょ!? あんたは馬鹿なの大馬鹿野郎なの?」


 少しキレたトーンでそう言った。


『雄也は昔からペンギンが好きだったもんな〜あ、違う!! べ、別に私のためであって……』

『ふへへへ、イルカショーでイルカに水バシャンしてもらって、服を濡らしす。そう、スケスケイベント///。今日は勝負下着だし……ゴムも持ってるし!! いつでもいいよ、小倉くん///』


 こ、こいつら……こりゃー、神崎についていった方が良さそうだ。

 石川さんこえーよ。

 よし、ペンギンショーにしよう。

 よく覚えてたな。

 俺がペンギンが好きなことを──。


「この巨乳ぅうう〜」

「この貧乳ぅうう〜」


 二人は見つめ合いながら喧嘩をしている。


 もう一度言うと、神崎は別にガチの貧乳キャラではない。

 ただ、石川さんがデカすぎるだけだ。


「ふん、これでも、女子高生の平均です〜」

「ぬぬぬ」


 ほんとしょうもない理由だよな。

 

 言うならこのタイミングか……。


「待て、お前ら……俺はペンギンショーがいいと思うぞ」


 俺がそう言うと神崎は目を光らさせて勝ち誇ったように。


「これが私の力よ!! この巨乳め!!」


 いやさぁ、傍から見たらかなりのリア充に見られてるんだろうけど……。

 つーか、そもそも心の声が聞こえなかったら多分今の俺も『くそおおおおお、俺はいつからリア充になったあああああああ!!!!』だとか浮かれてたな。うん。


『ぐぬぬぬ、まぁ、いいわ!! ペンギンショーでペンギンが脱走してあたしの服を引っ張ってくれる///』


 おいおい、それはファンタジーだぞ。

 そんなの現実世界でまずないぞ?

 そもそも、ペンギンが脱走というイベントすら起こらないないからな。


『やったあ!! やったあ!! やったあ!!』


 さてと……そろそろだな。


 そんな話をしていると、水族館が見えて来た。


「よし、見えて来たな!!」

「そうね!!」

「そうですね!!」



「一人八百円です!!」と店員のお姉さんはニコッと言う。


 これはマニュアルであるため、ここでドキッと来ちゃあいけない。


 財布を取り出そうとした二人の手を俺は止めた。


「「え?」」


 ここで、デートマニュアルを使うとしよう。


「いいよ、俺がお前ら二人の分も払う……」


『ば、ばっかじゃないの!? お、大人ぶって……う、嬉しくないから!!』


 いいや、ここは大人ぶらせてもらおうか。

 さすがにこのくらいは払うよ。


『流石に悪いですわ……で、ですが、『おい、身体で後で払ってもらおうか』とかそんなイベンがあったりするんじゃないか!?』


 それはねーよ。

 これは俺の心の気持ちだ。


「「よ、よろしくお願いします!!」」


 いやぁ〜二千四百円の出費!!

 い、痛すぎるっ!!

 今日は一万しか持って来てねーし、残高七千六百円しかねーじゃねーかよ。

 それで喜んでもらえるなら……か。


「いや〜ハーレムですか……ち、このリア充がよ……」と嫌そうな顔をする店員のお姉さん。


 ねぇ〜違うから……。

 やはり、傍から見ればそうなんのかよ。


「ハーレム料金です。一人千円です!!」


 多分これは、マニュアルにはねーよな。

 あったらこえーよ。


「ち、違いますよ……これはただの女友達でありましてね……確かにハーレムですけど別にそんないやらしい仲じゃ……」


 すると、二人は満面の笑みで。


「「じゃあ、それで!!」」

 

 ぐはっ──。


 こ、こいつら……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る