第8話 デートすることになりました
その後俺たちは場所を誰もいない空き教室へと変えられ……。
「私の方が先だもん!!」
「いいえ、あたしが先ですわ!! 神崎さん!!」
二人によって今ここは戦場と化している。
そんな中、俺はポツンと正座していた。
「神崎さん、あなたは一体何がしたいのですか!?」
「はぁ、そんなの一つしかないわよ!! あ、あいつを……あああああ!! あいつと一緒にいたいけどいたくない!!」
『ああああああ!! 素直……素直にならなければ!! 私のバカぁ……』
『ふん、所詮その程度ですのよ神崎さん、あなたはあたしには勝てない──ッ!! 全てにおいてあなたはあたしより衰えています。まず、その胸……あたしより小さい!! いいですか? 小倉くんは大きい胸が好きなんですよ///』
多分、こいつらの心の声が聞こえなければただの女子の喧嘩で治っただろうに……。
こいつらの心の声が聞こえるせいで、神崎を応援したくなったんだが……。
いや、別にどちらの願いも叶えたくない。
しかし、神崎があまりにも不利すぎて……がんばれ、神崎!!
「なら、あたしが小倉くんと……その……デートするということでいいですか?」
その言葉を聞いた瞬間、俺はその場で凍った。
ででででデートぉおおおおおお!?
「はぁ!? なんでそうなるの!? 私こそ………」
何か、ぷるぷると顔を赤く染めて震えている神崎。
『言うのよ……私──っ!!』
お、なんか決意がついたようだ。
「私も雄也とデートしたい!!!!」
……………とてもえらいことになった……おいおい、まじすか……え? もしかして、神崎お前、俺とデートすると言って何かする気なのか!?
──この瞬間、俺は察した。
どちらを選んでも俺にはバッドエンドの未来しかないことに。
仮に神崎を選ぶと多分、普段の神崎からして俺をボコボコにするのだろう。
そして、石川さんを選ぶと多分、俺にすっごいことを要求してくるだろう。
やばいやばいやばい……どっちを選んでもバッドエンドなんだが。
『ちっ、この子もそう来るのね……しかし残念ね。あたしの方が愛が大きいのよ!!』
『い、言っちゃった……ばばばば、バカ雄也の前で言っちゃった……』
「ねぇ、神崎さん?」と笑顔なのに神崎を睨んでいる石川さん。
すると、神崎は石川さんのデカ乳を思いっきり握りしめて──。
「あんたが諦めなさいよっ──」とそのデカ乳を勢いよく引っ張った──。
その瞬間、石川さんは床を転がりながら「いたたたたたたたたっ!!」
えー容赦ねーな、おい!!
『いったあああああ!! こ、この子っ──』
「ふん、諦めなさい石川詩織!! あなたはヒロインにはなれない……なんせ、この私がいるもの!!」
次の瞬間、石川さんは神崎の脛を転がりながら蹴った──。
足をもつれた神崎はそのまま、床に横転。
そして、石川さんのように……。
「いたたたたたたたっ!!」と床を転がり出す。
まじで醜いな!!
『こいつ……それでも女なの!?』
いや、お前が言えたことじゃねーよ。
石川さんは右膝だけ床につけた状態で。
「ふん、あなたは今、あたしを負けヒロインと言ったわよね? 残念ね。ラブコメの世界では幼馴染=負けヒロインというのがあるのよ!! つまり、あたしが小倉くんと結ばれる……///」
あーたしかにそんなのあるよな。
たしか、『幼馴染は負けヒロインの法則』だっけか?
とりあえず、幼馴染は負けインのフラグっつーのがあるよな。
まぁ、こいつに関してはそもそもそのラブコメの対象じゃないんだよなぁ……俺のこと好きじゃないし、もっと言うと俺のこと嫌いだしさ。
「そうはさせないわよ!! 私が勝ちヒロインになる!!」
そう言いながら神崎は石川さんに向かって転がった──。
そのまま、神崎の腹部に石川さんの脛が当たり……。
二人同時に「「いったたたたたた!!」」と涙目で床を転がった。
おいおい、そんなに床を転がると埃まみれになるぞ。
いや、もう遅いか……。
『私はデートしてえっーとなんかする!!』
『あたしはデートしてホテルでしたいっ!!』
『だから私(あたし)は絶対にデート券を取ってみせる──っ!!』
まじで醜いよ……神崎に関してはなんだよそれ。
しかし、仕方がない……。
「はぁ……」
俺は睨み合っている二人にこう言った。
「二人同時にデートしよう」と──。
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次回よりダブルデート(?)編です。
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