第7話 変態さんの攻略を!4

 俺は走り出す。

 

 さて……どこに逃げるべきだ?

 ある程度は目星が付いている。


 一応、追加ルールで一時間以内逃げ切れれば両者の負けらしい。

 二人のお願いとか、神崎は知らんが、石川さんのは大体予想できる。

 そのため、仮に捕まるとしたら神崎がいいな……。

 っつーか、なんで俺がこんな目に遭わなきゃならねーんだよ。

 そもそもだ。

 俺にとってメリットなんて一つも……いいや、なくねーや。

 よし、決めた。


 俺は大声で。


「俺が勝ったら二人から願いを叶えてもらうぞ!!」


 当然、一人でいきなり廊下で大声を出したものだ。

 周りからは白い目で見られたわけだが……今はそんなの関係ねー。


 外ではサッカー部や野球部や陸上部などの運動部の掛け声が聞こえて来る。

 

 もう、六月に入ろうとしているのだ。

 そのため、かなり暑くなってきている。

 よく頑張るなぁ。

 俺だったら、自分から好んで運動部なんてやらないのに。


 絶対に逃げ切ってやる!!


 と言っても、このゲームに関してはほぼ俺の勝ちだ。

 なんせ、俺はあの二人の心の声が聞こえる。

 そのため、近くに来れば大体俺は気づくだろう。

 ふははは、チートとでも言えばいい!!

 勝負に勝てるなら何をしてもいい!!


 そうなれば、逃げる場所は二つ方向があるところがいいな。


 心の声が聞こえれば、もう片方に逃げる。


 その戦法を使うことができるからだ。


 あの二人が仲が良かったりすれば、挟み撃ちされるだろう。

 しかし、あの二人は死ぬほど仲が悪い。

 それは、さっきの一瞬でわかった。


 ということで………。


 俺は一年B組の教室のドアをガラガラと開けた。


 俺は自分の教室を選んだ。


 中には少々の人が雑談をしているほどで、大体の人は部活に行っているようだ。

 この学校は部活が強制ではない。

 その点に惹かれて俺はこの学校を選んだ。

 近隣の学校は強制で一人一つは同好会または部活に入らないといけない。

 そんな中ここだけはその規約がなかったのだ。


 そして、ここにした理由は一つである。


 それは……ここなら二つの方向から逃げることができるかつ、場所が広いからだ。

 しかし、多分この俺の【テレパシー】はある程度の距離を離れれば声が聞こえなくなる。

 神崎が朝登校してきた時も気づいたのは教室に入ってきてからだった。

 そうなればだ。


 やることは一つ──。

 

「なぁ、俺もその話混ぜてくれないか?」


 そう、それは……になるのだ。


 あえて、あまり仲の良くない人と絡むことで、自分という存在を一瞬麻痺させることができる。

『え、あれ、雄也? でも、あの人たちとは仲良くないし違うよね!!』的に。

 それが聞こえた瞬間に逃げる。

 それが俺の戦法だ。


 そもそもだが、まず最初に逃げる場所を教室にする人なんていないだろう。

 なんせ、バレやすいもの。

 まぁ、俺の勝ちだわな。


 俺は勝利を確信した。


「え……いいけど……」


 そう一人の男子は言った。


 このグループには今は三人。

 右から少年A少年B少年C。

 いや、多分同じクラスだが名前を知らない。

 だから、そう呼ぶことにしよう。


 ちなみに、こいつは少年Aだ。


「お、お前もこういうの好きなのか、小倉!!」と俺の方に腕を置く少年B。


 すっげ〜馴れ馴れしいなぁ。

 しかも、俺の名前知ってるのか? すまん、俺は知らないんだ。


「こういうのって……」


 机の上には一冊グラビア雑誌が置いてあった。


 そのページには複数人のグラビアの水着姿が……。


 いや、今はやらねーぞそれ。


「ほぉ、主もこういうのが好きなのか!! そうなのか!!」と少し太っていて奇妙に笑う少年C。


 いや、しかし……こういうのも俺は好きだぞ。

 一度、やってみたかったんだよなぁ〜こういう学生らしさ? というか、よく少年漫画である展開!!

 ここが二次元なら、ここでヒロインが登場なわけだが……。


『『いた!!』』


 次の瞬間、俺は舌を勢いよく噛んだ……。


 いいや、まだだ……挟み撃ちなんてないだろう。

 もう一つの出口から……。


 俺は恐る恐る、後ろを振り向いた──。


『この子、もう来ているのですね!!』

『こいつ、なかなかやるわね……』


 見事に両方の入り口から一人ずつ入ってきたみたい。


 なんでこいつら、見事に挟み撃ちしてんだよ!?

 てか、ふ、フラグ回収が早すぎる──ッ!!

 待て、普通フラグって数分後に回収だろ?

 おいおい、まだ数秒しか……。


 そして、二人は同時に笑顔で。

  

「「タッチ!!」」


 そう俺の両肩に手を置いた。

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