第6話 変態さんの攻略を!3

 俺と石川さんは制服を着て、床に正座させられた。


「それで……あ、あなたたちは……その、せ、セッをしようとしたのね!?」


 そう恥ずかしそうに言う神崎は可愛かった。


『この子、処女だ絶対!! だから、言うの恥ずかしいんだ!!』


 いや、あなたもそうでしょ?


『こ、こんなところで……破廉恥!! この変態!! わ、私と初めては捨てなさい!!』


 こいつもこいつで何言ってんだよ。

 しかし、こんな形で神崎と久しぶりに話すことにはなるとは……もっとまともなきっかけが良かった。


「まだしてないから……セックスとはいいません」と笑顔で言う石川さん。


 た、確かにそうですけど……この状況でそれは通じないと思います。


 すると、神崎は顔を真っ赤に染めて。


「た、確かに!! わ、私……早とちりしちゃった!? で、でも変態!! 変態雄也!!」


『わ、わ、わ、私……勘違い!? は、恥ずかしい!! 雄也の前で勘違いしちゃった!!』


 お、これはチャンスなのでは?


「そうだよ。早とちりだ。俺たちは別に、しようとは思っていない」


『まぁ、あたしとするのはしたことに入らない!! そう遠回りで言いたいのですね///』


 こいつ……殴りてぇ!!


 俺はそんな気持ちを拳に抑えた。


 女子に優しくしろと昔からお父さんに言われてきたが、殴りてぇよ。

 そういうことじゃないんだ。


「ん? それで、神崎はなんで保健室に?」


 神崎が来てから気になっていたことだ。

 合鍵を持っていたことから怪我ではなさそうだ。


「それはね、私、保健委員だから……その仕事をしに……」


 なるほど、そういうことか。

 あれ、俺たち結構邪魔じゃね?

 これを理由に話を変えられるんじゃないか!?


「そ、そうか〜なら、仕事の方をやった方が……」


『小倉くんはあたしと二人でいたいのですね!! 今日はできませんが明日!! 明日しましょう。そのためにゴムを買わなければ///』


 だから、ちげーよ。

 

「ううん、そんなのどうでもいい……」


 すると、神崎は石川さんに近づき、強く睨んだ。


 そして、その光景に石川さんは笑顔で神崎を見る。


 うわ〜怖っ!! なになにこの感じ!! めちゃくちゃ嫌な気しかしないんですけど


『こいつだけは、許さない……別に雄也のためじゃないから!! そう、私のため!!』

『多分、この子を倒さないとあたしに小倉くんと一緒にいることはできない!!』

『『今ここで殺す!!』』


 いや、こえーよ。

 これが女子の喧嘩なのか?

 怖すぎるだろ。


 俺は「まあ待て」と二人の間に入る。


 ここは怪我を治すところなのに怪我を作ってどうするって話だ。


「何?」

「そこをどいてください!!」


 二人は口を膨らました。


 その姿はどちらとも可愛かった。


 いや、心の声が聞こえなければだけど……。


『別に雄也のためじゃないから!! そう、カエルの真似!!』

『この膨らましかた練習してよかったぁ〜』


「いいか、お前ら……喧嘩は何も産まない。産まれるのは怪我だけだ!!」


 そんなありきたりなカッコいい捨て台詞を吐くと。


「そんなの知ってるわよ!!」

「そのうえでですのよ」


 見事に納得してくれることはないわけだ。


 やれやれ……こうなれば。


「だったらよ? ゲームをしようぜ?」

「「ゲーム??」」

「ああ、ゲームだ」


 前に何かの漫画で見たことがある。

 こういう修羅場の時に……。


「場所は校内。そこで、俺はどこかに逃げる、だから、二人とも俺を捕まえてくれ。先に捕まえた方が勝ちだ」


 こうすれば、この修羅場からも逃れる。

 我ながらいい考えだ。


『『て、天才!?』』


 そうだ、もっと俺を褒めろ崇めろ!!


「い、いいわよ!! だったら、そうしましょ!! この巨乳に一泡吐かせてやるわ!!」

「いいでしょう!! この貧乳に一泡吐かせます!!」


 女子の喧嘩はほんとにこえーよ。

 男子でたとえると、『このデカチンに一泡吐かせる!!』『この粗チンに一泡吐かせる』みたいな感じだよな。

 いや、こえーよ。

 それでも、確かに石川さんに比べれば貧乳だけどそれなりにはあると思うのだが。


 ということで、俺は校内に逃げることになった。


『絶対に雄也は私のものよ!!』

『あたしが小倉くんを捕まえる!! そのまま、小倉くんとヤる///』


「ねぇ、雄也?」

「ん? なんだ?」

「捕まえた方に一日雄也を自由にする権利を……」


 はぁ!? 馬鹿言え、なんで俺がそんなことを──。


「貧乳にしてはいいことを思いつくじゃないかしら?」

「貧乳ねぇ……これでも、私、人並み以上はあるわよ? 巨乳ちゃん。それでいい、雄也?」


 この二人のみにくい喧嘩を止めるためだ。


「ああ、わかったよ。しゃーねーな」


 最悪だ、すごくめんどくさいことになった。

 ほんと、最悪だ……。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る