じゅうよん
「
「今話しても良いんだよ?」
強要するわけではない、だけど聞きたいと言う本音がだだ漏れのミナト。
「まぁまだ言えないってことはそれだけ大きいってことでしょ?」
本当に見透かされているんじゃないかと、ヒヤヒヤする。
「そりゃ大きいよ」
ミナトに聞こえないように独り言を呟く。
「ん?何か言った?」
冷凍庫からアイスを取りながら戻ってくるミナトには聞こえてなかったようでなにより。
「はい、どーぞ」
「元々は僕のだけどね、ありがと」
ミナトがアイスを半分に割って渡してくる。
二人で呑気にアイスを食べながら、眠たそうなミナトを見ていると。
なんだかこっちも眠気を誘われてきて――。
とりあえずこのまま床で寝そうなミナトをベッドに連れ、僕もベッドに座る。
話せるか、わからない。
話してしまったら、この関係が壊れてしまうと言う可能性があるのだから。
もしかしたらミナトは笑って流すかも知れないし、本来ならそう言う人間だけど。
『わからないからしない』
この言葉が未だに心を蝕み続けている。
一種の呪いなのかも知れないし、それに抗わなかった罰なのかも知れない。
こんな逃げ場のない所で怯えるくらいなら、あの時言ってしまえばよかったんじゃないか。
ずっと、そればかりが脳裏によぎる。
……ダメだ、考えてても仕方ない。横になろう。
それは許されているのだから。
その後、昼寝してから起きた後。
唐突にミナトが話し出す。
「凄く寂しかったんだよ」
「……寂しかったって?」
高校卒業した後、とミナトが返す。
「別々になるのはわかってたけど、それでも寂しくて。一人暮らし始めるって言うのも寂しかったんだよ」
「僕も確かに寂しいって思ってたけど」
それ以上に、離れたらあの感情を封印できると思って。
……僕から、わざと離れていった。
「別に問題なかったのに志望校も変えちゃって。わかんなかった、そう言う所は」
「……そんなことを言われてもだな」
ムスッとした顔をするミナト。
――わかるわけがない、わからないようにしてたんだから。
「だからって、高校卒業してから露骨に避けたり、帰省しても挨拶くらいしかしてくれないなんて」
「時間もなかったからしょうがないだろ」
どんどん機嫌が悪くなっていくミナト。
「久々に会えるって思ってワクワクしてたのに、一緒に遊びたかったのに」
「こっちにも都合ってもんが――」
勢いよく立ち上がるミナト。
「喧嘩売ってる?」
「売ってはないが」
悟られるわけにはいかないから。自分を、感情を殺すしか無いんだ。
「もう知らない」
ミナトはトートバッグを持って家から出ていく。
「……ごめん、こんなにも弱くて」
一人暮らしの、一人だけの部屋に虚しく響く。
結論から言えば、その晩ミナトは帰ってこなかった。
メッセージを飛ばしても硬い返事が帰ってくるだけで。
少なくとも安全な場所にいることだけはわかった。
おそらく寝る間際だったのだろう。
『もう放っておいて』
それだけのメッセージが帰ってからの返信はなかった。
『帰ってくるの待ってるから、ちゃんと話そう』
そう、返すしか無かった。
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