じゅうさん
顔を洗ってきたミナトが横に座る。
「隠し事は良くない」
……何のことだろう。
「何か我慢してるでしょ」
あぁ、まさにその事ならさっき悩んでた所だよ。
「時には我慢しなきゃいけないことだってあるだろ」
「私に対しても?」
ミナトに対してだからこそ、なんだよ。
「信頼されてないかー」
「そう言うことじゃないんだけど」
じゃあ、とミナトがベッドに転がり、手招きをする。
「私の隠し事を教えてやろう」
「ミナトの……?」
促されるままベッドに転がる。
「隠し事と言うか、わがまま?願い?なんだけど」
ごろごろと転がりながらミナトが喋る。
「ここに居る間はお互い変に気を使いたくないんだよ」
「……なるほど」
それが隠し事……?
「で、私の隠し事なんだけど」
あ、あるんだ。
「先日、学校を辞めました」
「はぁ!?」
びっくりして飛び起きてしまう。
「落ち着け」
「いや、え?ミナトが?」
うん、と天井を仰ぎながら笑うミナト。
「言ったじゃん、学校がつまんなくて病んだって」
「辞めてから夏休みって言って来たの?」
それは違う、と返される。
「最初はとりあえず様子を見に来ただけ。それで、どうしようかなって考えてて。私のしたいようにしただけ」
「……今後どうするつもりなの」
それはブーメランでは?と返され、深く刺さる。
「まだ考えてない。年度末までには考えなきゃいけないけど今はまだモラトリアムなまま」
「じゃあまだ私と同じだね、スタートラインにすら立ってない」
僕はスタートラインに立ってないどころか。立とうとすらしてない気がする。
「私の隠してた事は……これくらい」
「そっか、わざわざ言わなくても良かったのに」
フェアじゃないから、と返してくる。
これは逆説的に言えば僕も言わなきゃフェアでなくなる、と言う事だ。
「……心の準備が欲しいって言ったら?」
「モラトリアムは三日間」
ミナトにしては優しい。
「それまでにちゃんと伝えれるように頑張るから」
「否が応でも聞き出すから、覚悟しておくこと」
……三日以内に想いを伝えろ、か。
どんな理不尽な課題よりも、理不尽な課題で。ミナトらしい課題だ。
その課題に、僕はどうやって答えを出せば良いのだろう。
しかし、好きだと言う事実だけを伝えてもミナトがどう返してくるかわからないし。
かと言って下手に言葉を飾れる程の技量もなければ逆にミナトは笑い出すだろう。
だから、この三日間悩みに悩み抜いて、どう伝えるかを考えなければいけない。
一番お互いが傷付かず、お互いが納得できるような
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