ご
とりあえずミナト用の脱衣カゴに……床が痛かったのでなんかマットレスでも買おう。
「ミナト、シャンプーとか自分で使ってたやつ取ってきなよ」
「いや、あれでいい。ボトル増えても困るでしょ?」
確かにボトル増えても困るのはそうなんだけど……。
まぁ合理的と言えば合理的か。
「それで、そのおっきくて白い奴は何?」
「マットレスだけど」
ミナトは少し考えながら言葉をひねる。
「そんなモノ必要?」
「床が痛いから必要」
ふーん、とミナトはマットレスを手に取る。
「これどこにあったの?」
マットレスがあった場所までカートを押しながら二人で歩く。
「ここらへんの……あ、これだよ」
ふぅん。と鼻をならしながらミナトは手に持ったマットレスを棚に戻す。
「必要ないでしょ」
「いや、だから床で寝ると硬いんだって」
そうじゃなくて、とミナトは詰め寄る。
「一緒にベッドで寝れば痛くないじゃん」
ぶん殴ってやろうか、それとも
「大丈夫だよ。襲わないし、襲えないでしょ」
ぶん殴りたい。
ただ、言われたことは確かでもあった。
「だからって……」
「私のこと気にしてるの?」
色んな意味でしてるよ……。
「そもそもそんな恐怖があるなら独り身の所に転がり込まないと思うんだけどな」
「わかった、わかったよ……」
やはりいつになってもミナトには勝てないんだな。
小さい時からそうだった。いつもミナトは良いように言いくるめてくる。
だけど、それが嫌だった訳じゃない。
今となってわかるのはミナトが僕の為にこうやってしてくれたことは、僕のためになってることが多い。
引きこもりがちだった僕の手を引いて外に連れ出してくれたのもミナトだった。
『私が寂しいんだ、来い』
その不器用な言葉、今となってはちゃんと解釈することが出来る。
お前が寂しそうにしてるんだ、と。
「その他に買っとく物もある?」
「んー、今カートに入ってる中で大体大丈夫じゃないかな」
おっけ、と頷きレジに向かう。
予想以上に買いすぎてしまって二人で持つには大変と言う事に気が付いて立ち往生。
「どうする?」
「歩きたくない」
外は炎天下。こんな状態でこの量の荷物を持って帰るのは大変だ。
どうしたもんかとあたりを見て回ろうとすると。
「なので軽トラを借ります」
「借りれるの?」
あそこ、と指差した先には軽トラ無料貸出の文字。
「運転できるの?」
「出来ないことも無いと思う」
まぁそれしか方法はないか、と店員さんに軽トラを借りに行く。
「借りれるって。運転者のサインが必要だからお願い」
「ほいほい」
ミナトが書類に記入してる間に借りる軽トラに荷物を乗せる。
積み込みが終わった頃、ちょうどミナトが軽トラの鍵を持ちながらこっちにやってきた。
「それじゃ運転しちゃいます」
「よろしくおねがいします」
家まで軽トラで向かい、荷物をとりあえず下ろす。
そしてすぐさま時間内に間に合うようにホームセンターまで軽トラを走らせる。
「ありがとうございました」
店員さんに鍵を返すと、ちょうどお昼の時間あたり。
「近くで食べていこうか、ファミレスあたり」
「うん、食べよ」
ミナトとこうして外食をするなんて、高校生の時以来だろうか。
あの頃になるとミナトの方が外に出たがらなくなり、家でごろごろとしている時間が増えていた。
それでも、僕と遊ぶ時はちゃんと外に出てたし、それで僕は安心していた。
そして、その外食をしていた時。間接的にミナトにフラれたのだけど。
「ミナトって、本当に自由だよな」
「ん?何が?」
大盛りパフェを食べながら聞いてくるミナト。
「いや、そうやって大盛りパフェを我が物顔で食ってる所とか」
「おごりでしょ?」
そうだけど。いや、そうなんだけど。
図々しさとはまた違うなんと言うか。
「こう言う所もなんだろうな……」
僕がミナトに惚れてしまった理由の一つ。
言葉だけ聞いてあたまにハテナを浮かべるミナト。
「私のどう言う所がご不満で?」
「そうやって追加でオーダーをしようとしてる所」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます