に
ミナトは持ってきたゲーム機を僕に見せてくる。
一緒にやるぞ、と言いたげな顔をしながら。
「わかったから、座って」
「うむ」
一緒にゲームをしながらまた、くだらない話をする。
夏休みは何日までだとか、今日来る過程でこんなことがあったとか。
大学を辞めてからコンビニくらいしか行ってなかった気がするから、なんだか新鮮な気がして。
少しだけ、惨めな気持ちになった。
それを悟ったのかどうかは知らないけどミナトは話題を変える。
新作のゲームの話だとか、最近気になってる漫画やアニメの話だとか。
「一緒に見る?」
「休憩がてら見ようか」
ノートパソコンの電源を入れて話題に上がったアニメを検索して……あった、これだ。
「原作が好きで単行本で買ってるんだよね」
「へぇ、それは楽しみだ」
いわゆるラブコメディなそのアニメを一話見る。
その間は二人して黙って、たまに飲み物を飲む音が聞こえるくらい。
静かすぎてまたこいつは寝るんじゃないかと内心ヒヤヒヤしてたくらいには静かにアニメの音だけが流れていた。
「うーん、原作よりテンポ遅いかな」
「そうなの?」
うん、と頷くので試しに電子書籍版で読んでみることにした。
とりあえず一巻だけなら痛手にはならないし購入。
読んでいるとミナトがスマホを覗き込んでくる。少し邪魔だな。
「あぁもう、わかったから」
タブレットを取り出してデータを同期させ、タブレットで改めて一緒に読む。
「確かにアニメはテンポ遅いかもね」
「でしょ?あ、ここまでが一話だね」
まだアニメ二話を見て無いけど、まぁ買ったしそのまま読み進めよう。
気が付いたら既刊全部購入して読み終えていた。
読み終えるまでに何回かタブレットを奪われ、ここが好きとかを力説されたので時間はかかったものの。
なんだかんだで一緒に読むって言う経験が楽しかったから、これでいいかなと自分で納得してしまった。
ミナトは読み終えた後タブレットを手放す。
「お風呂に入りたいのですが」
「先がいい?後が良い?」
後で、と言われるので先にお風呂に入る準備を――。
「あ、お湯沸かしてね」
「今でもこの時期湯船浸かる習性は残ってたんだ」
沸かしときますよーと言いながら、着替えを取り部屋の扉を閉める。
このキッチンと一緒になった廊下が脱衣所代わりと言うか、今日からそうなった。
「……今度カゴでも用意しとくか」
湯船を所望されたので湯船にお湯を張る。
自分はシャワーでいいんだけど、と思いながら手桶で少しずつ貯まる湯船からお湯を掬い上げる。
汗を流しながらミナトの事について考える。
「そもそも会ったのが何年ぶりだっけな」
高校卒業してから……あぁ、年末年始帰ったからその時に会ったのが最後か。
なんか生意気で、自分勝手だけど、思いやりがあって。
そんな所は小さい頃からずっと変わってないミナトそのままだ。
安心……していいのかどうかはわからないけど、今日から一緒に暮らす訳だし。
……一緒に?
別の意味で汗が吹き出てきた気がする。
まぁ特にミナトに何か感情を抱く訳でもなんでもない。
そう思ってたのはミナトが長風呂から上がるまでの間だった。
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