第6話 Cinderella's confession

「その、ごめんなさい。」


雪が怒りながら泣き始めたのを見て、雪乃は止められなくてごめんなさいと頭を深く下げた。


「…………はぁ。いや、こちらこそごめん。ちょっと荒ぶった。」


その姿を見てようやく、自我を取り戻したようで、雪はなんであんなことをしたんだと頭を掻きながら、頭を下げる。


「で、君の言うその昔のことってなんなの?あぁ、口調はもうバレちゃぅたしこのままで行くね。」


積年の恨みを放ったからか、どこか清々しい顔で雪が尋ねた。


「あ、その、私が中3のとき、いじめられてたところを雪さんが助けてくれて。」


雪乃も復活した彼の姿に笑みを浮かべながら、答えを返す。


「あぁ、そうだっけ?何組?」


僕は確か1組とフランクに雪乃へと話しかける。

彼は今、生まれて始めて何も取り繕わずに他人と会話をしていた。


「3組でした。助けてもらったのは前半の……6月くらいです。」


思い出してほしいと、雪乃は情報を追加する。


「あぁあの子ね。奇絶してた。」


そのおかげか、雪は手鼓を打って頷く。

雪の落ち着いてきた脳には、しっかりと当時の記憶が蘇っていた。


「そ、そうです。その、実を言うと私は助けてもらった時の記憶はほぼないんです。」


雪乃は『思い出してくれた!』と喜びながらも、申し訳無さそうに言う。


「なのに、僕が好きなの?」


助けてもらったから好きになったはずなのに、その記憶がないと明らかな矛盾に雪が頭をひねる。


「…………誰でも良かったんです。」


雪乃は、うつむいて小さく呟いた。


「ハッ?」


雪が告白してるはずなのに何を言い出すんだこいつと、聞き返す。


「助けてくれたら、多分誰でも良かったのかもしれません。」


雪乃は罪悪感とともにそう吐き出した。


「なに?煽ってんの?」


そんなことを言われたら当然、人は怒る。

いや、普段の雪ならピクリとも表情を変えずに受け流すかもしれなかったけれど、今の雪は普通の人以上に過剰反応していた。


「ち、違います!!助けてくれたのは、後にも前にも雪さんだけでしたから……。だからあなただけがいいんです!!」


雪乃は少し変な方向に曲がった告白を述べる。


「君、変な子だね。」


雪はその謎理論に笑いながら、雪乃へと告白の感想を伝えた。


「そ、そのたまに言われます。」


雪乃は、若干雪から目を逸らす。


「アハハハハハ、だよね。アハハハハハ」


その姿と言葉の内容に雪は、笑いが止まらなくなった。


「で、僕の容姿が理由じゃないってのは?君の心のなかではそれが理由でも、やっぱ関係あんじゃない?」


雪は笑い過ぎで目の橋に浮かんだ涙を指で拭いながら、やはり拭いきれないその疑惑を尋ねる。


「いや、ありません。」


しかし、雪の心とは裏腹に、雪乃はハッキリシッカリ瞬時に否定する。


「なんでよ?そこまではっきり言うならなんか大きい理由があるんでしょ?」


今まで容姿と少しだけ金持ちのお家柄だけを求められてきた雪は、やはりそれ以外の要因です気になられることを信じられなく、そう意地悪目に聞き返した。


「はい。だって私、」


雪としては理由なんてなく『そっそれは…』となることを見込んでいたのだが、雪乃は理由を言えるようであった。


「私?」


雪は最初から引き伸ばされ続けていたそれがわかるのかと、一歩雪乃へと近づいてつぶやく。


「私、目が見えませんもの。」

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