第5話 Prince's wrath
「はぁもういいや。ねぇ、君なんなの?からかってんの?」
ここまで出てしまっては誤魔化せないのと、もはや取り繕うのが面倒になった彼は一変、暴力的な口調でそう問いかける。
「えっ?あの、そんなことはなくて……。」
いきなりの変化に戸惑いながらも、なんとか雪に自分の思いを伝えようとする雪乃。
「だったら何?いきなりありがとうございますって。容姿に釣られたんならはっきりそういえばいいのにさ。変にきれいに着飾りやがって。はっきり言って本当にウザいんだよね。」
雪は自分でも溢れ出るその罵詈雑言に驚いていた。
なぜならば、それらは雪乃へと向けられたものではなかったからだ。
この全ては彼のまわりの女たちに向けられた言葉。
つまり、雪は雪乃という少女を通して、他の女子たちへの悪口をぶちまけて、雪乃を暴言のはけ口にしているのだ。
「その、ごめんな…」
雪乃は彼がおかしいことに気づきながらも、それが何か深い理由のことだろうと思う。
どうにかしないといけないが、その手段が見つからず、彼女はただ謝るしかなかった。
「いや、謝ってほしいわけじゃないですから。」
そういう雪は、そこだけが敬語なのも合わさってとてつもなく怖い。
「マジでさ、僕も色んな人から告白されてずっと振り続けてるけどさ、こんなの初めてだよ。」
「あの……」
雪乃が暴走を始めた雪を止めようと何か、言おうとする。
「こんなにムカついたのは初めてだよ。」
がしかし、それすらも彼の暴言に遮られた。
本人も止められない言葉を、他人が止められるはずがないのだ。
「みんなみんなさ、見た目ばっか見てさ。家柄とか見てさ、好きなんて言ってさ。薄っぺらいあの時エピソードを付け加えて!なんなんだよ!!!そんなに外がいいのなら、貴方の体が好きっていえばいいだろ!!」
雪はヒステリックに叫ぶ。
彼の目にはおろおろする雪乃なんて映っておらず、今まで自分に告白してきた女性たちが恨む対象として映っているのみだった。
「その、今回は一旦……」
もう完全に雪乃が関係なくなった暴言。
それを聞いた彼女は、今は話せる状態ではないと、告白なんて出来そうにないと引こうとするが、
「家柄目当てなら家と結婚すればいいだろ!!!」
もはや雪の耳にその言葉は届いてすらいない。
「挙句の果てには、僕と付き合えば自慢できるって!!?ざけんなよ!!!こっちの気持ちを考えろ!!!」
彼はただただ今まで貯めてきた、心の奥にしまい込んできた暴言を、感情を放つだけの存在だった。
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