第4話 Prince's nature

雪はこのあと続くであろう「好きです」「付き合ってください。」の言葉、もしくは「前々から…」「あのときのこと」といった運命的なものを自分に伝えようとする言葉を思い浮かべて、なるはやでお願いしたいと考える。


それでも、彼の視線はその少女の方を向いたままで、顔は常にニッコリと微笑んでいる。


「雪さん、その……………。好きです!!付き合ってください!!!!」


その言葉が聞こえた瞬間、雪はほらきたと内心ニヤついた。


さてと、今度はどうやって振ろうかと考え始める雪に、雪乃は言葉を続ける。


「中学校の時、雪乃さんが助けてくれて…。その時からずっと言おうと思ってたんです。」


雪乃は両手を組んで、ゆっくりと己のペースで言う。


「つ、付き合ってもらえなくても全然大丈夫なんです。でも、これだけは伝えたくて……。」


雪の反応がないので不安になり、彼女は息を大きく吸って、


「ありがとうございました!!」


そう大きく叫んだ。


「………雪乃さんは僕のどこが好きなの?」


どのように振るかを考えていたはずの雪も、雪乃が今までの人々となにか違うことを直感で悟り、そう聞く。


「その、具体的に言おうとしても、なんか……思い浮かびません。すみません…。」


そう雪乃がモジモジしながら言ったのをみて、雪は何故か無性に腹が立ってきた。


「………僕の見た目が好きなんじゃないの?ひと目見て惚れたとかじゃないの?」


自分の中で生み出されること怒りは何なのかと戸惑いながらも、溢れでるそれを止めることができず、彼はずっと隠してきた不機嫌さを全開にして言った。


「違います!!!その………私は……」


けして容姿で惚れたわけじゃないと、強く否定した雪乃はどうにか彼の好きなところをあげようと考える。


「私は………」


しかし、いつになってもその先の言葉が出てくることはなかった。


「なんなんだ………ですか?」


雪は口ごもる雪乃へのとめどない怒りから荒ぶりそうになる口調をなんとか抑えて、丁寧語で聞き返す。


「………………。」


しかし、やっぱり雪乃はいつになっても答えることができなかった。


ここで勘違いしてほしくないのは、雪乃は思いついてないわけではない。

どちらかといえば、かなりの数を思いついている。


しかし、それをどのように伝えればいいのかが分からない。概念的な『好き』を言語化できずにいるのだ。


まあそんなことを雪が知るわけもなく、


「チッ」


とうとう雪は抑えきれずに、そう舌打ちをしてしまった。

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