第三十二話「絶望の先の――」

 Side 緋田 キンジ


 ディアボロスが3体に増えた。


 何かの冗談だろと思いたい。


『残念ながらあの3体全てが本物のディアボロスだ。パワーダウンはしてないよ』


 と、絶望的な解説を谷村君がしてくれる。


『おい、一体だけでも手古摺ったのに3体って――』


 キョウスケの言いたいことは分かる。


 だが――


『だけど諦めるワケにもいかないだろ?』


『でも――』


『こんな絶望的な状況は初めてだが、何とかしてみせるさ!!』


 圧倒的な力を誇るディアボロスを3体。

 全てを倒さなければならない。

 

『ザイラム軍!?』


 と、ここでザイラム軍の艦隊が出現した。


『状況は理解した――受け入れ難いとは思うが――これより貴官らを援護する――』


『『『愚かな――』』』


『こちらディメンションクロス!! 突破するのに時間が掛かった!! 戦況は理解している!! すぐさま援護に入る!!』


 ザイラム軍とディメンションクロスの部隊がディアボロスに激しい集中砲火を浴びせる。


 が、大して攻撃が効いている様子を見せず、反撃の手を伸ばそうと――


『どりゃあああああああ!!』

 

 谷村君が


『はあああああああああ!!』


 フィアが


『てりゃあああああああ!!』


 イチゴが


 それぞれ違うディアボロスに攻撃する。

 

『『『愚かな!! そんなに死に急ぎたいか!!』』』

 

 ディアボロスが目標を変えようとするが――

 

『させるか!! 何をボサッとしている!! 全員支援攻撃の手を緩めるな!!』


 俺達、第13偵察隊は支援攻撃する。

 諦めない。

 諦めたくない。

 ただその一心で攻撃を続ける。


『『『無駄だと分からんのか!? この程度のダメージで――ダメージだと?』』』


 ディアボロスが傷ついている。

 その事にディアボロス自身が困惑していた。


『奴も無敵ではないと言う事さ――』


 と、谷村君が言う。


『ディアボロス。君は生命の完全体になったつもりだろう。確かに君は強大な力を持つに至った――だがそれだけなんだ』


『『『なんだと?』』』


『何度でも言おう。君は強大な力を持つに至った生命体に過ぎないと』


『『『我を愚弄するつもりか!!』』』


 怒り任せに谷村君に向けて3体のディアボロスの攻撃が飛ぶがそれを楽にかわす。


『『『この程度のダメージ、修復すれば!!』』』

 

 そして漆黒のオーラを身に纏い、傷が再生されていく。

  

『そこだ!!』


 その瞬間を狙って谷村君が猛攻を――素早く瞬間移動の様に移動しながら三体のディアボロスを大型バインダーブレードで斬り裂いていく。

  

『『『何度やっても同じこと――』』』


 だが傷の修復が遅い。

 これは――


『この機体にはあのシュトラールと同じ、マシン・シンクロン・システムを搭載している――そして緋田さん達の機体にも』


『俺の機体にも!?』


『だから信じて飽きらず目に戦って欲しい――』


『――分かった』


 もう吹っ切れた。

 あの時、フィアのお姉さんを助けた時と同じだ。

 例え拳だけになっても戦い抜いてやる。


『その通りよ――お待たせしてごめんなさいね――』


『この声は――』


 メイド喫茶の店主、ヘレン・P・レイヤーが空中に浮かんでいた。

 傍には見た事がないロボットだがパワードスーツだかが浮かんでいる。


『地球だけじゃない。様々な世界の、人の心の光を貴方達に届けに来たわよ』


『え』


 一瞬意味が分からなかった。


『緋田 キンジ、貴方のこれまでの歩みは無駄では無かったの。今からそれを証明してあげる』


 そして光が明るく照らし出す。

 都市を焼いていた炎が消える。

 同時にディアボロスとその勢力以外の皆が金色の輝きに身を包む。


 流れ込んでくる。


 これまで出会った様々な人の想い、気持ちが流れ込んでくる。

 

 世紀末世界の人々――それだけじゃない、バハムス帝国、48年の日本、Aliceの少女達、この世界で出会ったルーナや高飛さんの気持ちも。


 アジア連やザイラム軍も――


『『『それはレヴァイザー!? どうしてお前がそれを!?』』』

   

『こう言う時のために用意しておいたのよ。さあ、後は任せたわよ』

 

 そしてヘレン・P・レイヤーはレヴァイザーと呼ばれたマシンと共に去っていく。


『『『馬鹿な闇の力が――負の無限の力が!!』』』


『何だか分からないが今が好機!!』


 俺はこの好機を逃してはならないと思った。

 その考えは同じだったのか、フィア皇子達、Aliceの少女達、谷村君が強烈な一撃をディアボロス達に見舞う。


『ザイラム軍全艦攻撃開始!! 遅れをとるな!!』


『ディメンションクロスの部隊も続け!!』


 次々と集中砲火がディアボロスに降り注ぐ。

 さっきまでとは違い、ダメージを与えていると言う確かな手応えがあった。

 

 また一体、また一体とディアボロスはその数を減らしていく。


 そして――


『こうなれば一時――』


『させるかよ』


 俺と


『逃がさない』


 リオが逃げようとするディアボロスの顔面に立ち。

 そして全身の火器を一斉に解き放った。


『馬鹿な――我が――滅びるだと!? こんな場所で!? 滅びるだと!?』


『あばよ』


『うわああああああああああああああああああああああああああああああ――――!?』


 最後の一体のディアボロス。

 完全消滅。

 

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