第二十七話「奇跡の光」

 Side 緋田 キンジ


『何が――』


 俺は目の前の光景が信じられなかった。

 突如として谷村君の機体、シュトラールからピンク色の光が溢れ出る。

 その光の噴出は止まらない。


 この混迷と化した戦場一帯の空を飲み込み、周囲に桜の花弁のように光の粒子が吹き荒れる。


 不思議と恐くはない。

 今迄感じた事がない温かさを感じる。


 なんだこの現象は――


 敵も味方も困惑している。

 

 そしてその困惑はモンスター達やディアボロスにも――


『その光は――まさかソレは――可能性の光の一つ――進化を成し遂げようとでも言うのか!?』


 ――違うよ。これは進化ではない。ただ心に訴えかけてるだけだ。


『心にだと!?』


 あのディアボロスが狼狽している。

 それよりも――


『谷村君の声が頭の中に響いた?』


 どうなってしまっているんだ今の谷村君は――


『難しい言葉を省くと、心の光を照らし出しているだけだ。それその物に害は無いし、谷村君も大丈夫だ』


『プレラーティ博士?』


 唐突かつ久しぶりの登場だ。

 同時にこの超常現象についてもザックリながら解説してくれた。


『アレは人が誰しも持つ可能性の光だよ。ただそれが具現化しているだけにすぎない。それが歪んだ進化を遂げた邪神に対して効果的なのさ』


『言ってる事がサッパリ分からないけど谷村君は大丈夫なんだな?』


『ああ、私が保証しよう』


 心の、可能性の光か。

 確かにそう言われると納得してしまう。

 

 ディアボロスは必死になって谷村君を排除しようと躍起になってるが谷村君は微動だにせずに祈り続けている。


 この場でやるべき事は分かっている――


『出来るかどうか分からないが――ディアボロスを倒す!! それだけだ!!』


 俺も光の一部になったような温かさを感じながらディアボロスに攻撃を開始する。

 それに皆続いていく。

 

 その間にこの摩訶不思議な状況でどう思ったのかアジア連やゼッター軍、ドラゴンクロウは後退していった。 


『ええい、今回は引き下がってやる!!』


 そしてディアボロスも形成の不利を悟ったのかモンスター軍団を残してその場を去っていった。

 

 残ったのは残敵の掃討となった。



 今回の戦いは谷村君が間違いなくMVPだった。


 いや、戦いではなかっただろう。


 平和への訴え。


 そしてあの光の奇跡。


 戦闘を一時的とは言え、終わらせてみせた。

 二度も言うがウチの両親が見たらどう思うだろうか。


「てかあの光景、地球でもあらゆる周波帯で流してたのか……」


 誰が流したか知らないが地球でもあらゆる周波帯で流していらしい。

 様々な言語訳がなされ、世界中に広まっている。

 再生回数は億単位行くかもしれない。


 あの奇跡の光の部分も注目を集めているが、演説の部分も注目を集めている。

 

 同時にふと気づいた。


 いや、踏み止まれたかもしれない。


 人間同士で争い合う愚を思い出せた。


 何時しか仕方ないと割り切って戦いに挑み続けていたかもしれない。

 ある意味では人類に絶望していたかもしれない。


 それに気づかせたくれた谷村君に礼を言うべきだろう。


(この戦い――劇的に変化するな――)


 そして確証はないがそう思わざるおえなかった。

 

 後は俺達の仕事だ。

 

 戦いを終わらせるために戦おう。

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