第二十五話「小休止その4」

 Side 愛坂 イチゴ

 

 私は愛坂 イチゴ。


 Aliceの少女としてまだまだ半人前の女の子です。


 特に緋田さん、リオさんと関わって、異世界での出来事があってからより強く思うようになりました。


 そんな異世界での出来事も一段落し、新たな脅威が現れました。


 名をディアボロス。


 谷村さんやヘレンさん曰く、歪んだ進化を遂げた存在なのだとか。


 よく分からないけどゼレーナ以上の脅威であり、今以上に強くならないと立ち向かう事すら困難な相手です。


 そのために私達は谷村さんやヘレンさんの呼びかけに応じて団結し、そしてこの平行世界の大阪日本橋の土地に集まりました。


 部隊分けですが概ね防衛チームと攻撃チームに別れる感じでメンバーの選抜については議論がなされているようです。


 人同士との戦いも予想される過酷な事態だけど、それでも私はAliceとして戦います。



 =緋田 キンジとの会話=


「こうして会話するのも久しぶりだな」


「はい、久しぶりです。助けに来たのは良かったんですけどあまりお役に立てれませんでした」


「いや、その気持ちだけでも十分だよ」


「でも、もっと強ければ――」


「それについては俺もだ。何だかんだで勝ち戦がずっと続いてたからな。心の何処かで天狗になってたかもしれねえのがな――」


「緋田さん――」


 どうやら責任を感じているようでした。

 これについては私も申し訳なく思います。


「まあ、リベンジするためにも強くならないとな――と言っても谷村君任せになるんだけど」


「谷村君って凄いですよね」


「まあな――メチャクチャだ。神様から転生特典幾つかもらってるだろってぐらいに凄い」


「どう言う事ですか?」


「ああそれはな――」


 そこで語られたのはWEB小説の主人公のお約束でした。

 成程、そう言うのがあるんですね。


「しかしディアボロス――あのままなら私達を倒せたと思うんですけど、どうして退いたんでしょうか? 助けに来る前には現れた時は姿を現しただけで軍勢を出すだけ出して去っていったんですけど」


「それは俺も気になった。もしかしてまだ本調子じゃないのかもしれないな」


「成程――」


「本調子になる前に本体を見つけて叩くか、もしくは本調子になったところを迎え撃つか……どちらにしろハードな戦いになりそうだな」


「私も頑張ります」


「ああ。クイーンゼレーナの時みたいなのを期待しているよ」


「はい!!」


 あの時はフィアのお姉さんを助け出すために必死でした。

 今度は皆を守るために私達Aliceの力を結集してディアボロスを倒すんだ。


  

 =狭山 ヒロトとの会話=


「狭山さんって緋田さん達と同じぐらいパワーローダーの扱いが上手いんですね。それだけじゃなくて町を運営していたり、その――女の人と――」


「あーその、無理しなくてもいいよ。世紀末の事情って奴だよ」


「はい――フィアさんもそうですけど、違う世界の人間なんだなって思います」


 狭山さんが住まう世界、あのリオさんが住んでいた世界には法も秩序もありません。

 なので前時代的な政略結婚をしてでも生き延びるのは当たり前な世界だとは知ってはいるんですがその――どうしても何だか変な気持ちになっちゃいますね。 


「まあそれについては言い訳もしようもないと言うか」


「いいえ。それに――皆さん幸せそうですから」


「……ありがとう」



 =フィア・バハムスとの会話=


「フィア皇子って色んな人に慕われてるんですね」


「ははは、何か自然とこうなったんだよ」


「フィアさんもやはりハーレムを?」


「何かそう言う流れになってしまってるんだよね……」


「でもフィアさんなら皆さんを幸せに出来る。そんな気がするんです」


「そ、そうかな……」


 顔を真っ赤にするフィアさん。 

 言ってる私も何だか変な気分です。



 =ルーナ・キャスケットとの会話=


「ディアボロスとの戦いではルーナさん達に助けられましたね」


「アレは運が良かっただけ」


「それでもありがとう。助けてくれて」


「うん――いい子なのね、愛坂さんは」


「あ、ありがとうございます。ルーナさんも綺麗でステキだと思います!」


「ふふふ、ありがとう」



 =谷村 亮太郎との会話=


「対ディアボロス戦においての強化は進んでるよ~」


「私達勝てるのか不安です――でも勝たないと世界が滅んじゃうんですよね」


「まあね。だけど気負いすぎるのもダメだよ」


「は、はい」


「それにせっかくいい仲間達に恵まれてるんだからもっと頼りにした方がいいと思うよ」


「仲間――」


「諦めなければきっと望みは叶うってほど、現実は甘くはないけど、手を伸ばさなければ何も始まらないんだ。大丈夫、ここにいる僕や皆を信じて欲しい。諦めずに手を伸ばし続けて欲しい」


 何だか不思議です。

 とても説得力のようなものを感じます。


「僕に言える事はそれぐらいだ。次の戦いの時は近いよ」


「そう言えば谷村さんも戦うんですか?」


「まあ相手が相手だからね――それにやっておきたい事がある」


「やっておきたいこと?」


「まあ次の戦いがアジア連やザイラム軍だったら分かる事だよ」


 一体何をする気なんでしょう。

 とても気になります。

 


 =御剣 トウカとの会話=


「この状況、何だかんだ言って楽しんでるだろ」


「はい。色々と勉強させてもらっています」


「ほう例えば?」


「確かに私達はディアボロスに一度敗北しました。今でも不安です」


「……」


「でも上手くは言えないけど、次はきっと上手く行く。そんな気がするんです」


「まあ、ある意味イチゴらしいわね」


「はい――」


「どんな状況でも前向きで真っすぐで、挫けても折れずにまた立ち上がって――だから皆貴方を認めたのね――」


「そ、そうですか?」


 これはこれで何だか気恥ずかしいです。


「ええ、貴方の最大の力はAliceじゃない――その気持ちを忘れないで、貴方のままでいて――」


「は、はい」


 貴方のままでいて?

 いつも通りってことなのかな?

 それでも、それで皆の助けになれるのならいいかな。



 まだまだ皆と喋りたいこと、語りたいことは沢山あるけど楽しい時間はあっという間に過ぎていく。 


 逆を言えば、不謹慎だけど――今がそれだけ楽しいってこと。

 

 こんな一時を守りたい。


 そのためだったら――Aliceになれて本当によかったって思ってる。


 恐い事、辛い事も沢山あるけれど、この一時があるなら私はAliceとして戦える。


 まだまだ未熟、半人前だけど。


 Aliceとして戦い抜いてみせます。

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