第二十四話「小休止その3」
Side 緋田 キンジ
「で? 何の様ですかミスX、それと佐伯 麗子三佐」
大阪日本橋駐屯地の人気の少ない場所に俺は呼び出された。
相手は公安の謎の女Xと佐伯 麗子だ。
佐伯 麗子はともかく謎の女Xは嫌いではないが、彼女は大抵こう言う時に凶報を持ってくるのでどうしても警戒してしまう。
それに組み合わせが組み合わせだ。
なんで佐伯 麗子と一緒に俺を呼び出した?
「三佐はつけなくてもいい」
「じゃあ佐伯、なんのようだ? どうせロクでもない報せなんだろうけど」
「防衛省や政治家連中は今どうなってるかぐらいは知っておきたいだろう」
「ほらやっぱり」
佐伯の言葉に俺はそう思った。
引き継ぐように謎の女Xが解説に入る。
「現在の状況は防衛省だけでなく政界、財界にとっても劇薬です。世界も混乱しているような状態です」
「無理もないだろうな。フォボスの脅威が終わったと思えばそれよりヤバい奴が出てきたんだから」
フォボスはこの全世界に軍隊を送り込み、第3次世界大戦を短期間ながら引き起こした。
それは俺達を誘き寄せる陽動でまんまと嵌められたが――それでも未だに傷跡が残っている。
特に心には。
そして人間って奴は考える。
もしもフォボスと同じぐらいヤバい連中とそれ以上の脅威がいるとしたら?
と。
それが現実の物となり、今は世界中が大混乱に陥っているのだろう。
「戦っている背後から核兵器で吹き飛ばすなんて事態はイヤだぜ――もっとも核兵器でどうにかなる相手か疑問な連中もいるがな」
図星なのか二人は押し黙った。
「んで? 話はそれだけ?」
「いや、上の方はこのゲートの破壊を」
「冗談じゃねえ」
俺は佐伯の一言を斬り捨てた。
「考えは分かる。ユナイティア絡みの一連の騒動に関わるのは上の連中はごめんだって言うんだろ?」
佐伯は「ああ、防衛省にもそう言う意見は出ている」と返す。
「だがディアボロスが平行世界を移動できる術を持たないと勝手に信じるのは楽観的すぎるんじゃないのか?」
「それは――」
佐伯は押し黙った。
「確かに死ぬような目にも何度もあった。もうごめんだって思いもした。だけどな、その過程で俺は大切な物は見つけた。それを手放せって言うんなら自衛隊辞めてでもあいつらと戦う道を選択する。リオもキョウスケもそれを尊重してくれるだろう」
「自衛官としては失格だが、成長したんだな。こんなにも強く」
「佐伯、過去を振り返るにはお互いまだ早いぜ――」
「そうだな――だが実際問題、政府や防衛省、世界はどうするつもりだ?」
「魔王を倒せば世界は救われるみたいな理論はイヤだが、それに懸ける」
「理想論だな」
心なしか苦し気に佐伯が言う。
だが俺は――
「理想論だがそれを成せる力が集まっている。俺達だけじゃない――狭山君、谷村君、フィア君、Aliceの少女達、ディメンションクロス――まだ足りないなら手繰り寄せてみせる」
そしてパチパチと拍手しながら谷村君が現れた。
「見事な演説だったよ」
「谷村君――」
「僕も信じたい。次の世代の可能性を――プレラーティ博士やヘレンさんが君に手を貸す理由が分かった気がするよ」
「――ありがとう。手を貸してくれて」
「どういたしまして」
本当に、俺は人に恵まれたなぁ。
「なんとなく、緋田さん達が凄い事を成し遂げられた理由が分かった気がします」
黙っていた謎の女Xさんが口を開いた。
「私の目的は緋田さんを通して、この事態を上の人間が思い描いたシナリオに収集するのが目的でしたが――」
「今はどうなんd?」
「やめます。私も信じたいです。私の出来る範囲で、上の方を抑えて見せます」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫です。信じてください」
「分かった」
Xさんを信じることにた。
「なんなら僕も手伝おう。それにヘレンさんに頼めば日本政府ぐらいなら軽く抑えられるはずだ。財団にも働きかければ世界もある程度は抑えられる」
「なんかすごい事言ってるな――まあここまで来たら信じるよ」
谷村君の周りは一体全体どうなってんだか。
「ああ、そうそう。財団の代表者から伝言を預かってるよ」
「財団の代表者?」
「君に他の世界の未来を守って欲しい。ここで我々が動かなければ、それは人類にとって恥ずべき歴史として後世に語り継がれるだろう。これがとても身勝手な頼みである事は承知している。だからこの星、他の星の未来を一緒に守らせてくれ――だってさ」
「財団の代表者ってどんな人なんだ?」
「僕と同じような存在だよ。前世で人類の未来を憂いてとんでもない規模の世界大戦を引き起こした人」
「大丈夫なのかそれ――」
一連の騒動が終わったらラスボスとして君臨とかしないよね?
「大丈夫だよ。もしも財団の代表者が、道を違えたその時は僕が迷わず殺すように約束してるから」
「なんつー関係だ」
「ちなみにその人からとんでもない量の支援物資が届くから。政府や防衛省の支援を打ち切られても暫く戦えるだけの物資がね」
「本当に何者なんだ財団の代表者……」
頼もしいがちょっと怖くもあった。
「しかし谷村君が財団とも繋がりがあったとは――」
ここでXさんが口を開いた。
「知っているんですか?」
「ええ。特に今のトップは本気を出せば世界を掌握できる程の人物でアメリカの大統領ですら逆らえないとか――他にもパワーローダーを積極的な導入を進めていて、核兵器や無人機を嫌い、地球環境の再生事業にも力を入れてるとか」
「本当にとんでもないな――」
軽く聞いただけでもとんでもない人物だと言うのが分かる。
その人に一緒に地球を守らせてくれと言われたのか俺は。
「まあ、もしかしたら会う事もあるかもね」
「おいおい勘弁してくれよ。会うのが恐くなってきたんですけど」
最近の十代はどうなってんだ。
本当に末恐ろしい。
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