第十五話「敗北と敵の正体」

 Side 緋田 キンジ


『たく……死ぬかと思った……』


 最後の攻撃の着弾場所に大きなクーレターが出来てる。

 敵はどうやら帰ったようだ。


 完敗だ。

 殆ど手も足も出なかった。

 今度はアレと戦えと言うのか。


(……とりあえず皆の安否が先か――)


 どれだけ生き残ってるか。

 リオは大丈夫だろうかと必死に皆を探す。


『大丈夫ですか』


『フィアか……』


『はい、安心してください。皆は無事です。リオさんも愛坂さんも御剣さんも――』


『そうか――』


 どうやら最悪の事態は間逃れたようだ。


『正直このまま意識を手放したい気分だが――アレは何なんだ?』


『ディアボロス。ゼレーナやフォボスですら恐れた存在です』


『ゼレーナやフォボスですら恐れた存在?』


『詳しい話はソフィア姉さん――あのゼレーナが話してくれます』


『そうか』


 クイーンゼレーナ。

 フィアのお姉さんであるソフィアさんの体を乗っ取って活動している人類の天敵、ゼレーナの変異体である。

 


 自衛隊も大ダメージを受けてあれこれと忙しい状況だ。


 だがそれでも目の前の女性――人ゼレーナから聞かなければならない事がある。

  

 主だったメンバーは大阪日本橋に作られた天幕に集結している。


「バハムス帝国やAliceの面々などにはある程度先に話したが――あのディアボロスはフォボスや我々ゼレーナですら恐れる存在――知的生命体が歪んだ進化を遂げた存在とでも言えば良いだろうか」


「歪んだ進化を遂げた存在?」 


「そうだ。何らかの要因によって急激に進化した存在。フォボスもゼレーナはその出現を恐れていたのだ」


「知的生命体が進化したら巨大ロボットになってあんな出鱈目な強さになるって信じられない――けど信じるしかないんだろうな――」


 俺は諦めたように相手の言葉を鵜呑みにした。

 

 ――神を滅ぼすつもりか? その手で? 私を滅ぼしてみろ! 待っているのは絶望の未来しか――


 ふとフォボスが言ったセリフを思い出す。

 てっきり絶望の未来とはゼレーナの事だと思っていた。


 そのゼレーナも。


 ――我々ゼレーナはあらゆる並行世界に存在し、そしてある一定水準の文明を観察し、データーを収集し、そして――殲滅するか、家畜にするかの選別を行い、また別の文明を探し出す――


―喜べ。貴様たちは私達の家畜になるのだ。その驚異的な軍事技術と新たな文明を探る当てるための並行世界のゲート――私は何としても手に入れたい―


 などと言っていた。

 今にして思えばフォボスもゼレーナも知っていて恐れていたのではないか。

 進化した存在に。


 そいつがディアボロス。


「こう言う時、年長者として奮起しなくちゃいけないんだろうが――このまま再戦しても結果は分かり切ってる――何とかしないと」


「その何とかする方法はあったりして」


「誰だ?」


 現れたのは中性的なボブカット気味のまだ高校生ぐらいの少年だ。

 

「谷村 亮太郎、通りすがりの高校生さ」


そう名乗ると続けてこう言った。


「プレラーティ博士から大体事情は聴いているよ。本来ならウルトラマ〇が相手するような化け物と戦って生き延びたって。だからここらでパワーローダーを改造する事に決めたんだ」

 

「パワーローダーを改造?」


 突然現れて何を言ってるんだ?


「勿論マジックメイルの強化やAliceの子達のパワーローダーの強化もするよ。金は欧州の財団持ちで」


「何か話がよく分かんないけど大丈夫なのか?」


 てか財団ってなんだよ……


「大丈夫も何もやるしかないんだよ。神に限りなく近い存在に目を付けられたんだ。僕もプレラーティ博士も本腰入れないといけない。まあ取り合えずは日本橋で休みなよ」


「はあ……」


 との事らしい。

 本当に大丈夫なんだろうか……

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