第九話「その夜」

 Side 緋田 キンジ


 俺は与えられた個室でゆっくりしているとリオが現れた。


「何か最近は積極的だな」


「うん、余裕がある時にこう言う時間作っていかないと。あの世界の女は私含めて皆なんだかんだ言ってタフだから」


「そうか」


「だけど恐いの」


「恐い?」


「私は荒野の女だから、ハーレム作ってもいいからせめて――ずっと一緒に傍にいさせて」


「おいおい、滅多なこと言うもんじゃないぜ」


「今だけは弱い自分をさらけ出させて」


「はぁ……こんないい女に恵まれて、ハーレムとか作ったらそれだけで罰当たりもんだぜ」


「でもでも、狭山君とかは容認してたし――」


「ああ――」


 狭山 ヒロト。

 荒廃したあの世界で見事成り上がってハーレム作ったWEB小説だかラノベ主人公みたいな経歴の持ち主である。


「まあ、それも俺が作らなきゃいい話だしな」 


「それはそれで嬉しいけど、本当にいいの?」


「何度でも言うぞ。こんないい女に恵まれて、ハーレムとか作ったらそれだけで罰当たりもんだ」


「でもキンジならハーレム作れそう」


「はぁ……なんつー会話だ。普通女の子からハーレム容認する言葉が飛び出るか? そりゃ本音を言えば憧れるよ。男だしな」


「うん、嬉しい。万が一出来たら許してあげる」


「あのなぁ……」


 笑顔で言うか普通。

 俺信用されてないのか?

 

「ほんと、信じられない。私にこんなステキな旦那様が出来るなんて」


「ステキ?」


「パメラもいい旦那様に恵まれて幸せだと思う」


「そうか」


 キョウスケもまさか女に恵まれるとはな。

 あの駐屯地にいた頃は考えもしなかった。


「後はパンサーに良い相手がみつかればいいんだけどな」


「それは本人の努力次第」


「本人の努力次第ね。まあパンサーならいい相手見つけ次第スグにものに出来そうな気がするな」


「うん。パンサーなら大丈夫」


「ああ」


 ちょっと酷いかもしんねーが実際そんな気がするしな。

 


 Side 宗像 キョウスケ


 俺はパメラと個室で二人きりになっていた。

 リオもキンジのところに行ってるらしい。


「何時も整備任せてすまないな」


「ううん、いいの。好きでもあるし、何だかんだで皆手伝ってくれるから」


「そうか――」


「リオとも話したんだけど、その、えーと」


「?」


 俺は首を傾げる。


「ハーレムとかって、作りたかったりするのかな」


「なんつー答えにくい質問を――」


 思わず頭を抱えた。


「狭山 ヒロトとか実際作ってたし、男ってやっぱそう言うのに憧れるもんかと」


「まあ確かに男だからな、憧れはするけどな」


「ごめん、変な質問して。でもキョウスケならやたらめったら女を作らないって信じてるから」


「作る事前提で話してない?」


「うん。日本の常識はもちろん知ってるけど、あの世界だと男にとってハーレムは一種のステータスみたいなもんだし、女が生きていく上の選択肢の一つとしてはそんなに珍しいことじゃないからね」


「あーそうなんか」


「それに色んなところ旅して色んな女性と出会ったりしたから――ちょっと心配になってね」


「成程な」


 それも理由の一つか。


「大丈夫、なるようになるさ」


「そ、そう」


 パメラは可愛らしい笑みを浮かべた。

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