第三十三話「学園決戦」
Side 火のマグナス
普通に考えれば状況は此方が優位だ。
だが――
『他の三将が拮抗しています!! 士気に影響が――』
『敵の異世界軍の戦力が想定よりも遥かに上です!! 突破するどころか逆に被害が拡大しています!!』
『敵の増援部隊が接近との報告あり!!』
圧倒的に優勢な状況にも関わらずこれだ。
土のジイさんや風の姉さんが苦戦するとは。
敵に皇太子や優秀な学生、そして自分が手合わせした異世界軍の連中のせいだろう。
あの皇太子二人と敵の異世界軍は生半可な戦力では倒せない。
『どうやら俺も前線に行かねえとならねえようだ』
俺は覚悟を決めた。
『いいか!! 異世界軍の撃破を優先しろ!! マジックメイル同士の戦いに持ち込めば此方の勝ちだ!!』
と、俺は指示を飛ばす。
☆
Side 緋田 キンジ
『ぬうぅ!!』
『やるなジイさん!!』
『ワシのマジックメイルがここまで押されるとは――』
俺は帝国の3将の一人、土のグレイと戦っている。
機体相性的な部分もあるが概ね此方が優勢だ。
接近戦同士のド突き合いなら話は分からなかっただろうが。
かといって一方的ではない。
射撃兵装を上手く織り交ぜた間合いの取り方や鈍重な外観に見合わぬ素早い動き。
伊達に3将は名乗ってはいないと言う事だろう。
だからこそ疑問がある。
『アンタ程の人間がどうして帝国に従ってるんだ?』
『帝国の大義のため、理想のため!!』
『お堅い軍人の模範解答だな――正直クーデター側の言い分、全部を信じちゃいないが、帝国のやり方が正しいとは信じちゃいない。皇帝陛下の口から直接一方的に宣戦布告されたからな』
『だとしても、ワシは――』
頑固なジイさんだ。
だが勢いが目に見えて衰えた。
☆
Side リオ
私は3将の一人、風のフェインと空中で激突する。
パンサーは周囲のマジックメイルと戦っていた。
『ええい!! 異世界の軍勢に私のスピードについて来れる人間がいるとは――』
風のフェイン。
マジックメイル名マハドーラ。
緑のマジックメイルで大きな翼のようなパーツが特徴的だ。
『これぐらいの速度出すだけならわりかし多いよ? 異世界の人達?』
『なっ?』
これは本当だ。
私も驚いた。
戦闘機と言ったか。
あの人達と模擬戦をやった事はある。(まるで実の娘のように可愛がられたが腕は確かだ)
リビルドアーミーのバードを越える速さで飛び、空中を猛スピードで飛び回る。
あの荒廃した私達の世界でも自衛隊にとって重要な戦力として位置づけられていた。
そんなのが地球には日本には何百機も存在していてそんな世界にこの国は宣戦布告をした。
自衛隊は最初は頼りないイメージだったが段々と、僅かな期間で強くなっている。
もうリビルドアーミーですら太刀打ちできなくなっている程に。
この世界のレーダーが通用しにくいと言う特殊な環境にも慣れつつある。
自衛隊は実戦経験だけで言うなら世界最高峰の組織になってしまったと誰かが言っていたがその通りだと思った。
『その話が本当だとしても私は負けられないのだ!!』
『どうしてそこまで戦う?』
『貴様には分かるまい! 帝国で女性が生きていくと言う意味が!』
『よく分からない。私は帝国の人間じゃないから。だけど女性が荒野で生きていく辛さなら分かる』
『荒野?』
『荒れ果てた荒野、秩序が存在しない暴力が支配する世界で生きて来たから。女性が選べる選択肢なんて限られている』
『強い女なんだな――君は――』
『アナタもそうだったの?』
『私は――』
キンジ。
ごめん。
この人たち、本当に悪い人なのかな?
私にはとてもそうには思えない。
☆
Side ルーク・バハムス
戦線はかろうじて膠着状態だ。
3将相手にこの戦力差だ。
これを良い状態と観るか悪い状態と観るかは人によって変わるだろう。
より正確に言えば異世界軍が強すぎて、帝国軍側はムリヤリ戦力差で膠着状態を維持しているダケにすぎない。
俺も前線に出て働いているが敵の頭数が多いだけで歯応えがない。
追加でモンスターすら投入してきている始末だ。
他にも各戦線から無理矢理引っこ抜いて来た戦力やら。
敵も必死になって攻め込んできている。
ここには反乱軍の旗印3人がいるのだ。
ここを落とせば反乱は鎮圧したも同然。
無茶苦茶になって攻め込むのも分かると言うものだ。
本当はこう言う賭けの類は嫌いなのだが不思議と負ける気はしない。
『敵さらに増援――なんだアレは!?』
などと考えていたところでまた凶報。
今度は何がきた?
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