第二十五話「バハムス帝国:グラン・バハムス皇帝」
Side フィア・バハムス
まさか父上自らが出向いてくるとは思わなかった。
だが同時にチャンスでもある。
『父上―いや、グラン・バハムス!! 何をしに来たかは分からないけど、この場に現れたのならここで打ち倒す!!』
『ふふふ―』
不敵に笑う父上。
『なにがおかしい?』
『まさか、あの軟弱な小僧が指導者の一人になって立ちはだかるとはな――まあいい。この場に現れたのは正式にある事を宣言するためでもある』
『宣言だと?』
『そうだ』
そしてグラン・バハムスは言った。
『異世界への武力侵攻を正式にな』
『なっ!?』
とだ。
『なにを考えてるんですか!? クーデターをしでかしておいてなんですけど、この国の状況を考えてるんですか!?』
正気とは思えなかった。
異世界の武力侵攻など、いくら強大な軍事力を持つ帝国と言えども不可能だ。
さらにゼレーナのような正体不明の敵までいる。
もはやこの世界の国々どうこうの問題ではない。
この世界の人間がどうなるかの問題なのだ。
『この世界をバハムス帝国の名の下に統治し、絶対なる帝国を築き、愚民どもを導く。それにはこの世界だけでは足りんのだよ。統治を成し遂げるにはより強い力が必要なのだ』
『本気――なんですね』
僕は諦めがつきながら尋ねる。
『ああ――そのためにあえて宣言する。バハムス帝国皇帝、グラン・バハムスは領土内に存在する全ての世界に宣戦布告する』
自衛隊の人達もあんまりな事に困惑している。
『だが私は寛大である。自衛隊の諸君、これまでの戦いには目を見張る物があった。もしも我が覇道に馳せ参じるのであれば相応の待遇で迎えよう』
と、勧誘まではじめた。
『それってつまりお前達の部下になって同胞を殺せってことだろう!!』
『ふざけんな!!』
『誰がそんな事をするか!!』
自衛隊から反対の声が上がる。
そして――
『狭間駐屯地の基地司令、前原 秀幸一佐だ。我々自衛隊は国民の生命と財産を守るために存在している。グラン・バハムス皇帝――貴方の言葉には何一つ賛同は出来ない』
と、狭間駐屯地の司令が返した。
『つまりそれはこの場で死にたいと言う事だな?』
皇帝は最終確認を行う。
『どうとっても構わない。私は部下に死ねと命じるような命令を下す事は出来ないが、同時に、部下に日本人を、何の罪もない民間人を殺せと命令するぐらいなら貴方と戦う道を選択するまでです』
丁寧な口調だが断固たる決意が感じられた。
戦う気なのだ。
恐怖の象徴であるバハムス帝国の皇帝と。
『ますます気に入った。だが惜しい。この場で殺さねばならんとは――攻撃開始。あの基地を占領し、そしてあの基地内にあるゲートから奴達の世界へ進行するぞ!!』
膠着した戦いの狼煙を皇帝の名の下に再び切り落とした。
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