第二十六話「アインブラッドの再臨」

 Side 緋田 キンジ


 どうにか生き延びたが状況は好転していない。


 むしろ悪化している。


 敵の総大将が空中戦艦と一緒に殴り込みしに来たのだ。


 皇帝が身に纏っているマジックメイルも相当自信があるのだろう。


 実際、息子のフィア・バハムスと父親のグラン・バハムスとで激しい戦いが繰り広げられている。


 状況は互角に見えるがフィアが押され始めており、狭間駐屯地もその余波を食らって損害を受けている。


 援護したくても戦いが激しすぎる上に両者の距離が近く、めぐるましく移動するので援護は困難だ。


 仮に自分のパワーローダー、フェンサーが万全の状態でも太刀打ち出来るかどうか怪しい。


 黙ってこの状況を見ているのは性に合わないが、並大抵のパワーローダーでは足手纏いになる。


(どうすればいい――)


 その時だった――


☆ 


 Side フィア・バハムス


(強い!!)


 僕のマジックメイル、アルビオンが押されている。

 皇帝のマジックメイル、グランシュナイドの性能が想像以上なのだ。


 皇帝のマジックメイルの操作技術は予想よりも高いのもあるかも知れない。


 確かに皇族なので厳しくは操縦技術は仕込まれているだろうが、それだけではこの状況にはならない。

 相手のマジックメイルは規格外に強いのだ。


(このままだと自衛隊の人達に被害が――だけど被害を考えてたらやられる!!)


 などと思いつつ戦い続ける。

 隙を見せられないこの状況、非情に徹して戦うしかない。


 などと考えていたその時だった。


 突如としてピンク色の飛行船が現れ、そして『お久しぶりです、ヴァネッサです!! やっと調整が終わりました!!』と言って何かを射出した。



 Side 緋田 キンジ


 来たかと思いつつ、ピンク色の大型飛行機――久しぶりに目にするヴァネッサが使うマザーバードから自分の眼前にカプセルが射出される。


 その中にはオーバーホールが済んだアインブラッドタイプがあった。


 早速それを身に纏う。


 周囲ではピンクのマザーバードから増援のパワーローダー部隊が参加して体制を立て直していく。


 ピンクのマザーバード本体は敵の浮遊船にミサイルを発射。

 敵浮遊船は後退しながらそれを光の弾で迎撃しようとするが何発か着弾した。


『お届け物がどうにか間に合いましたね』


 と、ヴァネッサから通信が入る。

 相変わらず特殊部隊の兵士とか諜報員と言うよりかは営業が得意なキャリアウーマンみたいな雰囲気の女性である。


「タイミングがいいな。もしかして見計らってた?」


『とんでもありません。大急ぎで急ピッチでした』


「まあそう言う事にしておくか」

 

 俺はアインブラッド・ガンブラストを起動させる。

 

 グリーンの本体

 緑色と銀色の大小重ね二本角。

 黄色い瞳。

 キャノン砲にミサイルポッドを内蔵した大型のブースターユニット。

 左腕のアームガン、両足側面の二連装銃。

 専用のアサルトライフルに後ろ腰にナイフ。

 

 フォボスとの最終決戦時の武装だ。


 キョウスケやリオ、パンサーにルーキー達もフォボスとの最終決戦時のパワーローダーを身に纏う。



 Side フィア・バハムス


 緋田さん達が新しいパワーローダーを身に纏った。

 今迄も凄かったが――緋田さん達はまるで枷が取れたかのように次々と帝国軍のマジックメイルを撃墜している。

 

 その勢いが止まらない。


 流石の皇帝も事態の変化に気づいたのか『今日はここまでのようだ』と軍を引き下げた。


 助かったと同時に取り逃がしたことを残念に思う。


 だがウジウジと悩んではいられない。


 皇太子としての身分を明かしたのだ。


 これから大変なことになるだろう。


 そう思うとなんだか別の意味で大変な気持ちになってきた。

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