第十七話「人類の天敵と人類の希望」
Side 緋田 キンジ
まず石崎大尉にこの世界の基本的な情報から教えられた。
この世界は西暦2048年であること。
人類の天敵であるゼレーナとは数十年規模で戦い続けていること。
世界中にゼレーナの拠点が存在すること。
そしてこれまでの戦いで人類の半数がゼレーナの犠牲になったこと。
ある意味ではこの世界も世紀末だかディストピア状態だ。
「想像以上に酷い状況だな」
キョウスケの呟きに「ああ――」と、耳を傾けた。
そして人類の天敵、ゼレーナに有効打になりえるのがAliceと呼ばれる精神エネルギーを操る少女、女性だそうだ。(これに関しては思うところがあったが、もう背に腹は代えられない状況だと思われるのであえて言及はしなかった)
小型の雑魚的は通常部隊でも倒せるそうだが、大型になるとAliceでないと甚大な被害が出るらしい。
それがこの世界での常識だそうだ。
次にAliceだが精神エネルギーをネイキッド型パワーローダーに身に纏わせるだけでなく、スキルと呼ばれる様々な特殊能力を持つらしい。
また一番大きいのはその精神的エネルギーを纏った攻撃がゼレーナに対してとても有効なのだとか。
「さっきの戦闘で石崎大尉が驚いたのは単純に火力で押し切ったからか」
それで俺は合点がいった。
「他にもゼレーナの特性についてだが――」
続けて石崎大尉はゼレーナの特性について語った。
と言ってもあいつら外宇宙から飛来してきたらしく、太陽系だけで既に人類を何度も滅ぼせるだけの物量はあるのではないかと言われている。
他にもコピー能力や学習能力もあり、先の戦いで戦ったゼレーナの姿は他の文明の兵器に擬態した姿ではないかと言われているそうだ。
「想像以上にヤバい状況だな。あの世界にも拠点が出来てると考えた方がいいんじゃないか?」
「そうだな――」
あのファンタジー世界にゼレーナの拠点が出来ているのは覚悟した方がいいかもしれない。
石崎大尉の説明が終わり、次に佐伯 麗子が先頭に立って自分達の世界の事について語った。
(なんか随分昔の話のように感じられるな)
佐伯 麗子が語る言葉について俺はそんな印象を持った。
よくもまあ税金泥棒自衛官からここまで出世したもんだと思う。
それはそうと、先程からエリオット君は顔を青くしながら話を聞いているが大丈夫だろうか……
石崎大尉と副官の朝倉中尉は――困惑している。
(このリアクションは当然だよな――)
ある日、駐屯地に修羅な世界の世紀末世界のゲートが現れて交流する羽目になって。
そして今度は駐屯地もろとも内乱中の異世界に転移したりして。
次は新たな異世界と来た。
頭の悪い創作者が考えたような状況だ。
(まあ説明は終わりだ。細かい交渉とかは上の方にぶん投げましょう)
責任放棄ともとれる考え方だが――言っちゃ悪いが自分は、例え世界を救ったとしても一自衛官である。
ここでどうこう判断するのは一自衛官としての範疇を越えている。
例え軽い口約束だとしても上の交渉材料に使われでもしたら危険だ。
組織に属する人間の痛いところである。
「なあ、キンジ。さっきからお嬢さん方がメッチャこっちを見てるんだけど」
ふとキョウスケが指を指してきた。
アレが恐らくAlice能力者達なのだろう。
部屋の外からジーと此方を見つめてくる。
「俺に言われてもなぁ……まあ無視が妥当じゃないのか?」
「だな――」
少し女子高に迷い込んだ男子生徒の気分が分かった気がする。
ともかくお互いに必要な事を伝えたのでこの場を後にした。
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