第十六話「寄り道の異世界」

 Side 緋田 キンジ


『どうにか倒したが――アレで全部とは思えないな』


 キョウスケの言いたい気持ちはとても分かる。


『だが今は石崎大尉達と接触してあの敵の情報を集めるのが優先だ』


『まさか俺達の世界にも攻めてくると?』


『薄々その可能性は考えてるんじゃないのか? そもそも俺達がこうしてここにいるのは、上の得点稼ぎのためもあるけど、バハムス帝国が俺達の世界に攻めてくる可能性とかもあるからだろ?』


『上の連中、今回の一件知ったらこの世界との関りを断とうとするんじゃないか?』


『自分達の世界の、地球の何処かに別世界の宇宙からの侵略者が出現するゲートが現れた――なんて事になったらそれこそ責任問題になるだろう――』


 言ってて自分でも頭がおかしくなりそうな説明だ。

 なんだこの地獄のような状況。

 世紀末世界の時より酷くなってないか?


『その時は俺達、自衛隊に責任をおっ被せて知らん顔をするだけだろ、あいつら』


 キョウスケの意見に俺は『あー確かにありえそうだな』と納得した。


 政治家だの役人だの言う連中は、国民が毎年3万人以上自殺して死のうが、国民の命よりも今日の飯と酒、一か月後の給料、半年後の地位が重要なのだ。


 フォボスで世界が滅びかけたが、喉元通り過ぎれば何とやらと言う奴である。


『何か急に投げ出したくなってきたけど、石崎大尉と話をして、あの深夜アニメに出てきそうな人類の天敵についての情報を集めよう』


『ああそうだな。まだ世紀末世界に引き籠ってた方がマシだったかもしんねえ』


 キョウスケの意見に俺は『同感だ』と返した。


 

 並行世界の神奈川県、横須賀基地。

 

 元の世界では東京湾に接するように米軍基地やら海上自衛隊の基地やらが密集している場所だ。

 離れた場所には航空自衛隊の基地もある。

 

 運が良かったのか悪かったのか日本軍の横須賀基地にゲートが開かれたらしい。


 少し離れて場違いな大きな学園もある。

 

 軍服を身に纏った大人達に交じってとても場違いなのがいた。


 なん昔か前の深夜アニメに出てきそうな、人体剥き出しでフレームを身に纏い、四肢にメカの手足をくっつけたメカ少女達がいた。

 ご丁寧に猫耳みたいなヘッドギアやら煽情的で目に毒な競泳水着型のSFチックなボディスーツを身に纏っている。


『石崎大尉? アレは?』


『アレがアリス――対ゼレーナ戦のための人類の切り札です』


『アリス――そう言えばゼレーナと戦っていた時も言ってましたけど、何なんですかアリスって?』


『特殊なパワーローダーを身に纏った超能力を持つ少女達です。それを含めて話しましょう』


『分かりました』


 一応説明してくれるらしい。

 その見返りで俺達の世界についても説明する事になっている。

 担当は佐伯 麗子。

 遅れて狭間駐屯地の基地司令が詰めた話をする段取りである。


 俺やキョウスケ達も世紀末世界には最初から最後まで、当事者として出席しなければならない。


『どうしたリオ?』


 リオがゲイルを身に纏った状態で不思議そうにキョロキョロとしていた。

 パンサーも同じだ。


『いや、なんかまた別世界だと聞いてたけどキンジ達の世界とそう変わらない感じなんだなと思って――あの変なパワーローダーはなんだろ?』


 まあこれが普通の反応だと思いつつ俺は


『さっき戦った連中と戦うための切り札らしい』


 と、リオに説明した。


『アレが?』


『その辺も含めて話をしてくれるそうだ』


『ふーん』

 

 一先ず納得してくれたようだ。

 

 そして格納庫にパワーローダーを預け、基地内のブリーフィングルームで説明を受ける事になった。

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