第十話「出発準備」
Side 緋田 キンジ
セシリーからこのバハムス帝国で起きているクーデターについて話を聞くことにした。
まあ、ある程度の内容は事前に聞いているが念のためと言う奴だ。
「確かバハムス帝国って覇権主義国家で――侵略戦争しかけてたんだよな?」
俺はこの世界での当たり前の事を聞く。
「はい。その野心はとどまる事を知らず、もはや戦争のために戦争をしている状態になったのです」
セシリーは申し訳なさそうな顔をした。
「そしてクーデターを引き起こしたと?」
確認のために話を続けた。
「はい。帝国内でもやり方に疑問視する声は多く、こうして立ち上がったのですが……まさかこんな混沌極まる事態になるとは」
「そもそもどうしてこんな事に?」
「召喚魔法を使ったと思われますが――幾ら大規模な召喚魔法を使ったとしてもここまでの事態になるとは考えられません。何か別の要因で暴走したとしか考えられません」
と、セシリーは言う。
「召喚魔法で異世界から勇者でも呼び出そうとしたのか?」
今度はキョウスケが尋ねた。
「勇者を呼び出すつもりだったかどうかは分かりませんが、強力な素質を持った人間をマジックメイルに乗せて異世界人による軍団を作り上げようとしたのではないか? と思っています」
「なろうのテンプレ展開だな」
俺はそう愚痴った。
セシリーは「なろうのテンプレ?」と首を傾げて食いついて来たが俺は「すまん続けてくれ」と話を促した。
「実際に相当数の特注のマジックメイルを準備していました。強力なマジックメイルの力を引き出すにはそれ相応の適正地が必要になりますから」
「よく分かったな」
感心するように俺は言う。
「相応のマジックメイルを準備するには相応の資金が必要となります。完全に隠し通すのは困難です」
「一理あるな」
マジックメイルの製造費用は分からないがかなりの額が必要になるらしい。
それを部隊単位でとなると、セシリーが言うように隠し通すのは困難なのだろう。
「だけどその目論見は失敗したわけだが、当初の目論見はどうなったんだ?」
との事だ。
これで、なろうのWEB小説みたいに自分達の世界の学生とかが何十人も召喚されていたら笑えない。
説得に応じればともかく、最悪銃を向けなければならなくなる。
「この様な状況になってしまいましたが、本来の目的その物は達成出来ていると思います――ただ、未確認の謎の武装勢力も同時に、それも各方面で大量に出現して我々も混乱していて事態の全容を把握出来て来ていないのが現状です」
キョウスケは「確かにな――」と同意した。
あの世紀末世界の悪党どもまでこの世界で暴れまわっているのだ。
それに関しては何だかとても申し訳ない気持ちになった。
「それについて話があるんだが――」
俺はセシリーさんに敵の事について、世紀末世界の悪党の事について軽く教えておいた。
驚きはしたがスグに納得したようだ。
「正直俺達は末端の隊員だ。何処まで介入していいか分からないが一先ずはもう一つのゲートの方に向かってみる」
出現したと言うゲートが気掛かりだ。
俺達は純白の大型飛行機、アルバトロスに乗り込んでゲートの方に向かう事にした。
「此方から連絡要員を寄こしますがよろしいでしょうか?」
「連絡要員?」
「はい」
との事だった。
俺は「上の方にも一応話を通してくれ」と佐伯 麗子に中継して話を通すことにした。
その間に出発の準備を進めておく。
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