第四話「プルミア村」

 Side 緋田 キンジ


 メンバーを半分に分けてこの村――プルミア村と言うらしい――に入る。

 リオがどうしても付いて行きたがったのでリオも連れていく。

 

 もう半分はキョウスケに任せる形になって「リオとのデートを楽しんで来い」と言われた。

 中学生かお前は。


(それにデートって言う雰囲気でもないよな)


 プルミア村はかなりピリピリしている。

 村の中に入ると木造住宅が並んでおり、そこに武装した民兵が徘徊していた。

 俺達は民兵と土色のマジックメイルに囲まれる形で村長の屋敷に案内された。 

 

「君達だなこの土地に召喚されたと言う異世界人と言うのは」


「そうです」


 厳密には違うのだが、ややこしくなるので話に合わせる事にした。


「この村には何をしに?」


「この国で起きている事を知りたいです」 


「内乱のことか?」


「出来れば詳しい話などを――それと自分達以外にも異世界人が呼び出されたと言う話も気になります」


「それだけか?」


「はい。我々も突然この世界に呼び出されて戦いに巻き込まれてしまって――この国の子供でも分かるような基本的な事すらも分からない危うい状態なのです」


「――本音を言えば長居をして欲しくない。話を聞いたら早々に立ち去って欲しい」


 そう言うとリオが「ちょっと――それは――」と言おうとしたが俺は手を制して「お願いします」と言った。


「それでいいのキンジ?」


「ああ。かなり危険な状況みたいだしな。話をしてくれるだけでもありがたいと思わないとな」


 リオに言って村長に「お話をお願いします」と言った。



「バハムス帝国軍に反乱軍、反乱軍を率いるフィア皇子――そして謎の勢力達か――」


「バハムス帝国ってどうしてそんなに侵略をしてるのかしら」


 リオの疑問も最もだ。

 

 話を整理しよう。


 バハムス帝国はいわゆる悪の侵略国家で様々な方面に戦争を嗾けているらしい。


 フィア皇子はその現状を憂いて反乱を引き起こしたのだそうだ――この一派が反乱軍と呼ばれている。


 そして自分達を含めた謎の勢力が帝国内に現れ始めて最近大問題になっているらしい。


 軍隊が壊滅したとか、見た事もない魔獣が出たとか、町が廃墟になったとからしい。


(どうするべきか……)


 今更感があるが、元々自衛隊は自国の領土さえ満足に守れるかどうかさえ怪しい軍隊ではない武装組織である。


 エグイ言い方をすればバハムス帝国で幾ら人が死のうが日本に影響がなければ知ったこっちゃないのだ。


 だがそうも言ってられない。


 また駐屯地もろとも自国領内に異世界転移されるような、同じような事件が起こされたらたまったものではないからだ。


 もしもこれが外国の軍事基地とかだったら日本政府や自衛隊の責任問題にも発展してしまうのである。


 だからこうして異世界で再び火中の栗を拾うような活動する事になってるのだ。


「どうするキンジ?」


「……悩んでも答えは出ないし。まだ物資に余裕があるから先に進もう」


 この世界ではレーダーや無線機の類が制限されている。

 何時でも何処でも補給物資や増援を呼べるとは限らない。

 なのでせめて活動ための物資は多めに持っていく事にしていた。


 俺は「お世話になりました」とだけ頭を下げて先に進もうとした。


 村が騒がしくなり、鐘を叩く音が響いた。


「敵襲!! 敵襲!!」


 と、しきりに村人が叫んでいる。

 俺達も急いで戦闘準備に入る事にした。 

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