第三話「道中にて」

 Side 緋田 キンジ


 何時までも基地に引き籠っているワケにもいかないので、情報を集めるために近くの村に行く事にする。


 それに第7偵察隊の隊長、宮野一尉が言っていたように自分達、自衛隊以外にも転移者の存在が確認されているらしい。


 俺はその事が気掛かりだった。


 他にもこの世界はレーダーが効きづらく、絶えず偵察機を飛ばしておかないといけないようだ。

 今も上空を偵察中のヘリや飛行機が飛んでいる。

 哨戒中のパワーローダー隊の姿もあって偵察仕様のドランが最低でも一機随伴している。


 セントリー、アサルト、浮遊型のロボットなどはこの世界の性質だと諸刃の剣に、一般市民に危害を加えかねないので使用は控えているらしい。

 

『まあ任務だからって言うのもあるが、本当のところはどうなんだ?』


『どうって?』


 荒廃していた世界で使用していたトレーラーを護衛する形で俺とキョウスケはパワーローダーを身に纏い、周囲を警戒しながら前進していた。


『自衛隊とかの任務抜きでだよ。まあ不謹慎だけど新たな異世界にワクワクしてる部分もあるっちゃあるけどな』


『遠足気分だな。まあ自分も似たようなもんだけど――それにリオも嬉しがってる』


『パメラもだよ。日本にいた時はあまり大自然って奴を見せてやれなかったからな』

 

 あの荒廃した世界では大自然ってのは宝石や金銀財宝並みの価値がある。

 リオやパンサー達はパワーローダー越しでも分かるぐらいにこの世界の自然に興味深々だったようだ。


『それだけでも来た価値があるってもんだな。それにまだ魔法があるって分からないが正統派っぽい異世界だもんな』


『確かにワクワクするよな。まあ――現代火器で無双ってのは出来ないみたいだが。そう言うの考えたの誰が最初なんだ?』


 ふと俺はそんな事を疑問に思った。


『なんとかの使い魔とかが最初らしい』


 うろ覚えながらそのタイトルを出されて俺は『ああ、あのタイトルか……』となった。


 銀座に異世界のゲートが開かれた奴と一緒に参考図書として読んだ経験がある。


 どちらかと言うと、『どうして現代兵器が異世界で無双できる認識になったか』と言う理由でだが。


『他にも――宮野一尉の言葉が気になる』


『狭間駐屯地以外にも飛ばされてるって話か?』


『正直嫌な予感がしてな』


『……フォボスやノアの事件でちょいと過敏になってるんじゃないのか?』


『それもあるかもな』


 フォボスやノアは呪詛めいた最後の言葉を残していた。

 既にくたばって今回の一件で何かしらの関りがあるとも思えないが。

 だが時折妙に気になる時があるのだ。


『俺もそんな時もあるが――まあお互い無理せずにな』


『ああ』


 正直この事件もどうなるのか――放置してたらしたらで前回並みかそれ以上の大災厄になりそうな気もするがまだそうなるとは決まったワケではない。


 自衛隊は神でも預言者でもないのだ。

 

 今は無理せずに頑張る事を考えればいいと思った。


『そろそろ村だぜ』


 キョウスケに言われて気づく。

 村の周囲は木々や柵で覆われ、自然豊かなせいか観光地にも見える。


『ああ。歓迎してくれるといいんだが……』


 と、冗談めかしに言うが。


『挨拶代わりに魔法をぶっ放されるのは勘弁な』


 続けてキョウスケが言う。

 ここは内乱中の国である。

 門の前には土色の鎧――エネルギー反応からしてマジックメイルに弓や剣、槍を持った見張りがいた。


 マジックメイルはともかく弓や剣、槍で見張りをしている人間を見てこの世界の世界観を丁寧に解説してくれているようであった。

  

『と、止まれ! この村になんのようだ!』


『こっちもワケの分からん世界に放り込まれてな。情報収集のためにこの村へ立ち寄っただけだ』


『……そちらのマジックメイル(*キンジたちのパワーローダーのこと)は置いていけ。全員は中に入れることはできない。監視もつけさせてもらう』


 との事だった。

 俺はその条件で『分かったよ』と返事をした。


 かなり警戒心が高いが内乱中の国の村はこんなもんかと思った。

 

 こうして俺は村の中に入る事にした。

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