第二話「マジックメイルVS自衛隊」

 Side 緋田 キンジ 一尉


 色々と聞きたい事、確認したい事は沢山あるが今はこれを乗り越えてか

らだ。


 敵の数は300程。

 全員がマジックメイルによる部隊だ。


 万が一自分達が敗北して突破された時は戦車や戦闘機を容易に破壊できるパワーローダーと互角にやり合える異世界産パワードスーツがゲートの向こう側に乗り込んでくる。


 そうなった先は考えるまでもないだろう。


『こっちは12・7mm以上の火器を使ってんだぞ!? あいつらどんな装甲や魔法使ってやがる!!』


 パワーローダー、バレル(通称ガンキャノ〇)で必死に応戦しながらキョウスケが叫ぶ。

 自分達がよく知る異世界ものなら自衛官の普通科が使うアサルトライフルでばたばた倒れていくのに相手はパワーローダーが使うアサルトライフルでも倒すには至らなかった。


『文字通りの魔法の技術なんだろうさ!!』


 と、俺はパワーローダー、フェンサーで応戦しながら返しておいた。

 なんかそう言う世界観っぽいしな。


 敵は想像以上に強いが、倒せないと言うワケではない。

 リオもゲイル(フライト仕様)で空中戦をこなしながら戦い、パンサーもジェネの手持ち式レールキャノンとビームカービンで的確に敵を減らしていく。

 

 女性WACコンビのブロッサム(通常仕様)も連係プレイで対応し、ルーキーや他の隊員のドラン(通常仕様)も皆の活躍に食らいつくようにして敵を減らしていく。


 さらにこの基地に配備された戦力に第7偵察隊の宮野一尉率いるパワーローダー隊がいる。


 砲台も無人機もフル稼働で敵を減らしていく。


 特にレールガンタンク(先行配備型)やレーザーガトリング対空迎撃車両(先行配備型)のコンビが凄く活躍している。


 レールガンタンクが敵の部隊を纏めて吹き飛ばし、レーザーガトリング対空迎撃車両が近寄る空中の敵を片っ端から消し炭に変えていく。


 搭乗員も世紀末世界でスキルを磨いた凄腕である。

  

 他にも特科部隊(砲兵部隊)がドローンやパワーローダー隊の観測データーを基に近距離砲撃を実行。

 砲弾も世紀末世界の技術で強化された特注の奴だ。

 隊員曰く、「要塞だって吹っ飛ばしてやるだ」そうだ。


『敵の隊列が乱れて来たぞ!!』


 キョウスケが言う様に此方の猛攻で敵の隊列が乱れ始めて来た。

 そこを後方で控えていたレールガンによる狙撃部隊が襲い掛かる。

 味方ながら容赦がない。 


 中には対物狙撃銃でマジックメイルをヘッドショットして相手の首の骨をへし折る生身の隊員もいた。

 

 

 Side 敵の隊長機 デスモンド


『クソ!! クソ!? 異世界の軍勢がこれ程強力だとは――』


 想定外の強さだ。

 何度か攻め続けているが基地の辿り着く前に敵のマジックメイルに敗北している。

   

 更には見た事もない鋼鉄の塊に大きな大砲や筒をつけた兵器(*レールガンタンク、レーザーガトリング対空迎撃車両)などが現れて纏めてマジックメイルを吹き飛ばしてしまう。


 異世界の技術を収集し、逆族皇子を討伐するための任務がどうしてこんな事に。


『敵の援軍!! 反乱軍です!!』


 味方の報告が魔導通信で耳に入る。

 兵達が動揺する。

 

(今の劣勢状態で反乱軍は加わったら――)


『デスモンド様!? ここは――』


『分かっている!! 撤退しろ!!』


 副官に言われて私は撤退を決意した。

 この屈辱は忘れんぞ異世界軍。


☆  

 

 Side 緋田 キンジ 一尉

 

 取り合えず敵を撃退し、戦闘態勢のまま宮野一尉と話をする。

 パメラやキョウスケがパワーローダーの整備をしているが俺と宮野一尉は重要な話があるので軽く点検だけで済ませて後回しにしてもらった。


『で? 俺達何処まで話したっけ?』

 

 復習も兼ねて宮野一尉にそう尋ねると『たいして説明していないよ――』と返す。

 続けて彼はこう言った。


『今は帝国軍と反乱軍との戦いに巻き込まれて反乱軍との戦争に加担してしまっている状態だ』


『第3次世界大戦(*第一部ラストあたりの出来事)が終わった後だってのに――大丈夫か?』


『日本は前例がない事態にはとことん弱いけど、一度前例が出来てしまえば対処できる国だからね』


『それはごもっともだな……』


 つまり大丈夫ってことらしい。

 日本も変わったもんだ。


『その帝国軍と反乱軍の戦いはどういう理由だ?』


『悪政を働く帝国に皇子様自らが立ち上がって反乱を引き起こしたと言ってるね』


『本当かそれ?』


『本当かどうか分からないから自衛のための戦闘に留めている。本当は政治家や外務省の出番なんだけど――以前に(*)大失態しちゃったせいなのか、僕達に丸投げ状態らしいよ』(*;第一部・第二十三話「思想の対価」参照)


『そうか……』 

 

 第三次大戦後のごたごたもあるがまだ外務省も政治家も立ち直れていないのか。

 もしくは手柄泥棒するタイミングでも見計らっているのか。

 俺としては後者だと思う。

 

『で? 今回の一件――駐屯地の転移は反乱軍か帝国軍か、どっちが関わってると思う?』

 

 俺はその事を尋ねた。


『正直言うと分からない。どっちもやる理由が十分あるからね』


 帝国軍も反乱軍も動機は揃っている。

 だがどうして自衛隊の駐屯地もろとも?


『それと聞き流せない情報が一つある』


『なんだ?』


 宮野一尉が聞き流せない情報に俺は不安を覚えた。


『どうやらこの異世界に飛ばされたのは境界駐屯地だけじゃないみたいなんだ』


 それを聞いて俺はどんな表情をしただろうか。

 驚いたと言うよりも俺は耳を疑ったと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る