第一話「第2の異世界へ」

 Side 緋田 キンジ 一尉


 俺達はあの荒廃した世界の旅を続けていた。


 プレラーティ博士はバックアップに回り、ヴァネッサにパワーローダーのオーバーホールを頼んで別行動。


 第13偵察隊はリオやパメラ、パンサー達と一緒に今日も行動する。



 とある町にて――   

 グレイヴフィールドから少し離れたとある町にて。

 俺はパワーローダー、フェンサーを身に纏いながらオーガの群れと激しく銃撃戦を行っていた。


 オーガは狂暴でダークファンタジーの世界から抜け出たような生物であり、バカ力でミニガンを振り回す程のパワーを持つ。

 タフで並大抵の銃火器が利かない。


 そんな生物相手にパワーローダーの大口径火器を叩き込む。


 オーガは弱点として知能指数が見掛け通りに低いので十分な火力を保持していれば簡単な罠にも引っかかりやすい。

 

 面白いように策が嵌まり、その数を減らしていく。


「いや~なんと言えばいいのやら」


『それが自分達、自衛隊の仕事ですから』

 

 町の住民に感謝され、そう返すが後ろでキョウスケは笑いを堪えている。

 分かってるよ。

 自分には似合わないって。


『でもキンジ。実際この小さな村でオーガを救うってとんでもない事だよ――他の人のために報酬をある程度要求しておいた方がいい』


『そうだな』


 と、リオからアドバイスを受ける。

 本来、自衛官が一般市民に助けた報酬を要求するのは言語道断事だが、この世界では日本とは根本的に事情が違う。


 自衛隊たちはタダで助けてくれたのに君達は報酬を要求するとは何事だと言う話になる。 

 最悪この村は誰にも助けて貰えなくなるなるからだ。


「いつも通りこう言うのは私の出番ね」


 と、パメラが出る。

 パメラはメカニックだけでなく、こう言う商談を一手に引き受けて来た経緯を持つのだ。


 そうして村長と報酬のアレコレで交渉して、村で一泊して祝勝会を開くこととなった。


 自衛隊に起きた大事件。


 自衛隊の駐屯地が一つ異世界にもろとも転移したと言う話を聞いたのはこの後だった。



 超特急でグレイヴフィールドの自衛隊基地に戻り、そこからプレラーティ博士の下を経由して異世界に転移した狭間駐屯地へと向かった。


 本当に強行軍である。


 念のため、アインブラッドタイプを含めた以前使用していたパワーローダーが必要になると感じたので、ヴァネッサにも連絡を入れておいた。


「基地の外――凄い緑豊かだね。心なしか空気も根本的に違うみたい」


 と、狭間基地に辿り着いたリオが言った。


「来たようだね」


「宮野一尉――」


 ここで宮野一尉が現れた。

 第7偵察隊の隊長で先行してこの世界に来て一戦おっぱじめていたらしい。


「ある程度移動中にどう言う世界かは聞いている。パワードスーツがあるファンタジー世界なんだってな」


「そう言う事になるね」


 自衛隊がファンタジー世界に行くのは創作物でよく聞く話だがまさかのパワードスーツ物である。


 まだパワードスーツで巨大ロボットとやり合うよりかはマシかと思う。


「この世界もこの世界で物騒みたいだな」  


「まあね」


 俺は周りを見渡しながら言う。

 イージスアショアを中心にレールガン砲台やらレールガンタンク、レーザータレット。

 アサルト型、セントリー型、ドローン型のロボットまで導入している。

 それに生物が焼け焦げたような独特な死臭の濃さ。


 油断は禁物らしい。

 現代兵器で異世界無双などとは考えない方がよさそうだ。


「とっ、早速お出ましか!?」


 サイレンが鳴り響いた。

 急いでパワーローダーを装着し、上の指示に従い迎撃態勢をとる。


 敵は――ファンタジー物に出てきそうな重騎士たち――報告にあったマジックメイル達だった。


 それが地上と空中から来ている。

 

 パワーローダーの攻撃を盾で防ぎ、中にはバリアのような物を張って火球や光線を放ってきたりしてくる。


 応戦して射撃するが違和感を感じる。


『ッ! 電波障害云々の話は本当らしいな!』


 この世界ではどう言うワケかレーダーやセンサーに影響が出るらしい。

 パワーローダーのロックオン機能やレーダー機能もどこまでアテになるか分からない。


 まるで地球の現代文明の天敵のような世界だがやるしかない。 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る