第九十話「突入開始」

 Side 五藤 春夫 陸将


 私自らが以前の戦いで鹵獲した空中戦艦に乗り込み、強行軍でロストエリアにまで辿り着いた。


 傍にはリビルドシティから同行してきた空中戦艦や大型飛行船マザーバード、そしてヴァネッサさんの世界の空中戦艦などがついて来てくれていた。


 基地は他の人間に任せてある。


 ロストエリア――砂漠の都市に荒廃した町が立ち並び、そこには無人兵器が大量に闊歩していて既に話を聞きつけて駆け付けた人間たちが戦闘を開始している。


 レーダーは敵の反応で埋め尽くされている。

 しかもまだまだ増え続けている。


 まさか自衛官になって世界の命運を賭けた最後の戦いに挑むことになるとは――世の中分からないものだ。



 Side ロストエリアに展開したとある陸上自衛隊の隊員


 ロストエリアまで強行軍で駆けつけて来て一足先に戦闘をおっぱじめたが散々だった。


 正直空中戦艦が早く駆け付けてくれてありがたかった。

 次々と飛行型のパワーローダーや飛行機械。

 更には空自の戦闘機や見た事もない戦闘機が出動する。

 

 敵も負けじと見た事もない兵器をぶつけてくる。

 全てが生体反応無しの無人機。

 機種も様々だ。


 倒しても倒してもキリがない。

 100体倒せば追加でさらに1000体投入してくるような状況だ。

 遠くには陸上戦艦や空中戦艦の姿すらある。


 こちらも戦力は十分だが 正直生き残れるかどうか分からない状況である。    



 Side 謎の女X


 また予想を裏切る異常事態が発生した


 突如フォボスの軍勢が世界中から姿を消して――恐らく撤退を開始したのである。

 その事に私は喜びよりも驚愕を覚えた。

 

(まさか、此方の作戦が読まれた!?)


 世界中に展開しておきながら戦力を引き上げるとは。

 

 何らかの異常が起きたと考えていいだろう。


 向こうの世界の戦いが優勢なのかもしれない。

 だが世界中に展開した増援部隊が合流すれば戦況はどうなるか分からない。


 ただ私は無事を祈ることしかできなかった。

   


 Side 緋田 キンジ


 俺達は突入を開始した。

 

 俺たち第13偵察隊。


 第7偵察隊。


 第4小隊。


 リビルドアーミー、リビルドシティからの志願兵。


 ヴァネッサの世界の人間の兵士。


 更には投入できるだけの戦車や装甲車などの機甲戦力全てが投入された。


 はるか後方でも前方でも激しい戦闘が繰り広げられている。

 

『来たね』


『ノアか!!』


 ノアの天使のようなパワーローダーとバルキリー型の無人パワーローダー。

 そしてフォボスの三つ目の幽霊のような動きをするパロ―ローダーや全高5mのゴリラのようなゴテゴテと武装を搭載した機動兵器までいる。


 既に先遣隊として投入された無人兵器部隊と激しい戦闘を繰り広げているがノア本人には傷ついた様子はない。


 後ろには巨大な黒いダムのような施設が見える。


『フォボスはどこだ!?』


 俺はノアに叫んだ。


『フォボスはもう目の前にいるよ』

 

 そう返してきて俺は『どう言う意味だ!?』と聞き返したその時。

 

『私こそがフォボス。私こそが人類を管理する存在である』


 後ろの真っ黒い巨大なダムのような施設が空中に浮上を開始する。

 どんどん空に上がり、巨大な漆黒の円盤が姿を現した。

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