第九十一話「最終決戦」
Side 緋田 キンジ
突如として黒い巨大円盤を見上げる。
なぜか敵の攻撃がやんでいた。
味方も攻撃の手を止める。
後方で戦っている自衛官も同じような感じだろう。
『我が名はフォボス――この世界を支配する者』
おどろおどろしい。
まるで妖怪のような男の声だ。
『大人しく自分の世界に引っ込んでればいいものを、他の世界にまで手を出す理由はなんだ?』
俺は愚痴交じりにそう言った。
『それが使命だからだ』
『人類を支配するためのか?』
皮肉に込めて俺は言った。
『人類を救うためだ』
『やってる事と言ってることが矛盾してるじゃねえか』
何が人を救うだと思った。
フォボスのやってる事は昭和のアニメの悪党と同じだ。
それで何が人を救うだ。
やってる事はただの大量殺人ではないか。
『この世界の人類は人類同士で争い滅びた。私はこの世界を救うために様々なプランを検討した』
その様々なプランの一つのウチがリビルドシティ、リビルドアーミー、そしてノアだったのだろう。
『だが計算の結果、人類は争いを止められず、過ちを繰り返す生物だと理解した。そこで私は考えた――反抗する気も起きない程の圧倒的な力による支配を』
『なんつー極端な』
キョウスケの言う通りなんつー極端な理論だと思った。
インテリぶってるラスボスを演じているが突然ゴリラよりも酷い極端な思考回路になっている。
『そのために私は力を求めた。同時に様々なプランを試した』
『私の世界への進行もその一環ですか?』
ヴァネッサが言った。
『そうだ。支配の試行錯誤、様々な技術、資源の収集と言う点では役に立った』
『人様の世界に攻め込だのがそれだけの理由だったとはな』
俺は呆れてそう口に出してしまう。
『もう一つの世界が開いたのは本当に誤算だった。同時に脅威に成長したのは想定外だった』
『俺達の世界の事か』
『私の支配を揺るがしかねない世界、想定外の世界、特に際立った技術を持っているワケでもない平凡な世界。いずれ勝手に世界大戦を起こして自滅するであろう世界がだ』
無茶苦茶な言い草だ。
攻め込んでおいて失礼でもある。
だがフォボスにとってそんな世界が、俺達の世界が脅威に感じたらしい。
『狭山 ヒロトもそうだ――踏み込んだ世界を支配しようなどと考えず、手を差し伸べ、人々に変革を与えていく存在である――そうした存在を見てきて私は考えた』
『俺達を仲間に引き入れると?』
俺は言った。
『そうだ。私の手を取れ。共に世界の秩序を担う存在になろう』
『その秩序を作り上げるために何人殺すつもりだ?』
皆の気持ちを代弁するつもりで尋ねた。
『秩序を作り上げるためには犠牲は必要だ。それは歴史が証明している』
『は、ラスボスの決まり文句をペラペラと喋りやがって!!』
日本のサブカル文化で聞き飽きた常套句だ。
『私を愚かと言うか?』
『ああ、愚かだ!! この世界ではどうだか知らんが正直漫画やアニメだので聞き飽きたような御託を並べやがって!! 今時流行らないんだよそう言うの!!』
続けて俺は言う。
『人類は愚か!? だから支配しなければならない!? 犠牲は必要!? そして今度は俺達に仲間になれ!? 詐欺師でももっとマシな事を言うだろうよ!! 越権行為だろうがなんだろうが言ってやる!! 俺達の答えはNOだ!!』
『ならば滅びよ――』
そして攻撃が再開されようとして――
『お前がな』
プレラーティ博士の声とともに空中に戦艦が数隻ワープアウトしてくる。
同時に猛烈な艦砲射撃が黒い巨大円盤に直撃。
周囲に展開していた敵部隊も巻き添えを食う。
『まさかフォボスの奴、君達を勧誘するとは此方としても想定外だったがありがったかったよ。だがこうしてワープアウトするための最後の調整するまでの時間が稼げたよ』
と、プレラーティが言う。
次々と戦艦からパワーローダーや戦闘機が発進。
戦車なども降下し、戦闘に突入。
同時に戦闘も再開された。
フォボスの巨大な黒い円盤からは大きな黒煙が出来ている。
『戦艦をワープアウトさせてくるとは――まさかこう言う手段を取ってくるとはね』
ノアはそう言いながら背中のバインダーをパージしてオールレンジ攻撃を仕掛けてくる。
俺は空中に飛行してかわしながら反撃する。
『お前、もしかしてこの流れ予測してたんじゃないのか?』
『さてね』
などとノアは煙に巻く。
フォボスは周辺に光線を撒き散らしながら反撃するが至近距離からのワープアウトしてきた空中戦艦の一斉砲撃を受けて徐々に沈黙を受けている。
にも関わらずノアは余裕を崩さない。
ハッタリなのか。
それともまだ隠し玉があるのか。
俺は隠し玉があると思った。
『少々ここは騒がしい。一旦退くとしよう――』
『逃げるつもりか!?』
そう言ってノアは逃げようとしたが――
『こいつだけは我々が引導を渡す!!』
『君も来ていたのかランシス』
リビルドアーミーのランシスが来ていた。
パワーローダーは青いカラーリングで二本角で二つ目、背中のフライトユニット。
どこかリオのゲイル・リヴァイヴに似たパワーローダーだ。
それがノアに二つのビームサーベルで接近戦を挑んでいる。
ノアは左手をかざし、バリアを張ってそれを防いだ。
『いいだろう。先ずは君から仕留めよう――』
そしてノアも戦闘態勢に入る。
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