第六十三話「その頃の緋田 キンジ」


 Side 緋田 キンジ


 今はフェンサーに身に纏って――アインブラッドは整備中で使えない――応戦中。


 相手はオーガの群れだ。 


 われら自衛隊の基地の防備体制――正確には元・ヴァイパーズの本拠地は先の戦いの影響(*核爆発)もあって最悪と言っていいがそうも言ってられず、基地に立て籠もって応戦中である。


 オーガはタフでパワーローダー並みの重火器で武装して死を恐れず、血気盛んに襲い掛かってくる。

 だから核攻撃とか核自爆はやめてくれ。

 

 心臓に悪い。



 ヴァイパーズがいなくなったせいか入れ替わりにヴァイパーズの残党やら野盗、化け物が連日のように攻めてくる。


 さっきも語ったがこの基地にいる自衛隊の戦闘部隊は先のヴァイパーズとの戦いで疲弊している。


 基地も地下ブロックに立て籠もる感じで防衛体制を敷いている感じだ。


 戦車も半ば固定砲台扱いである。


 幸いなのは入れ替わりの増援部隊や施設のリフォームや増設のための部隊や資材などがどんどん来ている事だろうか。


 新たな商売のタネを感じ取ってか前の自衛隊基地から付いてきた人々の協力もあるのも救いっちゃ救いだ。



 戦闘を終えて夜になる。


 地下ブロックは思いのほか広大である。

 地上部分も陸上戦艦のための整備ドッグまであり、元々は大規模な基地だったであろう事が伺える。


 ここをどうするかは上が考えることだろう。


 なんなら住民を住まわせてもいいかもしれない。


「ねえ、キンジ。いよいよ――その、リビルドアーミーと戦うの?」


 廊下で突っ立っていたら隣にリオがいた。

 

 ヴァイパーズの大将とタイマン挑んだ事を「もっと仲間を頼って欲しい」と苦言を言われたと同時に「助けにいけなくてごめん」と言われて色々と複雑な気持ちになったりもしたが――まあその話は置いておいてリオの質問に答えなければならない。


「以前ならともかくフォボスの件もあるしな――上もフォボスとリビルドアーミー、同時に戦争仕掛けられるような事態は避けたいんじゃないか?」


「そうなんだ――」


「自衛隊は無敵じゃないからな――それに元々この世界にはどうしてゲートが平かられたのか、そう言う調査のために訪れたんだし……まあ今はフォボス討伐のために動いてるけど」


 なにしろフォボスには交渉と言うものがまるで通用しない。

 幽霊を相手にしているような不気味さすら感じられる。

 

「全てが終わったらキンジは帰っちゃうの?」


「それなんだが……責任とって自衛隊やめてこの世界に住むのもありかな~なんて思ってる。まあ想像だにしない苦労はすると思うけどな」


「それってつまり――」


 リオは顔は赤くした。

 俺も照れくさくなって「まあその時はよろしく頼む」と返しておいた。


 その未来を得るためにもこの土地周辺は平和にしておきたいと思った。


「また敵襲か」


 空気を読まずに敵襲警報である。

 俺はすぐに出撃準備に入る。


「私もいく」


 そしてリオもついてくる。

 どこか嬉しそうだ。 


 色んな意味で飽きないな、この世界は。 

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