第六十話「基地攻略戦その3」

 Side 緋田 キンジ


『相手は対物ライフルサイズとは言え、レールガンが通用しない装甲だぞ!? どうするんだ!?』


 空中を飛び回り、時に地を掛け、敵の火力から必死に逃れながらキョウスケの通信に耳を傾ける。


『恐れる事はありません』


 驚いたことに返事をしたのはヴァネッサだった。


『通用するとしたら強力なビーム兵器かレーザー兵器、プラズマ兵器などでしょうが武装までは頑丈に出来ていない筈です。それにこの戦いは私達だけで戦っているワケではありません。落ち着いて回避に徹して態勢を立て直すのがよろしいかと』


 と、ヴァネッサが続けた。

 

 ヴァネッサはキャリアウーマンだか裏方要因みたいな印象があるが、いちおうとある並行世界では特殊部隊の出身だったと聞いている。(*第五十三話「ヴァネッサの正体」参照)


 俺達よりも、下手すればリオ達よりもこう言う局面に場慣れしているだろう。


『13偵察隊の諸君!! 離れろ!!』

 

 そう言われて俺は『敵から離れろ!!』と後退指示を出す。

 基地に突入して一旦後退していた陸上部隊の攻撃準備が整ったのだろう。

 その中にはレールガンタンクの姿もある。

 

『レールガンタンク以外は敵の火器を狙え!! 手を出させるな!!』


『兵隊モドキにチーム戦と言うのを教えてやれ!!』


 パワーローダー部隊や戦闘ヘリ部隊が距離を保ちながら包囲するように全高10mのデカブツを包囲。


 ビーム、レーザー、プラズマ、レールガンなどが雨のように浴びせられる。


 いくら重装甲でもこれだけ高威力の兵器を雨のように浴びせられれば一溜りもない。

 

 地球の軍艦ならとっくの昔にスクラップになっているだろう。


『野郎!? まだ動くのか!?』


『正真正銘の化け物だな!!』


『クソ、まだ攻撃してきやがる!!』


『怯むな!! スクラップになるまで撃ち続けろ!!』


 相手の反撃にも負けず、部隊は必死に攻撃を仕掛ける。

 相手も無傷ではない。動きも鈍ってきていた。

 

 俺はここを勝負時だと感じた。

 

『ダメージは確実に通ってる!! 手っ取り早くミサイル発射口を狙うぞ!!』


『了解、隊長殿!!』


 俺は指示を飛ばし、キョウスケの軽口を聞き流しつつ、第13偵察隊の面々で一斉に――味方の誤射に気をつけながらミサイル発射口を狙う。


『クソ、発射口を――!?』

  

 次々とミサイルコンテナ――10mサイズの機動兵器に合わせたサイズの――部位にあらゆる火器が吸い込まれていき――瞬間、大爆発が起きる。



『みな、生きてるか――』


 俺は地面に着地して呼び掛ける。


 キョウスケが『なんとかな――』、リオが『私も大丈夫――』と、次々に生存報告が入ってきて俺はホッとする。


 見ると10mの左半身が大きく抉れていた

 黒焦げになって小爆発や煙をあげている。


 俺は嫌な予感がした。


『これだけのデカブツだ! 動力もそう相応の筈だ!! 総員撤退だ!!』


『あ、ああ!!』 

 

 そう。


 この世界の兵器の動力は基本核動力である。


 パワーローダーでもかなりの大爆発を起こすレベルだ。


 では10mサイズの化け物の動力が爆発を起こすとどうなるか?


 俺は慌てて退避指示を飛ばした。


『逃げろ逃げろ!!』


『退避退避!!』


『ここまで来て冗談じゃねえ!!』

 

 皆慌てて退避した。


 俺の予想が当たったのか小爆発や火花が更に激しくなり――


『貴様ら全員――道連れに!!』


 俺は思わず『あの爆発でまだ生きてるのか!?』と叫んだ。


 キョウスケも『嘘だろ!?』と言う。


 いくら小口径のレールガンを防げる頑丈な装甲でも目が眩んで地響きや大気の揺れが起きる程の大爆発だ。

 その衝撃はモロに浴びているのにヴァイパーズの司令官はまだ生きていたらしい。

 控えめに言って化け物である。


 ゆっくりとだが稼働している。


『悪いが一人で死んでくれ!! 俺達は生きる!!』


『だな!!』


 俺は置き土産でミサイルを全弾発射して逃走。

 キョウスケも後に続く。


 後ろで何か言っている気もするが振り返るつもりはない。

 現実はアニメや漫画のようにドラマチックではないのである。

 

 やがて――二度目の大爆発が起きた。



『ははは――俺達生きてる――』


 俺は言った。

 

『ああ、生きてるな――生きてることが信じられれねえ――』

 

 キョウスケも言った。


『凄い爆発だったね』


 リオも言った。


『あーこれまたパメラに叱られるパターンじゃん』


 パンサーも言った。


 基地があった場所にはキノコ雲が上がっている。

 よく生き延びたもんだと思ったが後でパメラに何を言われるかと思うとそっちの方が恐かった。


 そしてレーダーレドームを背負った白い飛行艇が降りてきた。

 現れたのは佐伯 麗子だ。


「お前らの悪運に感服するよ――地上部隊も全員無事だ。よくやったな」


『いや、終わってない』


「なに?」


 俺はそう言って敵が居る方向に向かった。

 猛スピードでパワーローダーの接近を探知した。


『俺も相当に悪運が強いらしい――』


 緑色で蛇のエンブレム。


 ラジコンのようなアンテナが左後部についた一つ目の頭部に厳ついシルエットの重装甲のパワーローダー。

 ホバー式なのか地面を猛スピードで滑走している。


 右手には大きなバズーカ。

 背中の両サイドにはそれぞれ別種のミサイルだかロケット弾とかを載せている。

 両肩のサイドには機関砲らしき物を乗っけてある。


 無傷ではないがやる気満々のようだ。


『その声は――お前、ヴァイパーか』


 あの全高10mのデカブツに乗っていた奴。

 ヴァイパーズの元締め。

 それがこいつだと確信した。 


『我々はまだ終わってはいない。ヴァイパーズは復興させる。俺が再び蘇らせる』

 

 ミサイルとバズーカ(ビーム式)、両肩の機関砲(レーザー)が返事だった。

 ビームバズーカとレーザーの機関砲を回避し、迫りくるミサイルを迎撃する。

 

『なら俺がここで終わらせてやる』


 今こいつを逃すと再びヴァイパーズが復活する。

 そうならないためにもこの男をこの場で倒すことにした。

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