第四十六話「敵の正体」

 Side 緋田 キンジ


 場所を移し、天幕の一つを借りて人払いをする。


 キョウスケを含んだ第13偵察隊。


 宮野一尉たち第7偵察隊。


 佐伯 麗子一尉もいる。


 ヴァネッサは観念したように「そうですね。私もあれだけの戦力をこの世界に持ち込んでいるのは正直想定外でした」と話した。


「一つずつ聞いていくぞ。あいつらの正体は何者だ? 神とかそう言う呼び方じゃなくてだ」


 俺は代表して尋ねた。


「戦乱と破壊をもたらす存在――いや、何者かと言ったところでしょうか。それがあの世界に潜んでいるのです」


「戦乱と破壊もたらす存在?」


「裏でリビルドアーミーを操り、そして貴方がた見てきた通り、独自に強大な戦力を保有し、平行世界にまで手を伸ばすだけでなく僅かな期間であれだけの拠点を構築する存在なのです」


「境界駐屯地にゲートを繋げたのもそいつか?」


「そこまでは分かりませんが、何かしらの形で関わっているしょう」


「なぜ日本を狙う?」


「と言うよりも既に世界の他の場所にもゲートが開かれている可能性を考えた方がいいでしょう」


 その言葉を聞いて俺を含めて――皆、最悪の想像が過ぎった。

 あんな前線基地が世界中に存在していて潜んでいるヤバイ状況。

 冗談抜きで世界の危機だ。 


 先に言葉を発したのは佐伯 麗子だ。


「前もって言っておくがはいそうですかと馬鹿正直に世界の人間がその所在を明らかにするとは思えん。日本国内はともかく、外国になるとどうにもならん」


 と、麗子は言った。


「日本を優先した理由はやはり他の世界に通じるゲートが幾つもあるからでしょう」


「そう言えば以前そんな事言ってたな」(*第十九話「ヴァネッサと言う女」参照)


 確かヴァネッサと最初に会った頃だ。

 あの頃から怪しさ全開のエセキャリアウーマンキャラだった。 


「奴に目的などあるのかどうかすら不明です。その名は――フォボス。それが奴の名前です」


 フォボス。

 火星の衛星の一つ。

 

 また、ギリシア神話の恐怖の神の名。


 それが俺達が戦った敵の名前だそうだ。

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