第四十七話「世紀末世界への帰還」
Side 緋田 キンジ
ヴァネッサが明かした話は信じていいかどうかな部分もあるが嘘と切り捨てるにしては多くの物を見てきてしまった。
とんでもない強大な存在がいる。
それだけは確かだ。
またヴァネッサの話は機密事項として口外禁止。
佐伯 麗子の預かりとなった。
それよりも問題なのは自衛隊と日本政府である。
☆
自衛隊は被害が甚大。
虎の子の機甲兵器がかなりの数をスクラップにされた。
さらには貴重な多くの兵士までも想定外の犠牲を強いられた。
万年予算不足で超少子高齢化のご時世の自衛隊からすれば大きな痛手だ。
SNSが普及した現代社会で日本政府も今回の一件は全て隠し通せるワケもなく、また多くの被害、殉職者が出ているので「とんでもない戦闘があった」ことは人々に伝わったようで波紋が広がっている。
☆
そして俺とキョウスケは一尉に昇進した。
どう言う意味での出世かは分からないが――隊の指揮は引き続き俺がとる事になった。
残りの休暇は今後の活動方針を決める上でも他の隊員達と一緒にあの荒廃した世界で過ごすことにした。
それに元の世界で過ごすと厄介事に巻き込まれそうな気もするしな。
☆
相変わらず基地にはリビルドアーミーの巨大戦艦が横たわっていてどうにかするために海自や空自の人間の技術屋達を総動員しているらしい。
「とりあえずパワーローダーをどうにかしないと――敵との戦力差が――」
「ああ。このままじゃジリ貧だ。出来れば嬢ちゃん達の分もな」
ここまで生きてこられたのは間違いなくリオ達の御蔭だがそのリオ達ですら苦戦を強いられる場面が多くなってきている。
敵のパワーローダーとの性能差とかの問題もあるのだろう。
腕でカバーするのは限界が来ている。
そこで提案してきたのはヴァネッサだった。
「新しいパワーローダーを色々と準備させて頂いています」
との事だった。
それを導入されるまで待てばいいかな? とかも想いもしたが周辺各地で妙な動きを探知している。
戦闘態勢をシッカリ整えて過ごす事になるだろう。
まあその前に――
【第7偵察隊、第13偵察隊、第4小隊・祝勝会】
「まさかこっちの世界でパーティー開いて待ち受けてたとはな」
キョウスケも呆れ気味だ。
基地の格納庫でパーティーである。
この待遇に呆気にとられた。
「まあいいんじゃないか? ずっと暗い話題ばっかって言うのもアレだし、明るくなれる時に明るくなった方がいい」
「なんだかんだ言って隊長らしくなったよお前さん」
と、キョウスケに言われたので俺は「ありがとよ」と返しておいた。
日本で起きた戦いで散っていった人々のために黙祷からはじまったパーティーは盛り上がった。
大画面による家電ゲーム大会やこの世界でブームになったオセロ大会にビンゴ大会。
パワーローダー同士の展覧試合。
さらには日本から持ち込まれたご馳走の数々――
俺達は帰ってきた。
この荒廃した世界に。
今迄以上に困難な道が待ち構えている。
それでも前に進もうと思う。
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