第三十九話「謎の女、Xからの頼まれごと」
Side 緋田 キンジ
現在はキョウスケの家はゲームパーティーの真っ最中だ。
順番交代制で様々なゲームをプレイしている。
リオ達は初めてみるゲームに驚きながらもどんどん順応していった。
俺やキョウスケも混じったりして大盛り上がりだ。
「そう言えばキンジ――頼まれ事なんだが」
「ああ、この世界にいるテロリストの掃討だろう」
☆
時間は遡り、ショッピングモールで謎の女、Xの出会った時のこと。
任されたのはテロリストの掃討任務だ。
だがテロリストの掃討に自分達、第13偵察隊は適していない。
あの荒廃した世界ならともかく元の世界でなら適任者はもっといる筈だ。
そして差し出されたのは遠方から取られた写真。
そこには見たこともないパワーローダーの姿があった。
「どうなってやがる? パワーローダーが流出したとしても変だ。この世界で組み上げたか?」
キョウスケはもっともな意見を言っていた。
写真に写っているパワーローダーは見たこともない黒い三つ目の機種だ。
リオ達に見せれば何か分かるかも知れないが――
「パワーローダーはともかく武器まで製造出来るなんて普通じゃない。遠目から見ても最低でも12・7mm。ヘタすりゃ20mmぐらいのライフル弾だぞこれ」
俺はその点を指摘した。
パワーローダーは整備もしやすいだけでなく、少ない資材で製造もできる。
戦車一両製造出来る金さえあれば冗談抜きで数百台は作れると思う。
設計図などが漏れて独自開発した線も無くはない。
だが銃器はパワーローダーのように製造はできない。
それが出来れば今頃日本は密造銃で溢れ返っている。
ましてやパワーローダー用の専用武器となると、兆候ぐらいは掴める筈だ。
「警察や自衛隊は抑えられましたが、外国の工作員は突入しましたが全滅しました」
「だろうな。それこそ中世の軍隊が現代の軍隊に挑むようなもんだろ」
キョウスケの言う通り、大方生身の集団だろう。
幾ら練度や技術があっても生身でパワーローダーに挑むのは自殺行為だ。
それにこれだけの軍備を持った連中である。
監視用のドローンや警備用の戦闘ロボットなども所持している可能性だってある。
例えパワーローダー対策はしていても結果は変わらなかっただろう。
「敵は放棄された鉄道トンネル内部に潜んでいます。存在は伏せていますが時間の問題でしょう」
「で? こいつらの出所と排除を頼みたいってか?」
俺は皮肉下にそう言った。
「これは公安だけでなく、防衛大臣、防衛省からの正式な指令です。ただのテロリスト相手ならともかく、対パワーローダー戦のスペシャリストは今の日本であなた達ぐらいしかいないのです」
筋は通ってる。
向こうの世界のパワーローダー部隊は被害もあってか、現在再編中もあり動かせない。
それに敵の戦力も未知数だ。
自画自賛みたいな物の言い方だが、考え得る限りの最強の戦力をぶつけるしかないだろう。
「・・・・・・選択肢はないか。リオ達には依頼の拒否権ぐらいは与えろよ。後支援態勢は最上級の物を用意しておいてくれ」
「分かりました」
☆
そして時間は戻る。
「まさか元の世界でパワーローダー戦とはな・・・・・・非核3原則とか大丈夫かね?」
「さあな。だけどこの国はよくも悪くも前例が出来ちまうと順応しちまう国だからな」
「あーそれもそうだな」
日本と言う国は昔から前例が出来てしまうと受け入れられてしまう国なのだ。
自衛隊の災害派遣とか、海外派遣もだってそうだ。
「話を戻すぞ。今回の敵、リビルドアーミーか?」
「いっそヴァネッサに聞いた方が早いかもしんねーぞ」
俺はそう提案してキョウスケも納得した。
そして俺達はヴァネッサを呼びつけることにした。
☆
家の外に出てヴァネッサを呼び出し、公安の女Xから借りた資料を見せる。
「とうとうここまで知っちゃいましたか」
ヴァネッサは特に隠し立てすることもなくそう言った。
「知ってる連中なのか?」
「はい。はっきり言ってリビルドアーミーよりヤバイ奴です。と言うか今回の一連騒動の黒幕に繋がる連中ですね」
「・・・・・・本当なのか?」
俺は慎重に言葉を選んでヴァネッサに尋ねる。
「はい。ですがここから先の事を知ればもう引き返せませんが、よろしいでしょうか?」
と、真剣な表情、声色で俺達二人に尋ねた。
俺はと言うと――
「お前が以前言ってた神に関わる事なのか?」
俺はそう尋ねた。
神。
そう呼ばれる存在が確かにあの世界には存在するのだろう。
あの謎の三つ目の黒いパワーローダーなどがそうだ。
「言わなくても何となく分かるでしょう」
「あいつらは神の先兵か何かなのか?」
キョウスケはそう言うが、「それ以上はお答えはできません。まだ引き返せます」とだけ返してこう続けた。
「ただ、一つ親切心で申せば――リビルドアーミーとやり合うのがマシだったぐらいの地獄の蓋を開けるぐらいの覚悟が必要だと――忠告させていただきます」
そう言ってヴァネッサは立ち去った。
この会話は公安の女、Xの方でも聞いてる筈だ。
「どうする? そうとうヤバイっぽいぞ」
キョウスケはひあ汗を流して俺に言った。
「ああ・・・・・・この日本に何が潜んでるんだ?」
俺もどう形容すればいいのか分からない不安と恐怖を感じた。
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