第三十八話「望まぬ再会」

 Side 緋田 キンジ


 少し遠くからリオとキョウスケの妹さん、マユミちゃんの様子を見ていたが、上手くやれているようでホッとした。


 家の周りの気配は例の公安の女、Xが回してくれた人達だろう。


 正直怪しいがそれを言うならヴァネッサとかだ。


 怪しすぎるのだがヘタに踏み込んで暴れられたら何が起きるか分からない。


 もしかしてこの世界にも既にヴァネッサの手勢が潜り込んでることも考えた方がいいように思えた。


「キンジ、休んでるところお前にお客さんだ」


「誰だ?」


「何となく分かってたんじゃねえのか? お前の御両親さんだよ」


 それを聞いてハァと溜息をついた。


「どうする? 追い返すか?」


「いや、自分で相手するよ。口ケンカだけで済む」

 

 そう言って俺は玄関に向かった。



 キョウスケの家の前で話すのは迷惑になる。

 近くの人気が少ない公園に場所を移した。


 俺の両親との再会。


 正直もう会うことはないかと思ったが――何となく予感はしていた。


「キンジ――」


 と、オヤジが名前を言ってくる。


「オヤジにお袋・・・・・・話だけは聞いてやる。何の用だ?」


 突き放すようにそう尋ねた。


「自衛隊なんかもう辞めて家に帰ってくれ! 仕事も用意してやる!」


 と、オヤジが言ってくるが――


「用はそれだけならもう二度と関わるな。親子の縁はそっちから切ったし俺もそれを承諾したんだ」


「待ってくれ! お前が自衛隊で好き勝手に暴れてるせいで自分達はどれだけ酷い目に遭ってるか――」


「そうよキンジ!! 許すから言う事を聞いて頂戴!!」


 オヤジの言い分もアレだがお袋の許すからと言う上の目線の言葉を聞いて「なにも変わっちゃいないな」と思った。


 それはそうと――


「お前らまだ市民団体で活動しているのか?」


「あ、ああ。息子が自衛隊にいるおかげでな。抗議もしやすくなるだろうと言って」


「くたばれクソ親父」


「ちょっと、実の父親に対してそんな言い方・・・・・・」


 お袋がそう言うが俺は正直我慢の限界だった。


「反省や謝罪をするならともかく、未だに俺を利用しやがって! 俺が子供の時からそうだ! お前らのせいでどれだけ辛い目に遭ったか分かってるのか!? わかんねえだろうな!?」


「お前それでも俺の息子か!?」


「ああ、信じられない事にな!? もうウンザリなんだよ! お前らのところに戻るぐらいならあの世界に戻って命のやり取りやった方がまだマシだ!!」


 そう言って立ち去る。

 後ろでなにか喚いていた。

 

 だが俺は立ち止まらなかった。


 どうしてあんな人間が誕生するのか不思議でならない。


 本当にワケがわかんねえよ。



 道を戻るとキョウスケが出迎えてくれた。


「お疲れさん。周辺に響いてたぞ」


「悪いな」


「気にすんな。この展開は予想してた」


「あれで大人しく引っ込むとは思えない。またなんかやらかすぞ」


「公安の姉ちゃんぶつけりゃいいだろ?」


 キョウスケの言う通りなのだが――


「念のため警戒は怠らないでおこう」


「そうだな」


「もしも次があれば――それが最後かもしれないな」


「・・・・・・お前がそう言うんならそうなっちまうんだろうな」


 なんとなく予感はしている。

 もしも次に会う時があれば別れの時になるだろうって。

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