第三十二話「アインブラッドの脅威」

 Side 緋田 キンジ


 全神経を張り巡らせ、敵の青く厳つい新手のパワーローダーと壮絶な戦闘を展開する。

 リオとパンサー、キョウスケ、ルーキー、WACの水瀬 キョウカ、高倉 ヒトミのコンビ達、他の偵察部隊の隊員総出で当たっている。


 相手は数の不利を物ともせず、たった一機で暴れ回っていた。

 パワーローダーの腕もあるんだろうがマシン性能の差が桁違いだ。

 右手のライフル――ビームライフルの破壊力にしてもまるで戦車から放ってるかのような大爆発が起きている。

 掠っただけでも装甲が融解して最悪爆散しかねない。

 

『ダメ――性能が違いすぎる』


『押さえ込むのも難しい!!』


 リオとパメラのコンビでさえも技量でどうにか押さえ込んでいる感じだ。

 リオのビームピストルもパメラのマシンガンとバズーカも当たりはするが決定打にはならなかった。


『ここは私が!!』


『私も行きます』


 水瀬、高倉ペアのブロッサムも加勢する。

 その流れで俺とキョウスケ、ルーキーも加勢した。 


『ルーキー!! 無茶だ!?』


 俺はルーキーは下がらせようと思ったが。


『無茶は覚悟の上です! やらせてください!』


『死んでもしらんぞ、クソ!!』


 舌打ちした。

 今は説得する時間すら惜しい。

 これで死んだら墓石にはバカ野郎って刻んでやる。



 戦いは命のやり取りをするのと同時に、自分達の限界を試しているかのような状況だった。


 どこまで限界性能を引き出せるか。

 

 どこまで眼前に強敵に食い下がれるか。

 

 そのために俺達は――戦い続けている。


 死の恐怖で心が押し潰されそうになる。

 マシンすらも無茶な動作で悲鳴を挙げているのが分かる。

 だがそれでも奴には届かない。


 キョウスケも地上を滑るようにブースターを噴かしながら的確に攻撃してくれている。


 水瀬も高倉も頑張って訓練に励んでいたのかコンビネーションで――俺達にも会わせて連携してくれている。


 ルーキーも、他の隊員も微力ながら援護をしてくれている。


 だけど届かない。


 この化け物を倒すにはどうすればいい!?


 どうすれば止められる!?


『ええい!! 貴様達だけに構ってはいられんのだ!!』


 そしてコンテナから超小型のミサイルらしき物が発射される。

 それを迎撃しつつ回避行動を取る。

 ミサイルの爆発、誘爆。

 視界が遮られる。

 

『まずはお前からだ!!』


『ッ!?』

 

 そして眼前に奴が――ビームライフルを向けて――やられる――死ぬ。

 

 死ぬ――


 し――

 

 しに――

 

 しにたく――


 死にたくない!!


『なに!?』


 咄嗟にビームライフルをライフルで破壊した。

 破壊される。

 ビームライフルの爆発を咄嗟にシールドで防いで距離を離す。

 

『やってくれる!!』


『うぉおおおおおおお!!』


『シールドの死角から!?』


 相手の右側面からパワーローダー用ライフルで仕掛ける。

 咄嗟に相手はシールドで防ぐが。

 

『後ろががら空きだぜ!!』


 キョウスケも仕掛ける。

 攻撃自体は当たっている。


『しまったブースターが!?』


 これまでの一人の大立ち回りが祟ったのか、それともキョウスケの攻撃が効いたのか、あるいは両方か――推進系統に障害が発生したようだ。


 味方の攻撃が次々と当たっていく。

 だがそれでもまだ倒れない。


 敵はサーベルを引き抜き、そして俺の方に迫り来る。

 ブースターを失っているのに素早い。


『まだだ! 一人でも多く道連れにしてくれる!』

 

『俺は――生きる!』


 そう言って耐パワーローダー用ライフルを乱射しながら突撃する。


『俺も忘れんなよ!!』


『なに!?』


 そしてキョウスケも突撃する。

 反撃に転じようとしたが――


『機体が――損傷が激しくて――』


 動きが目に見えて鈍くなった。

 どうやら限界を迎えたらしい。


『『うぉおおおおおおおおおおおお!!』』


 俺とキョウスケはありったけの弾を叩き込んだ。

 全弾使い果たすつもりでだ。

 敵の機体は各部から煙や火花が起きて――そして――


『このままでは・・・・・・我々は、リビルドアーミーは負ける――』


 それが最後だった。

 盛大な大爆発を起こした。


 

 あのアインブラッドと呼ばれる機種のパワーローダーが敵部隊の艦長、ワイルダーと言う人物だったらしい。


 それが倒された段階で敵は降伏を申し出て此方もそれを受諾した。

 どうやら敵の方はそう言う風に段取りしていたようだ。


 念のため核ミサイルの使用を警戒したがその素振りもなかった。


 今回は敵味方ともに大勢の犠牲者が出た。

 勝ちはしたが素直に喜べない。

 

 あと、リオに「心配したんだから」と泣かれたのは辛かった。

 だがこれも生きていると言うことなのだろう。


 さてと。

 俺達の任務はまだ途中だ。


 そのためにも、また以前の日々に戻れるように全力を尽くさないといけない。


 悲しんでばかりもいられないのだ。

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