第三十一話「大激突」

 Side 緋田 キンジ


 まさか敵の戦艦が腹を括って突撃をかますとは思いもせず、意表を突かれた。


 慌てて自分達の基地に戻った頃には既に激戦が始まっている。

 自分達の基地に敵の空中戦艦が座礁し、空中と地上で激しい砲火が飛び交っていた。


 前代未聞の大規模白兵戦である。


 地下族の人達はグレイヴフィールド内部のリビルドアーミーを合流させまいと必死に今も戦っている。


『敵――!? 背中にファンがついている!?』


 リビルドアーミーのパワーローダーは前回戦った機種だ。

 背中に二つファンがついた飛行ユニットをつけている。

 他にも飛行機械が飛び回っていた。


『クソ――電子機器にノイズが――電波妨害か!?』


 そう言いつつパワーローダー、バレルで迎撃するキョウスケ。

 両肩のキャノン砲と両手に持った銃火器で弾幕を張る。


『直接照準で狙うしかない!!』


 そう言ってパワーローダーを身に纏ったリオは相変わらずの芸術的な二丁拳銃の射撃技術で空中の敵を狙い撃っていく。


『後ろのファンを狙って撃ち落とせ! そっちの方が手っ取り早い!』


 キョウスケは『的確な指示ありがとうよ、緋田隊長!』と軽口を飛ばしつつ、狙いを後ろのフライトユニットに切り替えた。


 敵の動きは見た目よりも素早いが打ち落とせない速さではない。 


『俺達はどうする!? このまま戦い続けるか!?』


『泥沼になるだろうがそれがベストだ! この状況でヘタに動き回れば敵だけじゃなく、味方の攻撃で戦死するぞ!』


『だよな!』


 ジャミングの影響でレーダーも無線もアテにならない。  

 第二次大戦の戦場はこんな感じだったんだろうか。

 

(ともかく数を減らさないと!!)


 近付く敵を片っ端から潰していく。


『なに!?』


 突然基地の彼方此方から猛烈な砲火がリビルドアーミーに襲い来る。


『アレは――トレーダーやキャラバン――この世界の住民か――』


 この世界の住民は前回に引き続き参戦してきた。

 次々とリビルドアーミーのパワーローダーや飛行機械を破壊し、空中戦艦にダメージを与えていく。



 Side アネット


 私もパワーローダー、バルキリ―で戦う。

 ややピンク寄りの赤塗りにした私専用の機体。

 

 ニッパ達もバルキリータイプに身に纏って戦う。

 

 他のトレーダーやキャラバンも武装車両に乗り、ある者はパワーローダーを身に纏い、この場に駆けつけた。


 この場にいない人々もそれぞれの戦いを始めている。


 全てはあの日々――働けば水や食料に困らない、風呂にも入れる、娯楽がある日常。


 そして私は――望んだ未来のためにこの場所に立っている。 

 


 Side ???


『こう言う状況は慣れねえが! やれねえワケじゃねえ!!』


 ここに集まった連中は皆、覚悟を決めている。

 理由は様々だが未来に命を懸けたのだ。

 

 その未来はどう言う未来かは分からないが――少なくとも今よりかはマシな未来だと信じてな。


 それに――


『前金はたんまり貰ってるんでな!! そんぐらいはキッチリ働くぜ!!』


 そう言って次々とリビルドアーミーの連中を切り捨てていく。

 本当にガラにもない事をやっている。

 

 ジエイタイの連中に感化されていたのは分かっていたがここまで感化されていたとは思わなかった。


『なんだ!? 何が起きている!?』


『目視できないだと!? 何処にいる!?』


『探せ!? 何処かにいるはずだ!?』 


 残念だがこの機体はステルス性特化型。

 お前らリビルドアーミーのセンサーでも捉えられやしねえよ。


『オラオラ!! 死にたい奴から掛かってきな!! お前らに殺された連中があの世で待ってるぜ!!』


   

『荒野の野良犬どもが群れやがって!!』


『バカ!! 乱射するな!! 味方にもあたるぞ!!』


『こんな無茶苦茶な作戦――』


『増援はまだか!?』


『敵が勢いづいて――攻撃が止まらない!!』 


 援軍の参戦で敵の撃破率が急上昇して行っている。

 

『ははは、笑うしかねえ・・・・・・』


 キョウスケの言う通り笑うしかない。

 この勝負――勝ったな。 


『まだだ、まだ終わりではない!!』


 男の声が響いた。


『勝負はこれからだ!! リビルドアーミーの恐ろしさを見せてやる!!』


 同時に艦内から大量の無人兵器やパワーローダー。

 武装車両が出て来る、


『まだあんなにいたのかよ!?』


 キョウスケが驚くのも無理の無い程の数だった。


『恐らく温存していた戦力とか予備戦力、全てを放出したんだろう。籠城戦してもジリ品になるから勝負に出たんだ』


 俺はそう感じた。


『なんかパワーローダーの中にヤバそうなのがいるんだが――』


『ああ・・・・・・』


 キョウスケの言う通り、確かにやばそうなのがいる。

 他のリビルドアーミーのパワーローダーと違い、明らかにシルエットが違う青色のパワーローダー。

 二本角で二つの瞳、口と思わしき突起物。

 右手にライフル、左手にシールド。

 両肩の上にコンテナ。

 背中に大きなバックパック。

 重厚そうなシルエット。


『ぬおおおおおおおおおおお!!』


 にも関わらず、素早い動きで次々と戦闘ヘリやパワーローダー、車両を討ち取っていく。

  

『まさか――アレはアインブラッドタイプ!?』


 リオが何か知ってそうだが――


『アレを放置していたらまずい!! 自信が無い奴は下がれ!!』


『結局貧乏くじか!!』


 キョウスケの言う通り。

 今も尚、物凄い勢いで――青い閃光――とでも言うべきか。

 次々と味方が火花に散っている。


 そしてついにこちらにも――


『来るぞ!!』 


 俺達は戦闘に突入した。 

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