第三十話「空中戦艦襲来」
Side リビルドアーミー 空中戦艦艦長 ワイルダー
=空中戦艦エアーベース・ブリッジ=
「見えてきた。アレがグレイヴフィールドか・・・・・・」
遠くに見える廃墟を見て私は呟いた。
まだ早朝で暗いが、嘗て栄華を誇った大都市の末路がよく見える。
「核で吹き飛ばしますか?」
「アンサム君。奴達も核兵器を持ってる可能性があるのを忘れてはいないか? これは戦いであると同時に駆け引きなのだよ」
「し、失礼しました」
これだからリビルドアーミーは野蛮人だらけと言われるのだ。
核兵器はこの世界では珍しくともなんともない。野盗やらオーガだって何故か持ってる。
なんならパワーローダーの動力炉を大量に取り出し、改造して括り付けて、大砲で打ち出せば即席の強力な核兵器が作れる。
我々は核攻撃に失敗した。
相手は核攻撃をしないと考えるより、核攻撃をする前提で物事を進めた方が良い。
(ガルノフのバカはやってくれたよ。無能なせいで空中戦艦まで差し向けて相手を殲滅しなければならなくなったのだから)
リビルドアーミー・・・・・・リビルドシティは周辺の恐怖支配で成り立っている。
その恐怖支配に抗う連中は次々と潰した。
一度は退ける骨のある連中はいたが、大体は空中戦艦を差し向けた段階で終わった。
今回もそうなるだろう――
「高速で飛翔する物体接近!! これは――ミサイル!?」
「なに!? 迎撃しろ!?」
「一発や二発ではありません!! 数十発が同時に――地上からも攻撃が来ています!!」
迎撃に成功したのか爆発の振動音が艦に伝わる。
爆発の規模からして核ではないようだ。
「監視は何をしていた!? このマヌケ共が!? 弾幕を張って迎撃!! このまま敵の基地まで突っ込むぞ!」
「しかし、それでは――」
副官のアンサムが躊躇う姿勢をとるが――
「言っただろ、駆け引きなのだよ!! 後退、あるいは立ち止まれば敵の良いカモだ!」
「ですが罠の危険性も――」
「相手は弾道ミサイルや戦艦に砲撃をかますほどの軍事力と弾道ミサイルを惜しげも無く撃ち込んでくるテクノロジーを持っているのだ! お互い核爆発に巻き込まれる至近距離での殴り合いに持ち込んだ方が勝算がある!」
「無理にそうしなくても援軍を――」
「アテにならん援軍など、いない方がマシだ! このまま全速前進で飛び込むぞ!」
「りょ、了解――」
ヤレヤレだ。
ガルノフが敗れたのは油断だけではなかったようだな。
丁度良い。
雑魚の後始末にも飽きてきたところだ。
こいつは楽しめそうだな。
☆
Side 五藤 春夫 陸将
=大型トレーラー・臨時総司令部=
我々は前回と同じく自分の基地を囮にするようにして展開している。
基地周辺には多数のデコイ(囮)を用意しておいた。
敵の――リビルドアーミーの空中戦艦。
白と青の二色で配色されている。
戦艦と言うよりも空飛ぶ、翼が付いた巨大なトレーラーのような印象を抱いた。
サイズは*イージス艦よりも横幅があり大きい。
イージス艦は――
☆
*イージス艦のサイズ
全長:約160m。
全高:諸説あるが船底からマスト込みで少なくとも約30mぐらい。
幅:約20m.
☆
に対して、リビルドアーミーの戦艦は全長は約250m、全高60m。
幅は50m以上で翼(ブースター?)の部分を含めると100mを越えるかもしれない。
まさか自分が現役の時にこんな化け物と一戦交える事になろうとは――
「敵艦全速力で此方に突っ込んで来ます!!」
部下の報告を聞いて「どうやら敵は思い切りのよい指揮官のようだな」と思った。
「非戦闘員はシェルター、あるいは元の世界に退避!! 攻撃の手を緩めるな!!」
「了解!! イージス・アショアフル稼働! 攻撃、迎撃準備よし!!」
☆
Side リビルドアーミー 空中戦艦艦長 ワイルダー
=空中戦艦エアーベース・ブリッジ=
「敵の攻撃苛烈!! 市街地の彼方此方から攻撃が――」
「狼狽えるな!! 砲撃で潰していけ!! 現地にいる味方はどうした!?」
「交戦中です!!」
「だろうと思ったよ――敵の本拠地にはどれぐらいでつく!?」
「もうすぐです!!」
「到着次第、艦砲射撃で敵の基地を潰す! バード(ヘリ)部隊、パワーローダー部隊を出せ!」
「りょ、了解!」
☆
Side 五藤 春夫 陸将
=大型トレーラー・臨時総司令部=
「敵空中戦艦目視できる距離に到達!」
「発砲開始! 基地施設を重点的に狙っています!」
予測はしていたが前代未聞の至近距離での殴り合いになるとは。
「此方も反撃開始! 敵空中戦艦に火力を集中させろ!!」
だが負けてはならぬと気合を入れて指示を出す。
「敵空中戦艦から飛行機械及び、パワーローダー部隊発進!!」
「此方もパワーローダー部隊を出せ! 攻撃部隊に一歩も近づけさせるなと伝えろ!」
「了解!」
さて、ここからが正念場だぞ・・・・・・
☆
Side リビルドアーミー 空中戦艦艦長 ワイルダー
=空中戦艦エアーベース・ブリッジ=
「敵パワーローダー部隊と交戦!!」
「敵の攻撃苛烈! 被害が拡大しています!」
「空中航行維持できません!」
「敵の基地に戦艦を着陸させろ!」
「しかし――」
「敵を片付けてからゆっくり修理すればいい!! それともこのまま空で散りたいのかね!?」
「りょ、了解!!」
ここでアンサム君が「やはり突撃は無謀だったのでは!?」と言うが――
「逆だよ! 今ここで仕留めねば出世どころかリビルドアーミー全体の脅威になりえる! それとも君は滅び行く組織の中で成り上がりを夢見るバカなのかね? そうなりたくなければここで多少泥を被ってでも勝つ必要があるのだよ!」
「りょ、了解!」
まさかこんな日が来ようとはな。
自分の認識は間違っていた!
ああそうとも、間違っていたさ! まさかここまで強大な軍事組織だったとは。
少なくともこの周辺に何時? 何処で誕生した?
しかもグレイヴフィールドなんぞで?
ガルノフのバカを笑えんな。
ともかく我が軍も退路がないことは分かっているだろう。
こうでもせんとやる気を出さんからな。
☆
Side 五藤 春夫 陸将
=大型トレーラー・臨時総司令部=
「敵スモーク展開!!」
「電波妨害発生!! レーダーにノイズが!?」
そこまで聞いて私は敵の目論見に気づいた。
「敵はパワーローダーによる白兵戦で勝負をつけるつもりだ!! スピーカーを使っても構わん!! 総員に此方も白兵戦の準備をさせろ!!」
「りょ、了解!!」
もはやノーガードの至近距離の殴り合いだ。
まさかこうなるとは思いもしなかったが嘆いてばかりはいられない。
ここで何としても奴達を食い止める。
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