第二十六話「その頃の日本」
Side 杉谷 正嗣 総理 & 日本政府の政治家たち
ネットもテレビも今は大騒ぎだ。
あの世界での戦闘が生中継でテレビで一部始終とは言え流れてしまった。
福田の奴め、完全にしくじりおって!!
あれでは我々がバカみたいではないか!!
リビルドアーミーもまさかあそこまで好戦的だとは思わなかった。
まさか核まで使おうとするとは!!
リビルドアーミーのせいで自衛隊に弱味を握られたようなものだ!!
「どうにかして和平交渉を――」
「威力は低いとは言え、相手は負けそうになったら核兵器を使うような連中だぞ!? 核テロリスト相手に交渉しろと言うのか!?」
「だからそんな奴と戦争を続けるつもりか!?」
「正しいとかどうとかの問題じゃない!! そんなヤバイ連中がこの国で核兵器を湯水のように使ってみろ!! 政治レベルどうこうの範疇を超えている!!」
政治、官僚達はパニック状態だ。
まるで世界の終わりが間近に迫ってきているような状況だ。
万が一侵入されても自衛隊の責任にでもすればよかったが福田のバカがノコノコと和平交渉しにいってしくじったせいでそれもやり辛くなった。
幸いなのは他国が黙り込んだことだ。
恐らく何かしらの方法で今回のマスターフィルムを入手したのだろう。
あるいは自衛隊の連中がワザと流したのか。
ともかく異世界くんだりまで行って核戦争をやりたくないと言うのが本音だろう。
政治家なんて連中は自国の利益や国民の生活よりも、長くて数ヶ月先の自分の政治生命とかが大切なのだ。
それにゾンビや化け物、醜いエイリアンみたいな生物とかまでいるのだ。
自衛隊以外に誰にやらせる?
どの道自分の政治生命は終わったようなものだ。
クソが。
☆
Side 園田 外交官
元の世界、境界駐屯地内は慌ただしい。
この世界にいの一番に退避し、そして自分達を殺しに来た敵が核兵器が使われた事を聞いて気を失いそうになった。
自衛隊に感謝するよりも、リビルドアーミーに恨み節を吐くよりも、ただただ助かった事に感謝した。
もうあんな世界に行くのはゴメンだ。
福田さんは病院に搬送された。
マスコミの人達も同じだ。
彼も自分と同じような心境なのかもしれない。
私は戦争を知らなかったが始めて経験した。
戦争など何処か遠い世界の出来事だと思っていたがその認識は誤りだった。
既に戦争は始まっていたのだ。
しかもかなり複雑かつ厄介な形でだ。
この世界との政治的な都合。
あちら側の世界の都合との板挟み。
リビルドアーミーと言う核武装して平然と味方諸とも吹き飛ばそうとする頭のおかしい連中と殺すか殺されるかの生存競争だ。
こんなの戦争では――いや、そもそも戦争とはそう言う物なのかもしれない。
我々が勝手に美化していただけで。
そしてこの境界駐屯地は最前線の目と鼻の先の場所だ。
にも関わらずやかましい市民団体は元気だ。
戦争反対。
自衛隊の核兵器の導入を許すな。
平和的に解決しろ。
などと言っている。
自分もアレと五十歩、百歩の連中だったと思うと、自分はなんのために外交官になるために勉強してきたんだろうと思うようになってきた。
必死に努力して賢くなった気でいたが違う。
自分は賢いと勘違いしたバカになってしまったのだ。
段々と虚しくなってきた。
暫くはなにもしたくない。
再就職できるかな・・・・・・
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