第二十三話「思想の対価」

 Side 園田 外交官


 リビルドアーミーと交渉を設けられないかと頼んだ。


 五藤陸将は事務的な態度で「善処します」とだけ答えた。


 他の自衛官も事務的な態度だ。


 福田さんはそれが気に入らないのか、「文句があるのなら言ってみたらどうだ?」、「さんざんこの世界で好き勝手にやってきたんだろう?」、「私が来たからにはもうそんな事はさせんからな!」と言いたい放題だ。


 ☆


 上等な部屋に案内され、福田さんと外交の打ち合わせと言う名の接待が待っていた。


 マスコミの人達は外で取材を続けるようだ。

 自衛隊の人達に反対されたが福田さんが強引に、半ば脅迫する形で取材させることにした。


「しかし自衛隊が好き勝手してくれたお陰でいい攻撃材料が揃った。財務省の連中も大喜びだな。外務省での君の株も上がるぞ。ワハハハハハハハハハハハ!!」


 先程からこんな態度で上機嫌だ。

 

「それよりもリビルドアーミーとの交渉、本気で上手くいくと思ってるんですか?」


「なあに、心配はいらんよ。多少国益は損なっても、最悪この自衛隊の連中や現地住民がどうなろうが成功させてみせるさ」


「は、はあ……」


 よっぽど上機嫌なのか、よく自衛隊の基地内でそんな事を大声で言えるもんだ。

 SNSが普及した昨今、たった一つの失言が命取りになる世の中だと言うのに。

 よくこんなんで今迄、政治家をやってこれたものだと思う。


 政治家は学力とか頭の良し悪しじゃなく、よくも悪くも金とコネさえあればなれるとつくづく思わされる。



 五藤陸将はどんなマジックを使ったのか、リビルドアーミーとの会談の場を設けることができたようだ。


 場所は自衛隊基地を指定。

  

 リビルドアーミーは完全武装の大軍で襲来した。


 この時点で既に嫌な予感はした。


 マスコミは生放送でお茶の間に届けると生き込んでいる。

 

 見た目、オスプレイのような乗り物から白と青のヒロイックなパワードスーツも一緒だ。

   

 福田さんは護衛の人達と何やら揉めている。

 

 いや、それよりもどうして会談の場に大量のパワーローダーが?

 しかも武器を所持して。

 数が多すぎる。

 

 まてまて。

 一種の砲艦外交のつもりなのかもしれない。

 そうだ。

 きっとそうに違いない。

 

『我々リビルドアーミーの答えを出そう。会談に応じると言ったが――これが答えだ!!』


 そして光のシャワーが降り注いだ。

 福田さんは自衛隊のパワーローダーのシールドに守られてどうにか生き延びた。


「ま、待ってくれ! 平和的に! 平和的に話し合いをしようじゃないか!?」


 と、パワーローダーの陰に隠れながら福田さんは叫ぶが。

 

『話し合いだと!? 我々と対等のつもりか!? 大人しく我々に従えばいいのだ!!』


「せ、せめてそちらの条件を提示してくれ」


『きさまら二ホンの物、全部を寄越せ!! できなければお前も含めて全員殺す!!』


「そ、そんな滅茶苦茶だ!? これは交渉じゃない! こんなの脅迫ではないか!?」


『これ以上の問答は面倒だ! 全員死ね!』


 嫌な予感は的中した。

 自衛隊の人々に促されるまま退避する。


 マスコミの人達も逃げ始めた。

 光のシャワーが建造物の彼方此方に直撃して爆発を起こしている。

 基地の内外でも戦闘は始まり、生きた心地はしなかった。


 自分はまだ生きているのか?

 実はもう死んでいるのはないか?


 これは現実なのか?

 夢なのか?


 もう何がなんだか分からなかった。


 

 Side 緋田 キンジ


 基地から少し離れた場所。

 自分達がいた基地を囮にしてリビルドアーミーを包囲する形で他の部隊も展開している。

 

 ヴァネッサさんは「会談の場は用意できますけど、話し合いは無理ですよ? 間違いなく戦闘になります」と言っていて覚悟はしていた。


 会話の内容も無線越しにしっかり聞いていたが、ただ宣戦布告しに来ただけじゃねーか。

 

 それはそうと基地を囮にすると言う思い切った策が当たり、戦いは優勢に進んでいる。


 反撃開始と行きますか。

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