第二十二話「思わぬ横槍」

 Side  杉谷 正嗣 総理 & 日本政府の政治家たち


 リビルドアーミーと激突するとの知らせは日本政府の中枢。

 国会の政治、官僚達にも激震が走った。

 私こと杉谷 正嗣 総理もそうだ。


 最初は耳を疑った。


「あいつら(世紀末世界にいる自衛隊たち)正気か!?」


「好き放題やりおって!! 増長させすぎたのではないか!?」


「この事がバレたら大問題ですぞ!?」


 と言った感じで騒いでいる。


「我々の目的は調査であって、戦禍を拡大するために自衛隊を送り込んでいるのではない!!」


「そうだ!! 防衛省は何をやっている!!」


「大体、核動力で動くパワードスーツで武装した連中を助ける必要などない! 核テロリストなど放置してリビルドアーミーと交渉するべきだ!」


「そうだ。リビルドアーミーの問題だって自衛隊が都合よく隠蔽したのではないか!?」

 

 私の意見を大声で叫んで代弁してくれていた。

  

「アメリカはなんと!?」


「遠回しに静観を決め込むつもりだよ!!」


「渦中の栗を拾わせるだけ拾わせて良いとこどりするつもりか!?」


 などと言っていたがそろそろ本題に入らねばならない。


「君達の熱意は分かった。さて、どうやって自衛隊の暴走を止める?」


「理由なんて後でどうにでもなる! とにかく乗り込んで黙らせればいい! 人事も総入れ替えだ! これは調査であって戦争するために自衛隊を送り込んだのではない!」


「最悪、力尽くで黙らせればいい!!」


「なら私が行きましょう」


「福田くん。君かね」


 福田 幸三。

 眼鏡で丸っこい中年太りした体系の男。

 平和思想家で自衛隊の解散をスローガンにかがげている。


「なに、簡単ですよ。兵士ではなくマスコミと一緒に乗り込めばいいんです」


「大丈夫かね?」


 と、尋ねるが。


「あの境界駐屯地のテロリスト予備軍を一掃するいい機会です。せっかくですし外務省からも誰か派遣してもらいましょう。リビルドアーミーとの交渉はドーンと任せてほしいものです」


 

 Side  園田 外交官


 国会の代議士である福田さんに連れられて境界駐屯地へ。

 左系のマスコミも引き連れている。


 境界駐屯地周辺は市民団体達が反戦運動をしていた。まあこれは予想通りだ。


 だが駐屯地の中は素人目から見ても殺気立っていた。 

  

 資料を見たがリビルドアーミーと言う本格的な軍事組織との実戦が近いのもあるのだろうが戦後初の実戦が行われた土地であり、最前線の間近だからと言うのもあるだろう。


 自分も緊張してきたが、リビルドアーミーとの戦いを止められるのかどうか正直疑問である。


 福田さんは強引に駐屯地内に入り、厳重にシェルターで封鎖されたゲートを潜り、そして荒廃した世紀末の世界へとたどり着いた。


 境界駐屯地比べ物にならないぐらいに武装化されており、パワードスーツや武装したロボットが彼方此方に闊歩している。


 マスコミの人達ははしゃぎながらカメラを回し、福田さんは茫然としていたが付き添いの人に言われて正気に戻り、「ほら見てみろ! 好き勝手にさせるからこうなるんだ!」と、得意げに語った。


 自衛官だけでなく現地住民らしき人間まで基地内をうろついており、遠巻きに物珍し気に、自衛官は明らかに嫌悪感をもってそそくさと退散していった。


 福田さんはそのまま司令室に向かい、基地の代表である五藤 春夫 陸将の元へと向かった。


 ご丁寧にマスコミの人間まで引き連れてだ。


 絶対に歓迎されないだろうなと思いつつ歩を進めた。

 

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