リビルドアーミーとの戦い

第二十話「リビルドアーミー」

 Side 緋田 キンジ


 真っ昼間のことだった。


 謎の飛行機械。

 両サイドにローターがついたヘリ? のような乗り物が複数。

 それが突如として自衛隊基地の前に降りたって現れた。


 人々は「リビルドアーミーだ」、「とうとう着やがったんだあいつら」、「どうなるんだこの場所・・・・・・」などと恐れていた。


「ふーむ・・・・・・噂は本当だったか・・・・・・」


 などと髭を蓄えた偉そうな白い軍服らしい物を着た男が兵士達を引き連れて周囲を見渡しながら言う。


「お前達がジエイタイと言う連中か?」


「は、はい。そうですが・・・・・・」


 嫌らしそうな目つきで屋外出点されたPXを見ながら言う。


「食料や水を配って何を考えている?」


「いえ、現在はこの土地の規則に則り、売買させて頂いております。我々はこの土地の住民との交流を深めるためにこうした活動をしているのです」


 と、自衛官は特に問題なく答えた。


「ふん、交流か。実にくだらん。水や食料がなければ此奴らはお前達に見向きもしないぞ」


「はっ! そうならないように努力していきます!」


 自衛官も頑張ってそう返す。

 この自衛官、自衛官の鏡だよ・・・・・・そう感じてしまう程にこの人は自衛官として立派だった。


「まあいい。我々リビルドアーミーに逆らえばどうなるか――少し教育してやらんとな」


 唐突に殴る蹴るの暴行が始まる。


「突然何をするんだ!?」


 俺は思わず叫んだ。


「教育だよ? 見て分からんのか!?」


 そして問答無用で俺も殴られる。


「キンジ!?」


「リオ、手を出すな!!」


「ほう、お前の女か?」


「だったらどうする?」


「そうだな、試しに外の女で味見してもいいかもしれんな――」


 なんつー思考回路だ。

 独裁者の軍隊か何かかこいつら。

 リオはと言うと銃を向けている。

 他のリビルドアーミーの兵士も銃を向けていて一触即発の空気だ。


「ジエイタイでもリビルドアーミーには逆らえないのか・・・・・・」


「良い場所だったのにな。ここは・・・・・・」


 周囲も暗いムードが漂っている。

 

「この女と、そうだな――ここに置いてある水と食料を全部持って行け。今回はそれで済ませてやろう」


「ふざけないで!!」


 メチャクチャな要求にリオが叫んで発砲した。


「キサマ――」


「そうやって一体幾つの村や町を滅ぼしてきたの!?」


「ふん、リビルドアーミーに逆らったのだ! 当然だろう! この荒廃した世界を支配してやろうと言うのだ! 光栄に思うがいい」


「それで何人殺すつもり!?」


「ふん。外の世界の蛮族の犠牲など幾ら出ても痛くも痒くもない! 多少間引いたところで問題はなかろう!」


「やはりリビルドアーミーは敵だ」


 そう言って敵意をむき出しにした表情で睨み付ける。 


「よせリオ・・・・・・熱くなりすぎだ」


 俺はそんなリオを止めた。


「でもキンジ――」


「ほう? 腰抜けが――まだ立ち上がるか?」


「残念ながら水と食料の提供は断らせていただきます。それとこれ以上の狼藉を働くのであれば――それ相応の処置を取らせていただきます」


 そして次々と完全武装した自衛隊が現れた。

 中にはパワーローダーを身に纏った自衛官もいる。

 流石に分が悪いと思ったのかリビルドアーミーの連中は退いていく。


「貴様達!? こんな真似してタダで済むと思っているのか!? 我々はリビルドアーミーだぞ!?」


「我々は自衛隊です。決して正義の味方ではありませんが――アナタ達の行為を眼前で容認する程、軟弱な組織ではありません」


「クッ――」


 周囲から歓声が上がる。

 厳罰覚悟で、自衛隊としての本文を捨て去る覚悟までしてのハッタリだ。

 これで退かないなら戦闘しかない。


 相手は「退くぞ」と言ってその場から立ち去る。


「キンジ、本当に行かせていいの?」


 リオは若干泣きながらそう言った。


 リビルドアーミーの連中は飛行機械に乗って退散していく。


「――昔、漫画でこう言うシーンあったな。ケンカする相手にもあたんないってのはこう言う事か」


 俺はと言うとそんな事を考えていた。


「でもあいつら――このままじゃ引き下がらないと思うよ」


「それは私も同意見ですね」


 リオの言い分を付け足すように唐突に現れたのは――


「「ヴァネッサ!?」」


「どうもヴァネッサでございます。いや~正直見ていてヒヤヒヤしましたよ。それはそうと急いで戦闘準備した方がよろしいかと。あいつらはこの基地を襲撃する腹づもりです」


 衝撃的――ではないか。 

 なんとなくだがヴァネッサの言う通りにしてきそうだと思った。


「だけどここはグレイヴフィールドだろう? 部隊を空輸するにしても降ろす場所があるのか?」


 当然な疑問を投げかける。

 ここグレイヴフィールドは以前より勢いは衰えているがサメの化け物とか出る危険地帯だ。

 部隊を展開させるのはリスクがある。


「確かにその通りなのですが、一つ方法があります」


「方法?」


「野盗連中やヴァイパーズが使用していた施設をそのまま活用すればいいのです」


「――確かにその方法ならいけるか」


 単純な方法だった。

 今にして思えばグレイヴフィールドにはそう言う安全地帯のような場所が幾つもあるのだろう。先に行われた自衛隊基地の襲撃もそう言う理由があると考えれば合点がいく。


 そこを奪って拠点として活用してしまえば良いのだろう。


 あいつらならそれぐらいはやるだろう。



 Side リビルドアーミー ガルノフ


 =旧ヴァイパーズ施設跡にて=


 クソ、なんだあの若造。


 ジエイタイの連中め!!


 恥を掻かせおって!!


 こうなれば少し痛い目を合わせてくれる。


 理由など幾らでもでっちあげればいい。


 それにしてもこのヴァイパーズどもが使っていた施設跡、汚いのなんの。


 外の世界の蛮族の住処など、どこもこんなものか。


 元は学校だったらしいが今はこうしてリビルドシティからの援軍を受け入れる場所に最適だ。


『クソ、なんだこいつら!?』


『だから外はイヤなんだよ!? 化け物が襲ってきやがる!!』


 しかし完全に安全と言うワケではない。

 様々な化け物が遅い掛かってくる。


 今相手にしているサメの化け物やらもそうだ。

 我が軍のパワーローダーやロボット軍団、飛行戦力の前では敵ではないがな。


 死んだとしても競争相手が減ったと思えばいい。


 それよりも今はジエイタイからどれだけ物を分捕れるかだ。


 あれだけの水や食料を分け与えていると言う事は何か秘密があるに違いない。


 それを牛耳ればと思うとワクワクする。


 今から楽しみだ。

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