第十八話「自衛隊基地での一日」

 Side 緋田 キンジ


 佐伯 麗子に色々と言われたが一先ず自衛隊基地でゆっくりする。


 正直言うと任務の疲れや連戦が続いたからだ。


 この自衛隊基地にいても襲撃はくるが以前よりかは大幅に改善されていて、ウチの部下達は皆熱心に訓練に打ち込んでいる。(キョウスケはパメラとパワーローダーを弄っている姿をよく見かける)


 理由は様々だがこの世界の人々やパワーローダーの影響が大きい。


 それに実戦と言う名の襲撃回数も多いが、以前に比べれば天国だ。


 今この基地にはこの世界の人々だけでなく、パワーローダーやこの世界の兵器に必死に適応しようと訓練している自衛隊などが頑張っている。


 ちょっとドン引きするぐらいに。


 敵も相変わらずゾンビやらオーガやらサメやら暴走した無人機械やらだが――最近は人間の敵は来なくなった。


 恐らく死んでしまったのだろう。


 昔は恐がっていたが慣れとは恐ろしい物で実戦経験を積むためのいい機会だと考え始めている節がある。


 ヤバイ宇宙線を浴びてなければいいんだが――


 そして俺はと言うとこの世界の住民向けのPXの運営の手伝いをしていた。


 向こうの世界から持ち込まれる物資の供給をパワーローダーを身に纏って手伝っていた。


 パワーローダーは軍事用パワードスーツだ。


 力加減に気をつけなければならないがこうした力仕事には打って付けのマシンだ。


 作業効率がとんでもなく上がり、施設科や輸送科部隊でも導入されることになったらしい。(非核3原則の問題があるので地球では表だって使えないが・・・・・・)


 ここまでの汎用性を持つパワーローダーはある種の軍事兵器の到達点なのかもしれない。

 

 さて、問題の商品だが――


 食料や水に服――下着類などもバンバン売れた。


 野外入浴セットの提供などの相乗効果で石鹸やらシャンプーとかタオルとかも売れている。


 他にもお菓子やらオセロとか、トランプとか、やはりと言うかロボットプラモとかその手の模型雑誌とかも売れた。


 ちなみに商品などはゲートが開かれた境界駐屯地周辺の店から業者買いしたりしてこの世界に流し込んでいるらしい。


 境界駐屯地周辺の人々に多大な迷惑を掛けたお詫びである。


 この世界の武器や医薬品、パワーローダーだけでなく、この世界の通貨であるコインを使って物を売買している。


 コインと円の相場については手探りな部分もあるが、パメラやリオ、パンサーなどの協力者などの情報を元に調整している段階である。

 

「つか皆、娯楽に飢えてるのね・・・・・・」


「うん。みな夢中だよ」


 リオと一緒に娯楽に飢えた人々を眺めた。


 屋外でテーブルや椅子を並べてオセロやトランプに勤しむ面々を見て小学校みたいな光景だなと思った。

 嗜好品など掛け合って戦ってるのはこの世界らしいと思ったが。


 これでゲームとか持ち込んだらどうなるのやら。

 ・・・・・・まあ電圧とかの関係もあるし、それよりかは分解されてパーツにされるかもしれないなと思った。

 

「と言うかキンジ強いね――オセロ」


「うん。ああ、なんでかな?」


 かく言う俺もテーブル挟んで椅子に座ってリオとオセロをしている。

 PXでの作業も一段落し、休憩していたらリオに誘われて――と言う形。

 結果は連戦連勝である。 


 これはリオが弱いだけでなく、こう言う娯楽に慣れ親しんでないのが原因だろう。


「私達の世界ってなんか大切な物を忘れちゃってたんだね」


「まあそれはどんな世界でもそうだと思うよ。日本人だってそう言うところあるし」


「そうなの?」


「まあな」


 科学技術云々ではなく、精神的な部分でだと思う。

 少なくとも俺はブラック企業が乱立し、毎年大災害で死ぬぐらいの人間が自殺する国家を誇れる国家だと思いたくない。


 今はどうだが知らないが一時期、子供がなりたい職業ランキングでネット動画配信者がランクインしている辺り、子供は現実を見ていると思う。


 一体どこでこの国は間違えてしまったのだろう。


 それを考えるとこの世界特有の事情があるとはいえ、リオやパメラ、パンサーは立派だと思う。


 まあ先進国と紛争や貧困が絶えない国の子供を比べるようなものかもしれないが・・・・・・


「なんか考え事?」


「ああ。ちょっと自分の国ってどこで間違えたのだろうと思ったんだ」


「そんなにおかしいの?」 


「おかしい」


「ジエイタイもそうなの?」


 と、困った質問をされた。


「あ~自衛隊にどう言うイメージを抱いているか知らないけど、自衛隊だって犯罪を犯すし、ギャンブルとか――その、なんだ? 女遊びして破滅したりする奴とかいるし」


 これは本当の話だ。

 駐屯地に必ず一人そう言う奴はいると思った方がいい。

 

「ちょっと安心した」


「?」


「変な言い方だけど、なんか自衛隊って私達と変わらない部分があるんだねって思ったの」


 と、リオは照れくさそうに言った。

 そして俺は思ったわけだ。

 この子はなんていい子なんだろうと。


「それと分かった。キンジっていい人なんだね」


「え?」


 ちょっ? 

 なにこれ?

 なんかドキッとするんだけど。


「よく言ってた。下心ある人間は相手の心地の良い言葉ばかりしか言わないって。だけどキンジは違う。キンジはどう言うつもりだったかは知らないけど、ジエイタイやニホン相手でも油断しちゃダメ、痛い目を見るって言ってるように聞こえた」


 と、リオは照れくさそうにそう語った。

 俺は「あ、ああ、そうか・・・・・・」としか返せなかった。


「だから教えて。ニホンやジエイタイの良いところも悪いところも」

 

「え? 今から?」


「暇なんでしょ? そうだ。自分達ぐらいの同い年の子ってニホンではなにしているの?」


 そう微笑まれて俺は照れくさくなり、「えーと、それはだな――」と前置きして語る事になった。


 とうぜんオセロは中断。

 話の内容は日本についてのあれこれを会話する。

 なんか次第にギャラリーが集まって来て「ニホンも大変なんだな」とか「情けねえな」とか、「俺だったらぶっ殺してる」だの言葉が飛び交う。


 一体なんなんだ?



 Side ???


 遠巻きからジエイタイの一人を観察する。


 リビルドアーミーとはまだ接触してない様子。

 

 情報によればあのギャラリーに囲まれている線の細そうな自衛官、ヒダ キンジがシップタウンで暴れ回ったジエイタイの隊長さんの一人らしい。


 こう言う時女性と言うのは楽だ。


 男を誘惑して色々な情報を引き出せる。


 ・・・・・・ジエイタイはチョロすぎると言うか何というか、女性と接した事がないのかってぐらいに免疫がなくて可愛いなんて思ったりもしたけれども。


 もう何と言うか物語に出て来る騎士様とかのレベルだ。


 どう言う人生歩めばああ言う高潔な軍人達の集団が誕生するのだろう。


 リビルドアーミーとは色んな意味で次元が違う。


 ・・・・・・早速コンタクトをとってみようかしら。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る