=幕間:第13偵察隊のWACその2=
Side 水瀬 キョウカ
自衛隊の基地に戻ったのは随分久しぶりな気がする。
だけどちょっと見ない間にかなり様変わりしたようにも感じた。
ここに来て初めての時はピリピリした雰囲気だったが、それもかなり和らいでかなり賑やかになっていた。
特にこの世界の住民の出入りが目立つ。
普通の自衛隊の駐屯地なら考えられないことだ。
複雑な状況ではあるが私はプラスに捉えようと思う。
なにしろこの世界の戦場は自衛隊どころか世界レベルから見ても未体験の領域なのだから。
この世界での兵器の扱い――特にパワーローダーに慣れるのは急務だと思った。
☆
緋田 キンジ隊長に副隊長の宗像 キョウスケ。
この二人はパワーローダーを身に纏ってからの戦果が華々しい。
第7偵察隊の宮野隊長や三木副隊長もだ。
同じく第7偵察隊女性WACの日高も羨ましがっていた。近いうちに彼女もパワーローダーを身に纏うつもりだろう。
それにパメラにパンサーの二人もパワーローダー装着時の戦闘力は素人目から見ても一級品だ。
同じ女性として負けたくない。
さらに今この基地にはこの荒れ果てた世紀末世界を腕一つで乗り越えた女性戦士達が集結している。
ちょっとした*梁山泊状態だ。(*武術、武道の達人が集結しているような状態の例え)
この状況を活かさない手はない。
基地側も同じように思っている。
私達、第13偵察隊と第7偵察隊の報告書と記録映像はその流れを促進させる事だろう。
この世界で経験している事は地球でも経験するかもしれない活きたデーターであり、実戦で起きないとも限らない。
なにしろ既に地球の戦場は無人ドローンが必要不可欠のSF小説のような状況になっている。
分かり易く言えばロボットが人を殺す時代なのだ。
昔の人間からすれば考えられない状況だが現実なのだ。
そしてこの世界ではその一種の完成形が闊歩している。
パワードスーツもその完成形が大量に出回っているのだ。
未来の日本の国防に必ず役に立つ。
役に立たせなければそれは日本が終わる時だろうと思っている。
超大国ソ連だって崩壊したのだ。
日本だけが永遠に存続すると考えるのは楽観的すぎる。
☆
ふとここまでの旅路を私は思い出す。
基地から出た後も戦闘の連続。
グレイヴフィールドから出てトレーダーやキャラバンの人達と出会い、事前から聞かされてはいたが価値観の違いに困惑した。
ルーキー(第13偵察隊の隊員)や同じ女性WACの高倉も同じ感想だった。
なにしろ水や食料で銃や武器、弾薬やパワーローダーが購入できるのだから。
逆に言えば陰ながらそれだけ貧困状態なのだろうこの世界は。
だから新たなパワーローダーを容易く手に入れられたのは皮肉だ。
そしてゾンビ――アンデッドをぶつけて消耗したところを襲撃する方法を本気でやってくる敵側も恐ろしく感じた。
シップタウンでは激戦だった。
特に本命の北ゲートは危うく陥落しかけたらしいが、自衛隊の増援や隊長とリオの活躍で撃退する事に成功した。
正直、隊長とリオが羨ましい。
手柄を立てたことではない。
その強さにだ。
私もこの世界に揉まれて地球に居た頃よりかは強くなったと思う。
だけど私が求める強さにはまだまだ足りないと思った。
☆
Side 高倉 ヒトミ
基地内のWACが燃えている。
男性も勢いがあるがWAC達に押され気味なところがある。
私達、第13偵察隊と第7偵察隊の記録、そしてこの自衛隊基地に着たアニメ世界さながらの戦う女性達が原因なんだと思う。
かくいう私も同じ。
水瀬と一緒に必死にパワーローダーの操縦訓練を受けている。
パワーローダーは様々な機種があり、ドランやギャリアン、フェンサー、ゲイル、ジェネなど。
それ以外にもかなりの数のパワーローダーがこの基地に持ち込まれている。
改めて驚いたのはその兵器としての完成度。
この世界ではともかく地球で運用するには十分すぎるぐらいに整備性に優れているのだ。
だからこそこの荒廃した世界でも運用が続けられるのだろうと思った。
間違いなく私達の世界のパワーバランスを変えられる兵器であり、急速に普及するのも時間の問題だろうと思った。
それを恐ろしく感じたがもう遅い。
サンプルとして本国に何台も送って、恐らく同盟国のアメリカにも送っているだろう。
政治的取引とかで他の国にも送っていると考えていい。
戦場で12・7mm弾に耐えうる核動力のパワードスーツがレールガンやレーザー兵器を片手に暴れ回る世界が実現しようとしている。
日本は軍事面では周回遅れが基本の国だ。
間違いなくその世界に乗り遅れるだろう。
核動力じゃないにしても、パワーローダーの装甲素材の製法だけでもミリタリーバランスが崩れかねない。
他の人に話したら考えすぎだと言われるだろうが、今は大量配備されたドローン、ロボットが人を殺す時代だ。
パワーローダーが戦場の主役になる時代を誰が否定できるのだろうか。
恐らくパワーローダーは巨大な人型機動兵器などが出現しても何かしらの形で残り続けるだろう。
そう確信出来るぐらいのスペックを感じている。
逆に言い換えれば私達、この土地にいる自衛官は世界の最先端の真っ只中にいるとも言える。
水瀬も言っていたがこの状況を逃さない手もない。
それに私も自衛官としての誇りはある。
この世界の、まだ女子高生ぐらいの歳の女の子達に負けてなんかいられない。
そう思いながら他のWAC達と同じく訓練に励んでいた。
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