第十六話「一夜明けて」

 Side 緋田 キンジ


 一夜明けて祝勝会――と言うワケにも行かず、俺達自衛隊は不眠不休の作業をしていた。

 

 増援部隊もヘリや車両などで輸送されてくる。


 車両部隊は現地住民のトレーラーや車両などと随伴付きの護衛と言う形だ。


 俺はリオともども――パワーローダーをパメラ氏の手でフルメンテさせてしまう形となり、二人揃ってドランタイプで瓦礫の撤去作業をしている。


『ジエイタイって・・・・・・凄いね・・・・・・こんなこと・・・・・・するんだ』


『無理すんな。昨日の疲れとかもあるだろう。ぶっちゃけ自衛隊はこう言う事するのがメインな職業だからな』


 眠たそうなリオにそう言う俺。

 自衛隊は武装災害救助隊とか便利屋扱いされることが多く、疑問や議論、批難される事すらあるが自衛隊にとってはやめられない理由はある。

 

 一番の理由は自衛隊が人を集めるための最大の得点稼ぎだからだ。

 自衛隊は万年人手も予算も不足気味である。

 

 人を集めるために災害救助などで、例え訓練を疎かにしてでも出動しなければならないのだ。


 当然俺もそう言う災害救助に何度も駆り出されたので手慣れたもんだ。

 今はパワーローダーなんて代物があるし地域住民も友好的。

 うるさいマスコミや市民団体もいないので楽なもんである。


「押さないでください!!」  

  

「並んで順番に!! まだちゃんと量がありますから!!」


 などと食糧配給テントには長蛇の列が並んでいた。

 医療車両やテントなども長蛇の列である。

 ちょっとした基地祭状態になってきている。 



 瓦礫の撤去や遺体の処理などを終えた段階で他の部隊とバトンタッチ。


 一休みして夜になる。


 そこで改めて正門の方に行くと人集りが出来てお祭り状態になっていた。 


「冷たい!!」


「こんな冷えてるのはじめてだ!!」


 などと市民達が缶ビールを掲げて軽く道端で宴会を開いていたり。


「押さないでください!」


「野外浴場は順番待ちです!」


 などと野外入浴セットの簡易銭湯が長蛇の列になっていてお祭り状態になっていた。


「凄い事になってるね」


「リオか・・・・・・」


 トコトコとリオがやって来た。


「自衛隊って何時もこんな事やってるの?」


「流石に毎日はやらないよ。タマにだな。基地祭とか、災害派遣の時とか――」


「友達が喜んでたよ」


「そいつはいいね。不審感もたれるかもしれないけど――それも自衛隊続けてれば何時もの事だし」


 自衛隊にとって市民から罵声を浴びせられるのはよくある事だ。

 過酷な訓練こなして、市民のために頑張った上で市民から平和の敵扱いされ、グッとこらえて頑張れたら一人前みたいなところあるしな・・・・・・それに比べればマシだな。


「ああ、そうそう。キーツ隊長が会ったら頭を下げるがキンジ達、自衛隊にはすまなかったと伝えておいてくれだってさ」


 キーツ隊長。

 ここのシップタウンの防衛部隊の隊長だったな。


「正直言うとキーツさんの考え方の方がマトモだと思うけど・・・・・・まあ許せないか。普通の自衛官なら自衛隊としての仕事をしたまでですとか言うんだろうけど・・・・・・」


「やっぱりキンジ達は優しいんだね?」


「いや、そうでもないぜ。自衛隊だって様々だ。あ――女で破滅したり、ギャンブル狂いとかいたりするからな」


 そう言うとリオは笑った。


「そう言うところだよ。なんかお兄さんみたい」


「そ、そうか」


 なんだか照れくさくなってしまう。


「リビルドアーミー・・・・・・来ないでほしいな。たぶんこんな楽しい事も夢のように終わってしまうから」


「まあその辺りは相手の出方次第じゃないかな・・・・・・」


 俺達はあくまで一自衛官だ。

 リビルドアーミーと敵対する事を決めるのはもっと上の方。

 そのウチ、ドカドカと外交官やら政治家達がこの世界に乗り込んでアレコレ我が物顔で口出してくるかもしれない。

 

 いや、それ以前にあのゲートはどうやって、誰が? 何のために開いたのだろうか?


 その辺の謎も解き明かさないといけない。

 

 ゲートには現在も二十四時間態勢で様々な観測機器で観測している。

 不自然なぐらいに安定しているそうだがどうなるかは分からない。


(まあ自衛隊に入ったのも半ば自棄みたいなもんだしな・・・・・・この世界に骨を埋めるか? だけどキョウスケとかは家族を養う目的とかもあるからな――)


 そこまで考えて俺は「まあなるようになるか」と思い至った。

 人間の明日の事も分からないのだ。

 一ヶ月先、一年先のことなんて誰にも分かりやしない。

 

 考えられるのは今日の飯とか一ヶ月の給料とかそんなぐらいだ。

 

「考え込んでたけどどうしたの?」


「日本で生きるのも色々と大変なんだよ」


「例えば?」


「銃刀法違反とか学力とか戸籍とか交通ルールに一般常識とか・・・・・・とにかく沢山だ」


 などと言いながら俺とリオは喧騒の中に消えていった。


 後で知ったがキョウスケやパメラ達に後をつけられて監視されて恥ずかしい思いをする事になった。


 とにかくこの場は派遣された部隊に任せて一旦自衛隊基地に帰投する事になるだろう。


 自衛隊は基地はどうなってるのか不安だ・・・・・・


 あの女クソ上司はなんだかんだで生きてそうだが。

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