第十三話「シップタウン」

 Side 緋田 キンジ


 輸送ヘリから補給物資を満載したコンテナを積み込んで定時報告。


 なにやら自衛隊基地に来訪者が詰めかけてきて慌ただしくなっているようだ。


 シップタウンでの用を済ませたら一度元に戻った方がいいかもしれない。



 シップタウン。


 そこは世界が荒廃する前に使用されていた陸上戦艦を中心に発展した町だそうだ。


 遠目からでも町の全景は確認出来る。


 陸上戦艦の周囲に町があり、そしてバリケードが築かれて見張り台や銃座などが彼方此方にある。


 そして早速、町の正面ゲート前でヴァイパーズと鉢合わせして戦闘開始だ。


『この世界に来てからドンパチばっかだな!』


 キョウスケの言う通りだ。

 この世界に来てからドンパチしない日の方が少ない。


『ともかく此方にも攻撃を仕掛けて来ている以上、応戦するしかない! 町の防衛部隊に攻撃を当てないように注意するんだ!!』


 了解と返事をして俺達は応戦。

 襲撃しているヴァイパーズの側面から殴りつけるようにして射撃。

 今の戦力なら殲滅も容易い。


 なぜ側面かと言うと町の防衛部隊への誤射を防ぐためだ。

 シップタウンの戦力と十字砲火する流れとなり、相手は散り散りになって逃げていった。


『危ないところを助けていただきました。アナタ達は一体・・・・・・』


 と、町の防衛部隊のリーダーらしき人物――パワーローダーを身に纏っている人が寄ってきた。


 俺とその人物を割って入るようにリオ達が駆け寄った。


『私から事情を説明する』


 と、リオが言って防衛部隊のリーダーらしき人物に駆け寄る。

 事情を話し始めた。



 あれよあれよと言う間に厳選されたメンバーでシップタウンの代表者と顔合わせになった


 付いてきたのは当然ながらリオとパメラとパンサー。

 他には宮野一尉がいる。

 

 後は留守番である。


 代表者の部屋はシップタウンのランドマークである船の艦長室と思われる個室だった。

 

 そこには意外にも長い髪の毛をお団子さんにしてメガネをかけた母性的で大きな胸の軍服風の姿の女性がいた。

 パンサーも相当でかかったが彼女も負けないぐらいにでかい。

 容姿も控えめに行って美女だ。

 

 意外すぎるその姿に俺は思わず驚いてしまう。

 女性は困ったように「皆、驚くのよね」と困ったように赤面してしまう。


 今のところ容姿も性格も満点級の美女だ。


「私はマイア、このシップタウンの代表よ。それでリオ、パメラ、パンサー、無事に戻ってきてくれてありがとう。何があったのか説明できるかしら? 一応前もっては聞いているんだけど詳しい話を聞きたいの?」


「なら私が――」


 と、パメラが前に出て話はじめた。



 パメラは概ねの内容を話し終えた。

 

「そう。想像以上に大事だったのね――報酬は指定額以上に払うわ」


「いいんですか?」


 と、パメラが困ったように返事した。

 報酬分以上の宝は既に俺達から受け取っていてその負い目があるのだろう。


「それぐらいの事をしてくれたんですもの。最悪、私もその基地へ向かわないといけないのだけれど――今は離れられない」


「どう言うことですか?」


「野盗連中やヴァイパーズが活発化してきているの。今日戦ったのは先遣隊だと思う。ここの守りを疎かにするワケにはいかないわ」


 と、マイアさんが言うが――


「じゃあ、ジエイタイの人達に頼めば? 周辺の野盗連中とも戦争中だし、ヴァイパーズやリビルドアーミーとも遠からずウチにぶつかるし――」


 パンサーが爆弾を投げ込む。


「ちょっとパンサー・・・・・・勝手に話を・・・・・・」


 俺は慌てて止めた。

 だが宮野一尉が「いや、だけど彼女の言い分にも一理あるだろう」と思わぬ人物から援護射撃が来た。


「でも宮野一尉――」


「確かに危険だし、あれだけ戦闘をやっておいて今更かもしれないが今回ばかりはデリケートな案件なのは分かってる」


 と、宮野一尉は言う。

 それにと続いて「大丈夫だ。相手が中世ヨーロッパの野盗集団じゃなくてSF兵器で武装した連中だって事も分かってる」と言った。

 

 おそらく銀座に異世界のゲートが開いた某有名作品の事を言っているのだろう。

 参考資料として自分を含めて多くの自衛官が目を通したと言われている。


「緋田二尉。極論すると僕達の任務はこの土地の調査となぜゲートが開いたかと言うこと、そしてこの土地の武装勢力から日本を守ることだ」


「まあそうですね。もしこのゲートを閉じたとしてもまた何処かにゲートが開いた場合、日本の責任になるかもしれないから、ゲートの調査と原因究明のためにこの世界の調査。そしてこの世界の核武装した武装勢力から日本を守るために来たんですよね?」


 と、俺は言う。


「そうだ。その任務を遂行するためにはシップタウンはとても重要な場所と言っていい。それに相手は核武装の可能性がある武装勢力だ。自分達が国内出動だろうと海外派遣の範疇だろうとしても大義名分はある。ワザと長ったらしく任務の再確認をして何を言いたいかと言うと」


「この町を守る大義名文は揃ってる」


 俺"たち"は結論づけた。


「長ったらしいやり取りだったけどつまり町を守るつもりなの?」


「ごめんねパンサー。自衛隊は一応日本と言う国に所属する組織である以上、勝手に行動するワケにはいかないんだ」


「まあ、どの道この町を守るために戦う事になると思いますけどね」


 宮野一尉の言葉を補足するように俺は言う。

 このシップタウンはこの世界で初めて訪れた文明的な町だ。

 それにあの女クソ上司のことだ。

 なにか適当に理由付けてでも町を守るためにドンパチしてこいと言うに決まっている。


「なんか疲れる生き方してるね。もっとこう肩の力を抜いて生きられないの?」


 パンサーの言い分に俺と宮野一尉は苦笑した。


「ともかく一度上の方に連絡してきます」


「お願いします。私も町の方でも出来うる限りの援助と情報を集めますが決断は早めに。恐らくヴァイパーズは近いうちに再び攻撃を仕掛けて来ますから」


 とマイアさんが忠告してくれた。



 ランドマークの陸上戦艦を離れて仲間達の元に合流。


 町の人々から奇異の目線で遠巻きに見られていたようだ。


 宮野一尉が代表して上と連絡したが「万が一に備えてシップタウンの防衛を行って欲しい。援軍を寄越す」と言われてマイアさんの元へ逆戻りになった。


 パメラとパンサーは自分達のガレージにトレーラーを入れに行く。

 俺達も専用の大きなガレージを貸し与えられてそこに車両を積み込み、拠点とする事になった。


 色々と指示を出している時、ふとリオが俺の元に訪れて話したい事があるようだ。


 少し場所を変えて人気のない場所へ。


 理由は――


「どうしてこの町を守りたいの?」


 と言う事だった。


「仕事だからと言うのもあるし、守りたい、助けたいと言うのもある。本音を言うとイヤだけど――女の子や子供だって戦ってるんだ。俺達が戦わないでどうするよ」


「・・・・・・優しいんだね」


「そりゃどうも。たぶん皆も何だかんだ言って俺と同じような気持ちだと思うぜ」


「私も私を助けてくれた人みたいになれたらいいなと思って今みたいになったけど、よくバカにされる」


「ウチの世界でもバカにする奴いるな――」


 偽善だの、なんだの言って。

 何時からそう言う人を助けたいからとか、人を守りたいからとか言う理由がバカにされるようになったのだろうか。


「ジエイタイに入ったのも人助けがしたかったから?」


「そんな立派な理由じゃないな。キョウスケは生活費を稼ぐためで俺は親と根本的に上手く行かなくて自衛隊に入った」

 

「親と仲が悪いの?」


「ああ、悪い」


「そう――あんなに豊かなのにそう言うのもあるんだね」


「そうだな。人間根っこはどんなに豊かになっても変わらないかもしれないな――ガッカリしたか?」


「正直言うと」


「そうか。ま、なにもかもが満点な世界なんてのは存在しないんだろうさ」


「この世界のことどう思ってる? 嫌い?」


「・・・・・・この世界に関わって大勢の同僚が死んだよ。俺も何度も死にかけた。だけど君達に会えたのが救いだった」 

 

「え?」


「女の子に告白するみたいで照れくさいな・・・・・・ありがとな。俺達を守ってくれて」


「う、うん」


 なぜか顔を真っ赤にしてモジモジする。

 どうしたんだこの子?

 いや、まさか――な。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る