第十二話「夜襲」

 Side 緋田 キンジ


『このゾンビども何処から湧いてきた!?』


 夜中。

 まさかまさかのゾンビの群れ。

 数は三百体ほど。


 現地ではアンデッドと呼ばれている。

 もうこいつらと戦うのは何度目だろうか。


 俺たち先陣を切るようにつっこみ、俺はパワーローダーの大火力で片っ端から粉砕していく。


『いっそ元の世界でゾンビ物のショートフィルムとして売り出すか!?』


『生き延びられたらな!』


 軽口を言うキョウスケもドランを身に纏い、ミニガンで一掃する。

 他の隊員も必死に応戦する。


『三木は自分の援護を! パワーローダーを身につけてない人間は車両に搭乗して攻撃を開始! 目標は近くの敵を最優先に! 味方だけでなく民間人を援護するんだ!』


 第7偵察隊の隊長、宮野 ヒデト一尉が矢継ぎ早に指示を出す。


『オーライ! 聞いたな野郎ども! とにかく敵の足を止めろ!』


 副官の三木 ケイイチ二尉もドランを身に纏いアンデッドを撃破していく。


『離れているとはいえさすがグレイヴフィールド。アンデッドの数も桁違いね――リオ、パンサーは自衛隊の人達の援護を。私もトレーラーの搭載火器で援護するわ』


 パメラの指示にリオは『分かった!』、パンサーは『大切なクライアントだからね!』と快諾した。


 敵の数は多いが、武装もいいし味方の援護もいい。

 トレーダーやキャラバンの人達も援護してくれる。

 このままなら敵の殲滅も時間の問題だろう。



 Side パメラ


 トレーラーの運転席でAIにある程度武装の使用権限を与えて指揮をとる。


(この短時間でジエイタイも動きがよくなってきている・・・・・・)


 戦闘中にふとそんな事を考えた。

 ジエイタイは最初は頼りなかったが僅かな期間で戦いに適応している。


 元々軍事組織であるらしいのは聞いていたが、ヴァイパーズやリビルドアーミーなどとは違う次元の戦闘組織だ。


(それにこの動き――皆を守るために戦ってるの?)


 パワーローダーを身に纏ってない車両部隊も、誰かに頼まれたワケでもないのにまるで他の人々を守るように動き回っている。


 ヴァイパーズはもちろんリビルドアーミーはまずやらないだろう。

 騎士団ぐらいだろうか。

 

(・・・・・・今は戦闘に集中しないと)


 意識を戦闘に向ける。

 概ね戦闘は収束しつつある。


 第三者がアンデッドをぶつけたと言うワケでもなさそうだ。

 初動対応がよかったので被害もない。


 このままならあともう一息で戦闘は収束するだろう。



 Side リオ


『いやー楽でいいね――ちょっとジエイタイの人達、無鉄砲なところあるけど、聞いた感じそう言う組織みたいだし』 


 私の思ってることは全てパンサーが代弁してくれた。


『うん。パンサーの言う通りなんだと思うけど』


『けど?』  

 

『私は嫌いじゃない』


『ふーん。ああ言うのが好みなんだリオッち。でも程々にしときなよ? パメラも心配するし、身が保たないよ・・・・・・』


『うん』


 これはパメラにも言われていること。

 お人好しが過ぎると。

 そんな私になんだかんだで付き合ってくれるパメラには感謝の言葉しかない。

 

『それよりもこのアンデッドの群れ――』


『ああうん、リオッちも思った? 誰かが誘導してきた可能性ね』


 アンデッドなどの化け物を誘導し対象にぶつけて弱らせたところをトドメを刺す。

 この世界ではよくある手段だ。


『お二人の想像通りよ。第二波来るわ!! そこそこ規模の大きい野盗連中か、それともヴァイパーズか・・・・・・』


 と、パメラが通信を入れてきた。


 どうやら想像は当たっていたらしい。



 Side 緋田 キンジ


『新手のお出ましか!』


『パワーローダーの数もそこそこ多い――試運転の時みたいにはいかないな』


 キョウスケの言う通り敵の数は武装車両やパワーローダー含めて五十ほどだ。


『各員は一度退いて態勢を建て直して!! 三木や緋田、宗像はその時間を稼いで!』


 宮野一尉が指示を飛ばす。

 やる気満々のようだ。


『了解! お二方は大丈夫かい?』

 

 と、三木さんに言われて、『俺はまだやれます!』と返事し、キョウスケも『俺もまだいけるぜ!』と返した。


 第7偵察隊や大自分が指揮する第13偵察隊もやる気満々のようだ。


『気を付けて!! 一体スピードが速い奴が先行してくる! 敵影はパワーローダー! 機種はワッド!』

 

 パメラから報告が入る。

 地上を滑るように、滑空するように何かが猛スピードで駆け抜けてくる。

 此方の攻撃を地面を泳ぐようにして回避する。


『なんだあの機動は!?』


『ホバー走行よ! この開けた戦場では奴の独壇場よ!』


 ワッドと言う機種。

 カラーはブラウン。

 第二次世界大戦の戦車のように丸っこい傾斜的な装甲を多用している外観だ。

 目はモノアイ、口元はエアダクトで動力パイプが両側についている。

 脚がとてもゴツイが異常な機動性がこのゴツイ脚に秘密があるんだろう。


 なんだか日本の某有名ロボット作品に出て来るアレを思い出しながらも攻撃する。

 反撃のマシンガンやロケット弾が飛んできた。

 更に後方からは野盗連中支援射撃まで飛んでくる。


『一旦後退するか!?』


 猛烈な射撃に三木が後退要請を出すが――


『俺達も忘れちゃ困るな!』


『今日は機嫌がいいんだ! まだまだ暴れたりないんだよ!』


 と、武装した民間人――武装した車両やら、様々な機種を身に纏ったパワーローダーを着た人々が負けじと援護射撃をしてくれる。


『クソ・・・・・・どうなってやがんだ!? ここは退くぞ!?』


 敵のリーダー格のパワーローダー、ワッドは高い機動性で地上を滑りながら相手の攻撃を回避するがそれだけだった。

 どんどん後方の味方が潰されていき、危機的状況になって後退を決意した。


『させると思った?』


『!?』 

 

 パンサーの漆黒のトサカや一つ目、口元のダクトや大きな背中のバインダー型ブースターが特徴のパワーローダー、ジェネが、右手にマシンガン、左手にバズーカを持って地表スレスレを飛行しつつ相手目掛けて飛び込み、銃弾を相手の脚部に叩き込んで敵のリーダー機の傍を通り過ぎる。。


『お、俺がこんなところで――』


『まあ相手が悪かったね♪』


 ホバーが停止した相手の背後にトドメのバズーカを躊躇いなくお見舞いした。

 パワーローダーには弱点が存在し、共通してどうしても動力炉やブースターがある背後が弱くなってしまう。

 

 これは重装甲のパワーローダーでも変わらない。

 

 パワーローダー同士の戦闘の基本は如何に相手に背後を取らせないかが基本だとか。


 これが決定打になり野盗は総崩れになって殲滅されていく。

 やってるのは自衛隊ではなく、この世界に生きる人々だ。

 この辺りこの世界の住民は容赦がない。



 とりあえず後片付けを行い、死体を適当に埋葬。(アンデッド含む)

 スクラップになった元死体入りのパワーローダーや武器を譲渡したら現地住民に「お人好しすぎんかね?」、「そんなんでよく生きてこられたね?」と呆れられた時はこちらも苦笑した。


 当初の頃はともかく、今は武器弾薬にも余裕がある。

 無理して鹵獲しなくてもいいだろう。


「あんたらお人好しだってのは分かってたけど、ここまでとはね~そんなんだと逆に裏があるんじゃないかって疑われちゃうよ?」


 と、パンサーからも言われた。

 水に余裕があるせいかシャワーを浴びて着替えたようだ。

 

「まあそれがこの世界の普通なんだろうな」


「基地にいた時も思ったけど、殺しに来た敵やアンデッドの埋葬まで、ジエイタイってこんな事までするんだ・・・・・・」


 休憩しているとどこからともなく顔を出してきたリオからも言われた。

 呆れてる感じではなく、感心しているような様子だった。


「まあな。アンデッドだって元は人間だろうし、野盗もこんな世界だからな――死んだ後ぐらいは多少よくしてやっても罰は当たらないと思うぜ」


「何というか凄いね。私達とは根本から考え方が違うんだ」

 

「あ~一応これでも何人もの仲間をこの土地で失ってるし、それに君達に迷惑が掛からないようにはするさ。そうしないとパメラさんに怒られそうだし」


「う、うん――」


 俺は慌てて予防線を張った。

 


 夜が明ける。


 ハードスケジュールになるが交代しつつ朝食を取ってから休憩してから出発。

 

 ここでも一悶着あり――日本から持ち込んだ食べ物と自分達の物と交換して欲しいとか言う話とかもあったりもしたが――


 とにかく目指すはシップタウンだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る