第十一話「その頃の自衛隊基地」

 Side 佐伯 麗子


 夜になり、第13、第7偵察隊の定時報告が来たのでそれを陸将に報告する。


 耳を疑うような事をしているが、少し基地を出るだけでも数回戦闘が発生していた。


 今もまたどこぞの連中が攻撃を仕掛けて来たばかりだ。


「武器の現地調達か。前代未聞だな」


 と、陸将の執務室で五籐 春夫 陸将が考え込む素振りをみせる。


「ですが従来の装備のまま戦えと言うのは竹槍で戦えと言っているような物です。それを分かっているから鹵獲武器の使用を解禁をしたのでしょう? 現地調達も大目に見るべきです」


「ふむ・・・・・・」


「納得出来ないのなら現地協力者のパメラ氏から装備の貸し出しをしてもらってると言う体裁はどうでしょうか? 」


「霞ヶ関の先生方にはどんな正論や理屈を説いても理解してくれん人間が多くて困るが――やらないよりかはマシだな」

 

「ええ」


 五籐 陸将も苦労してるんだなと思った。

 霞ヶ関のお偉いさんたちはこんな状況でも得点稼ぎに出世競争ときた。 

 そんなだから何時まで経っても"学校の学生会議より酷い"とか言われるのだ。



 話も終わり、偶然出会った水島 静香 一尉と一緒にラウンジスペースで話し合う。


「聞いた? 近々この場所に査察団が来るって」


「こんな修羅の世界まで得点稼ぎとはご苦労なことだ」


 いったいどんなケチをつけてくるのか想像するだけでも腹立たしく思えてくる。


 こちらは24時間交代制でドローンまで飛ばして防衛体制を敷き、いまなお施設科が命懸けで基地の改修作業を進めている状況だ。


 施設科だけでなく、この土地で留まって戦い続けてくれている全ての自衛官が勲章物の勇気を出してくれている。


 あの二人(緋田 キンジ、宗像 キョウスケ)もな・・・・・・


「しかもマスコミまで入れろとか言う話まで来てるの」


「ここの状況を外の連中は理解しているのか? 核武装した武装勢力がウヨウヨしている場所だぞ?」


 不意打ちで核兵器撃ち込まれて消し炭になる可能性だってあるのだ。

 さらにはB級映画から飛び出してきたようなモンスターまでいる。

 

「言いたい事は分かるわ――」


「まったく・・・・・・此方の状況を把握しているのか・・・・・・」


 そんな場所にマスコミを入れればどうなるのか明らかだ。

 この土地はどんなに防備を固めても襲撃される。

 命の保証なんてできやしない。


「正直この基地は危ない状況だわ――」


「まあな」


 隊員達も披露が溜まり続けている。

 自衛隊にとってはもはや未知の領域の場所だ。

 PTSD(戦場によるストレスで起きる精神障害)を発症していると思わしき自衛官も少なからず出ている。


「弾薬の補給や整備点検なども追いつかない状況よ。それに貴重な乗り手も少なくなってきている」


「末期戦的な状況だな」


「悪い知らせが他にもドンドン入ってくるわ。自衛隊の反対派が反対運動して自衛隊を妨害しているとか――」


「そう言う連中も守らなければならないから自衛隊は辛いな」


「そうね」


 最前線の近くで反対活動をするとはよほど死にたがりのバカらしい。

 まあバカでなければ反対活動などできやしないのだろうが。


「問題は山積みね。機甲科とか敵の火力が高すぎて戦車の装甲が役に立たない。アレじゃ金の掛かった棺桶よ」


「確かにな・・・・・・」


 最新鋭の10式戦車だろうと一世代前の90式戦車だろうこの世界では棺桶同然だ。

 敵の火力が高すぎるし、特にレーザー兵器で装甲をドロドロに溶かされてそのまま人間の蒸し焼きが出来上がるか――その前に燃料か砲弾に引火、誘爆してそのまま爆発炎上するパターンもあった。

 

 アレでは戦車ではなく、約10億円(*10式戦車一両当たりの値段)の棺桶だ。

 

 これは戦闘ヘリや装甲車なども例外ではない。


「上は対策するとか言ってるけど――」


「その前にどれだけの人間ガ死ぬと思ってるんだ? いっそ現地でパワーローダーの装甲を増加装甲にして貼り付けた方がまだマシだ」


「方法はアレだけど、確かにその方が有効ね。まさかパワーローダーの装甲って実体弾だけじゃなく、レーザーやビーム系の兵器にもある程度耐えられるなんて」


 これは私も驚いた。

 機種にもよるらしいがレーザーやビーム、プラズマにも耐えられるそうだ。

 まあ食らいすぎるとパワーローダーより先に搭乗者が先にくたばるそうだが。

 

「また警報!?」


「たく、ゆっくり休む暇もないな!」


 私と水島は駆け出す。

 問題だらけの状況だが戦うのを止めると言う選択肢はない。

 

 もっともこの過酷な問題が近いうちに劇的に改善される事になるなど、この時ばかりは思いもしなかったが・・・・・・

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