=幕間:第13偵察隊のWAC=

*本編に入る前にキャラクター紹介


 =第13偵察隊のWAC=


○水瀬 キョウカ


 階級;二曹


髪の色は青。

 男性に負けたくないと言う理由で異世界行きを志願した女性。

 身長は平均レベル。


○高倉 ヒトミ


 階級:二曹


 ブラウンのショートでヘアーで男性並みの背丈とクールな雰囲気を身に纏うメガネを掛けた女性。

 冷静で落ち着いた雰囲気を持つ。



 Side 水瀬 キョウカ


 ――話は異世界に突入する前に遡る。


 私は昔から変わっているとよく言われていた。


 私は強い女性に憧れていた。


 だから私は自衛隊になった。


 それは自衛官になってからも変わらず、私は自衛隊として有事の時に備えて日々鍛錬を積んでいた。

 災害救助とかにも参加するがもっぱら戦闘訓練だ。


 より高味を目指すために休暇を取ってPMC(傭兵会社)の戦闘訓練でも受講しようかなとか考えていた矢先。


 日本で初めての実戦が起きた。


 その場所は何の変哲もない、特徴もなにもない片田舎の駐屯地でだ。


 相手は並のテロリスト顔負けの重武装でガトリングガンやロケットランチャー、小型の高威力爆弾――一種の反応弾に近い兵器(放射能汚染がない核爆弾みたいな兵器)だと反応した。


 最初は何かの冗談かと思った。


 回りの皆もそう思った。


 だが詳細が分かるにつれ、更に新たな敵の出現なども含めて真実だと分かった。


 日本中が大パニックとなり、本当に戦争が勃発したかのような騒ぎだった。


 最悪なのは、そっち系の自衛官がよく読む――異世界自衛隊物のように剣と魔法のファンタジー世界のような奴が相手ではなく、高度な現代兵器で武装しているらしいとのこと。


 レーザー兵器やパワードスーツらしき装備まで確認されているらしい。


 更にはゾンビの出現まで確認されている。

 噛まれてゾンビ化する事はないがとんでもない身体能力であり、群れを成して襲い掛かってくるらしい。


 厳重に封鎖しようにも襲撃が不定期で感覚も短いために中々封鎖作業も進まず、死傷者やPTSDを患った自衛官が大量に出た。


 その現状に危機感を抱いたのか上の方は突入を決意。

 志願者も破格の待遇で募集された。

 


 境界駐屯地には次から次へと最新兵器や日本各地から志願者が集められていた。


 町の周辺は避難作業が進んでおり、いるのは物好きなマスコミやジャーナリストぐらいだ。


 海外からも来ている。


 駐屯地内はとてもピリピリしていた。


 ゲートの先では既に戦闘――不正規戦が始まっており、死体となって元の世界に帰ってくる自衛官も出ているらしい。


 現地に到着すると配属されたのは運が良いのか悪いのか、この騒ぎの最初の頃から戦い続けている例の二人組。


 緋田 キンジ 二尉。


 宗像 キョウスケ 二尉。

 

 この二人がいる第十三偵察隊に配属された。

 

 二人とも軍人と言うよりかは優男系の容姿でまだ若い。

 真面目な自衛官と言うより力抜いて適当に自衛官の職をやってますと言う感じだった。 


 この二人は一連の騒動で最初の頃から規律的に自衛官にあるまじき行動を取ったために上からは問題児扱いされているそうだが、周りからは英雄視されている。


 二人の周りだけはピリピリした空気が収まっているようにも見えた。

 

 

 突入準備が近付き、他のWAC(女性自衛官)と知り合う事になった。


 名を高倉 ヒトミ。


 ブラウンのショートヘアー。

 知的そうなメガネ。

 ホッソリとしているが背丈に恵まれている。 

 本人には失礼かもしれないが美男子にも見えなくもない。


 彼女とは割り当てられた部屋も一緒でよく会話をする機会は多かった。


「私が自衛隊に入ったのは単純に自衛隊に助けられたから、憧れたからかな」


「でも今回は災害派遣とかじゃなくて実戦になるのよ?」


「何度も考えたし、周りからも止められた。覚悟の上さ」


「どうして?」


 安易に尋ねるべきではなかったのかもだが、この時は反射的に口が動いてしまった。


「ウチはいわゆる自衛隊家系みたいな物でね。昔は理解に苦しんだけど、今は自衛隊と言う職業が理解出来る。それにさ、国のために、人のために立ち上がって誰かのために戦うのってそんなに変な事かな?」


 私は彼女が眩しく感じた。

 言動や様子から察するに夢見がちな少女と言う感じではない。

 幸か不幸か彼女は自衛官なのだ。


「変なことじゃないわ。私はただ強くなりたいとかそんな理由でここに来たんだし・・・・・・」


「何かの物語でいたね。もしかして特殊部隊とかに入りたいのかな?」


「そうね。この事件が起きなかったら自衛隊を退職して海外のPMCかフランスの傭兵部隊入りしてたかもしれないわね」


 日本の特殊部隊は女性は入れない。

 なのでそう言う選択肢も視野に入れていた。


「ああうん。君はその、凄く変わってるね」


「遠慮しないでいいわよ。自覚はあるから」


 なんだか照れくさくなった。



 異世界での戦闘は突入初っ端から地獄だった。


 現代兵器の攻撃を交い潜り、基地でサメの化け物との白兵戦となる。(プロローグ3:一ヶ月後・突入)参照。


 レーダー車両や特科(砲撃部隊)の車両、戦車に戦闘ヘリなどが投入されている(戦闘機の投入はまだ先)この現状ならば数キロ先の敵ぐらい見つけて簡単に敵を排除出来そうな物であるが、それだけで上手く行くならアメリカ軍は紛争地帯で苦労はしてないだろう。


 拠点となっているこの廃墟の軍事基地。

 その周辺は緑豊かな自然を挟んで様々な廃墟が建ち並んでおり、レーダーや偵察ヘリをすり抜けて基地まで肉薄出来てしまうのだろう。


 基地周辺に配置したセンサーで感知した頃にはかなりの規模の敵との白兵戦になる。


 そしてこの世界の生物や人間はとても好戦的で凶悪だ。


 レーザーなどのハイテク兵器やロケットランチャー、ミニガン、パワードスーツなどで重武装している。


 単純な装備の水準で言えば自衛隊よりも上の連中が野盗として歩き回っているのだ。


 さらにはゾンビやオーク(自衛隊仮称)などの襲撃も多く、脱落したり戦死する自衛官も多く出た。


 酷い時は戦車や戦闘ヘリすら失う事すらあった。


 これには私もヒトミも堪えた。


 緋田 キンジ隊長と宗像 キョウスケ副隊長も堪えてはいるみたいだが、私達よりかはマシのように見えた。


 外見の優男然とした姿から想像も出来ないぐらいにこの二人はタフだ。


(負けてたまるか)


 二人を見ていくウチに私は思った。


 この世界で立派に戦い抜いてやる。


 そう心に誓った。



 この世界では深夜でも気が抜けない。

 入れ替わり立ち替わり様々な連中が基地に突撃してきて戦闘が発生する。


 戦闘の度に何かを失い、着実に自衛隊は消耗していっていた。

  

 偵察隊も派遣されたが元に戻ってこれたのは僅かだ。


 そしてとうとう自分達の番である。


 私は正直恐かった。


 武者震いと言えれば良かったが死ぬかもしれない。


 だけどそれを認めたくないので武者震いと言う事にしておいた。

 

「ヒトミは恐くないの?」


「恐いさ」


 ヒトミも消耗しているが立派な自衛官としての誇りを今だ保ち続けていた。

 この世界で経験した地獄を経てこれなら大したもんだと思った。


「死ぬのが恐い。だけど何も成し得ずに死ぬのはもっと恐いかな・・・・・・」


「そうね・・・・・・」


 誰も彼もがドラマチックに死ねるわけじゃない。

 それをこの世界で痛感していた。



 同じ偵察隊の無惨な姿を見て思わず吐き気を覚えた。

 ヒトミも辛い気持ちのようだ。


 そして立て続けに襲撃。

 隊長の指示で近くの廃墟群に立て籠もったが敵の数と装備の質が違いすぎる。


 このままでは死ぬ。


 隊長が殿を務めるかどうかと言っていた。


 自分達の隊長は立派なんだなと思ったその時。


 彼女たち――リオやパメラ、パンサーが現れた。


 圧倒的戦力差を覆す鋼鉄の鎧を身に纏った少女達。


 非現実的な光景で唖然とした。


 たぶんこの光景を私は生涯忘れはしないだろう。


☆ 


 リオやパメラ、パンサーはある意味私の理想像のような少女達だった。


 同時にこの世界の過酷さを体現したかのような少女だった。


 例えば水一つや食料で喜んだりとか。


 紛争地帯の少年兵とかこんな感じなのだろうかとか思ったりした。


 そして自衛隊にも遂に変化が訪れた。


 この世界で得た鹵獲武器の解禁。


 そして鹵獲したパワーローダー(元・死体入り)の実戦投入などだ。

 

 パワーローダーは数が限られているため、各部隊の隊長格などに優先配備された。


 今迄使っていなかった事に大層驚かれたが。


 実際パワーローダーは戦術的にとても脅威だ。


 歩兵のアサルトライフル程度なら止めてしまう。

 最低でも対装甲目標用の重火器か対物ライフル、12・7mmクラスの武器が必要な相手だった。

 

 話を戻そう。


 ウチの第十三偵察隊では緋田 キンジ隊長や宗像 キョウスケ副隊長が身に纏った。


 そして敵の大隊規模の、パワーローダーやエネルギー兵器、戦闘ロボットで構成された未来の武装勢力相手に隊長と副隊長は優位に戦って見せた。


 さらにはリオまで加わり、四足歩行で頭が三つある巨大なサメの化け物と激闘を繰り広げた。


 他の自衛官達も――特に特科や機甲科、戦闘ヘリ部隊の活躍もあったがそれよりもパワーローダーの戦術的優位を再確認した。



 リオとパメラ、パンサーの三人の活躍もあったが、ウチの隊長と副隊長も凄かった。


 ヒトミも「パワーローダーの装着者に志願してみようかな」と声を漏らす程だった。


 そしてリオたち三人は基地内で今や時の人。

 超人気アイドルみたいな状態だった。


 しかも同姓にも人気がある――まだ十代半ばの少女が大立ち回りしたのだ。

 自衛隊と言う戦闘を生業とする職業の人達に人気が出ない筈がない。


 更に可愛い事に自衛隊の生活や報酬にとても大喜び。

 

 食事にも喜び、寝床があることにも喜び、歯磨きにも戸惑い、お風呂や衣服にも喜んだ。


 それがとても可愛らしかったのか年配の自衛官やWACから「中身は可愛い娘ね」とか「ウチの娘とは大違いだ」とか微笑ましく、ある物は苦笑して見守っていた。


 それはそうと傭兵の相場は幾らかは分からないが安すぎるようにも感じた。


 しかも基地の生活ゴミまで拾い漁って報酬としてくださいと言ってくると来た。


 だがこの三人の娘達の物の価値観は今の自衛隊にとってはとても重要な情報である。


 更に言えばこのグレイヴ(英語で墓と言う意味)フィールドはおっかない場所であり、普通の人間ならまず立ち寄らない危険地帯だそうだ。


 連日の襲撃の真相が理解出来た。


 何て言う場所に異世界のゲートが開かれたのだろうか。


 もっと平和な場所に開いて欲しかった。


 だがそんな事言っても始まらない。


 ヴァイパーズと呼ばれる武装勢力との大規模戦闘やそれ以前の活動で自衛隊にかなりの損害が出ている。


 自分たち第十三偵察隊はそのまま偵察任務を続行。


 さらにリオたち三人と一緒に町へ同行することになった。


 一体なにが待ち受けているのだろうか。

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